野坂昭如と水木しげる
個性的な二人が相次いで亡くなった。
どちらも、表現者として一歩も譲らず、自分流に生き方を貫き、名を成した二人だ。
野坂氏は自称焼け跡闇市派として、代表作「火垂るの墓」を残し、
小説家、評論活動、作詞、歌手などジャンルにとらわれず、活動範囲は広い。
一貫して反体制を主張し、歯に衣着せない論調には定評があった。
一方でこうした彼の姿勢を、「場を読まない」と冷ややかに見つめる人もいたが、
空気ばかり読み、世論におもねる人の多い中で、貴重な存在ではなかったか。
水木しげる は今まで誰も描かなかった「妖怪漫画」の開拓者として名高い。
「墓場鬼太郎」「悪魔くん」「ゲゲゲの鬼太郎」など当時の週刊マンガ誌の少年サンデー、少年マガジンなどで、
圧倒的な人気を得ていた。
「子泣き爺」「砂かけ婆」「ぬりかべ」「一反木綿」など文字のみの記録で古典の画が存在しないものは、
水木によって初めて絵として描かれたようですね。
彼の作品で一番好きな作品は、
「総員玉砕せよ!」という戦記マンガです。
片腕を失うことになった水木の戦争体験をもとに描かれた作品は、多くの賞を受賞しました。
登場人物に悪人は存在せず、優しさの中に強さを秘めた妖怪たちが時にユーモラスに描かれているところに、
少年だけではなく、大人までもとりこにして、一世を風靡したのでしょう。
昨年、高倉健や菅原文太が他界し、今年は野坂、水木が鬼籍に入った。
昭和は遠くなりにけりです。
次回は短歌にみる野坂昭如と水木しげるをアップします。
(2016.1.20記) つれづれ日記 №53
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます