雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

春を歌う

2016-04-23 10:00:00 | 人生を謳う

春を歌う (つれづれに…心もよう№34)

朝日俳壇の中から春を題材にした俳句を紹介します。

いちめんの菜の花いちめんの放射能 (馬目 空さん)
       
      あの日放射能が降った。除染された故郷に帰って来てみれば、いちめんの菜の花が春を謳歌している。
     だが、目には見えず匂いもしない放射能の汚染の記憶が、いちめんの菜の花と重なり、
     あの日の記憶を呼び起こす。


さまざまの事忘れゆく櫻かな (釋 蜩硯さん)

      辛い日もあり、哀しい日もあった。いろんなことがあったなー。
     こうして風に舞って散っていく桜を観ていといろんなことが
走馬灯のように浮かんでは消えていく。
     
訪れた安息の日々に、過ぎし日を思い出している自分が愛しく思えてくる。

大桜いかなる人の住む家ぞ (浜田博文さん)

      空いっぱいに広がる大きな桜が、塀の外まで枝を茂らせている。大桜の木に宿る時間の長さを思いながら、
             
長い時を経て今なお美しく咲く桜を眺めながら、この樹をおそらく何代にもわたって守り育ててきた人のこと
              に思いをはせるひと時。

人生の果てまだ見えず花の宴 (橋本正幸さん)

      春爛漫。青空を覆い尽くすように咲いている桜。桜並木が続き、遠くの方は桜と空が一体となり春霞の中に
     溶けて煙っている。や
がて、春の風に花びらのひとひらひとひらが散っていく。
     春の終わりは、晩春の始まりでもある。相変わらず、迷いながら
逡巡して歩いている人生だが、
     まだまだ歩きつづける人生だなー。


最後に大好きな芭蕉さんの歌を一句挙げましょう。

行く春や鳥なき魚の目に涙  松尾芭蕉
      
       惜春の歌です。芭蕉は千住で船を下り、見送りの人々と別れを告げる。胸中は旅の行方を想えば、
      
「前途三千里」の遠い遠い東北への旅である。別れを惜しむ見送りの人たちに手を振りながら、
      『上野・谷中の花の梢、又またいつかわと心ぼそし』と、旅の不安を感じている。
      過ぎていく春にのさなか、晩春のこの日、別れを惜しんで、鳥は泣いて悲しみ、
      魚さえも目に涙を浮かべている。 
                                                                                                         (2016.3.22記)

 

 

 

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