能登半島地震 (11) 奥能登4病院医療維持に危機感
奥能登の4病院、
看護師60人以上が退職・意向 医療維持に危機感
2024/03/04 06:00
看護師総数の約15%
石川県奥能登地域には四つの公立病院がある。
この医療機関で働く看護師にも疲労が蓄積している。これらの医療機関に所属する看護師の60人以上の看護師が退職したり、退職の意向を示したりしている。
看護師の総数約400人のうち約15%にあたる。
看護師自身が被災し、生活再建の見通しが立っていない。
退職者が看護師の2割に上る病院もあり、
病院関係者は医療体制が維持できなくなるのではと危機感を募らせている。
市立輪島病院の場合
輪島市唯一の総合病院。
医療機器が損壊し、一時断水したこともあって、100人近くいた入院患者の大半は別の病院へ転院した。
今も20人が入院している。
自分の家は倒壊。時間外勤務をしなければ病院の運営が成り立たない。
疲労感で気力もそがれてくる。
子育てもむずかしい。
1月下旬から外来診療を再開。震災前の3割ほどに減ったものの1日に約150人が訪れる。
他の医療機関から看護師の応援を受けなんとか患者さんへの対応はできているが、
約25%が退職を希望し、10人以上が退職届を提出しているという。
道路の寸断で通勤が難しく、空き病棟で寝泊まりする看護師。
発災当時は、使命感に燃えて、自己犠牲を伴う業務を続けることもできたが、
過度の労働は勤労意識の減退につながり、進退を考えるようになってくると、
それ以上の無理はできなくなってくる。
高齢者率が50%に迫る過疎の町で、市や町の医療機関は危機を迎えている。
地方の医療機関の抱える共通の問題でもある。
だから、「子供が集中して学べる環境が整う金沢で職場を探したい」という希望も
「これから病院がどうなるのか、将来への不安もある」
という考えも当然のことと思える。
珠洲市総合病院の場合
約125人の看護師のうち22人(18%) が退職を希望している。
どの病院でも同じように、医療業務に疲れてしまったわけではなく、
地震災害という緊急事態に、自らも被災しながら、
地域医療を支えることの難しさに心身ともに疲弊している状況が見えてくる。
「家を失った人も多く、目に見えない負担は相当ある」 (I事務局長)
さらに、医療の前線で頑張る医師や看護師を支える裏方の医療事務者や調理師にも退職希望者が出ている。
「病院はチームワークで成り立っている。先が全く見通せず、
患者数が増えたときに看護体制が厳しくなるかもしれない」という。(同)
退職の意向を示す看護師数と退職後に運用可能な病床 (読売新聞)
市立輪島病院 約120人の看護師のうち退職希望者約30人
175床のベッド数は30~40床に減少
珠洲市総合病院 126人のうち約20人が退職を希望
163床のベッド数は40床に減少
公立穴水総合病院 約70人のうち約10人が退職を希望
100床のベッド数は35床に減少
公立宇出津総合病院 95人のうち約10人が退職を希望
(能登町) 100床のベッド数は30床に減少
奥能登は高齢化が進み、震災前から看護師不足が生じており、
生活基盤が復旧しても、一度流失した看護師が戻ってくるかは不透明だ。
県看護協会は、4病院に勤務できる看護師や助産婦の募集を始めた。
しかし、被災地では断水が続き、家屋倒壊も広範囲にわたり、派遣は思うように進んでいないという。
「生活拠点がなければ長く続けてもらうことはできない。最低でも住まいを確保することが重要だ」
(県看護協会会長)
厚生労働省はこれまでに4病院に延べ1264人の看護師を派遣。
しかし、住環境を整えなければ、長期にわたる派遣は難しく、受け入れ体制の強化が必要と思われる。
石川 被災した病院の看護師 離職防止へ 在籍出向を検討 厚労相
(NHK NEWS 2024.2.20)
退職し他地域に流失する看護師らの離職を防ぐための措置として、「在籍出向」の仕組みを検討。
武見厚生労働大臣は、閣議のあとの記者会見で「能登半島北部の4つの病院には全国の医療機関から累計およそ1800人の看護職員を派遣しているのに加え、石川県などが職員本人の意向を丁寧に聞きながら、
仮設住宅の整備や離職防止に向けた取り組みを検討している」と説明しました。
その上で、もとの病院に在籍したまま、
生活が落ち着くまで、一時的に県南部の公立病院で勤務することができる「在籍出向」の仕組みを、
県や自治体が検討していることを明らかにし、
厚生労働省としても必要な助言を行っていく考えを示しました。
能登 看護職65人退職 4病院 例年の2倍
(朝日新聞3月20日)
ついに、ここまで来てしまったか。奥能登4病院の退職者が、例年の2倍に達したという。
1月の地震以降、2月末までに看護職員が15人退職。
今月に入ってからも、50人が退職したり、退職の意向を示している。
地域医療を担う総合病院の医療体制が危機的状況に陥っている。
現看護師を、「在籍出向」の取り組みも期待されたほど効力を発していない。
これまでに、この制度に申請した看護師は3人にとどまっている。
同様の記事は毎日新聞3月20日付にもあり、
地震により心身への負担が大きくなったことが影響しているとみられる、と記事を結んでいる。
短歌2題 (朝日歌壇)
能登地震潰れた家の傍らに椿咲くのが一入(ひとしお)悲し 森田光子
古老云う「雪の深さは情けの深さ助け合わねば生きられない」と 柳村光寛
(ことばのちから№11) (2024.03.20記)
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