読書案内「曽根埼心中」
ストーリーで楽しむ文楽・歌舞伎物語4 令丈ヒロ子著 鈴木淳子絵
2019.1初版 岩崎書店
小学生~中学生向けに書かれた文楽(人形浄瑠璃)、歌舞伎などの江戸時代に風靡した町人文化の中で花開いた娯楽を分かりやすく紹介している。
この世のなごり、夜もなごり、 |
制約の多いこの世での二人の「愛」が成就しないなら、死んであの世で一緒になりましょう。
二人そろっての死出の旅路を「道行」とか、「心中」と言われるようになったようです。
特に、近松門左衛門が元禄16(1703)年、
「曽根埼心中」という人形浄瑠璃が、
大変な人気を得たころから、
「道行」とか「心中」という現象が庶民の間でもてはやされたようです。
徳川家康が関が原の戦いで勝利して、幕府をひらいて丁度100年、元禄16年は
元禄文化が頂点を極めたそんな時代に花開いた人形浄瑠璃、歌舞伎でした。
雨あがり流深読み意訳
この生きづらい世間で生きていけない2人にとっての道行は、この世の名残りであり、
夜もまた最後の名残りの夜だ。死ににゆく2人は、ものに例えるとあだしが原の火葬場や
墓地に続く寒い朝の淋しい道に降りた霜のように、一足踏むごとに消えていく儚い命だ。
儚い夢の中で見る夢のように哀れである。あゝ今、明け方の鐘が、六つ鳴ってもう一つなれば、
この世で聞く鐘の最後の鐘の音になる。その鐘の音が「寂滅為楽」と、徳兵衛・お初は死後の世界で
ほんとうの安らぎが得られるのだ、と聞こえてくる。
徳兵衛二十五歳、お初十九歳の命は、曽根埼天神の森に散っていく。
徳兵衛はお初の白く細い喉に、「脇差するりとぬきはなし、ただ今ぞ」と、お初の喉をつき
徳兵衛は剃刀で自分の喉を切る。
七五調で謳われる義太夫の語りに、江戸庶民は惜しみない拍手を送ったそうです。
ならぬ恋の成就を、永遠の愛に結晶させた哀れさと純粋さに江戸の庶民たちは
感動したのでしょう。
だれが言うともなく、曾根崎の森を吹きぬける風が音をたてるように、 |
これは、小中学生向けの解説。
本ブログでは、「曽根埼心中」に視点を置いて紹介しましたが、
本書は、日本の伝統芸能として成就した人形浄瑠璃を、元禄16年の元禄文化の中で花開いた
人形浄瑠璃(文楽)を優しく紹介した本で、作者・近松門左衛門の人物紹介なども優しく紹介しています。
(2019.3.3記) (読書案内№136)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます