短歌にみる原発事故 (風の行方№34)
福島第一原発事故が起きてから6年目に入った。
実態のわからない目に見えない、
無色無臭のフクシマの悲劇。
汚染土は袋に詰められ、
不毛の大地で雨にさらされ、風にさらされる。
時間は停止し、
雑草の勢いと、野生化した動物たちの反乱の中で
住み家は朽ち果ていく。
故郷を追われ、帰るところを失い
心は憎悪と悲しみに折れそうになる。
ありとあらゆる悲劇や不幸を撒き散らしたパンドラの箱の中に
最後に残ったものは、生きる力。
小さな希望だ。
朝日歌壇の中から、原発に関する短歌を選んでみました。
〇 かなしみの数だけともる仮設の灯
ちさくこぼれて雪の降りつむ ……(美原凍子)
〇 吹雪く暮れ飯館村へ
五〇〇〇人の除染労働者黙して入り行く ……(澤 正宏)
〇 汚染水のもとをつくった科学者が
作業員とともにはたらいていない ……(小野長辰)
〇 フクシマはいつも三月
夏も冬も今日も明日もいつもあの時 ……(馬目弘平)
〇 最終はいずこにか中間貯蔵施設
ちゅうかんという果てなき長さ ……(美原凍子)
〇 ふる里は遠くにありて思えとや
原発避難民十万余 ……(遠藤民子)
百二歳の自死の哀しき飯舘に
あまた除染土黒き山なす ……(梅田悦子)
〇 帰れねぇいまさら解除といわれても
口惜しいけれどもう帰れねぇ ……… (赤城昭子)
〇 帰りたいでも帰れない原発禍
帰らぬと決め淚溢るる ……… (荻原大空)
最後に俳人・山頭火の歌を紹介します。
しぐるるや人のなさけに涙ぐむ
……… 種田山頭火