晩春の我が家の庭 (2)
(季節の便り№27)
藤の花が今年も咲いてくれた。
大好きな芭蕉さんの句を一句。
くたびれて宿かる頃や藤の花
晩春の黄昏時、疲れた足を引きずりながら、今夜の宿を探す芭蕉さん
の姿が浮かんできます。かすかに甘い匂いが漂ってくる。見上げると
藤の花が咲いていました。旅の疲れが癒されるひとときを切り取り
俳句に織り込んだ芭蕉さん。さすがです。
藤の花の向こう側には、牡丹が咲いています。
山門に牡丹咲きしと女文字 辻井桂子
牡丹に劣らない美しい文字の便り、「山門に牡丹が咲きました」なんて奥ゆかしい人なのだろう。
品格がある。
牡丹見し残像重ね観世音 白澤よし子
観世音の優しく優雅な顔と、牡丹の美しさが重なります。
最後にサトウハチローの「目ン無い千鳥」を紹介します。
雨の夜更けに弾く琴が
白い小指にしみてゆく
花がちるちる春が逝く
胸の扉がまた濡れる