オバマ氏広島騒動 (風の行方№38)
オバマ氏の広島滞在は約1時間と短かった。
だが、核廃絶へ向けてのメッセージとして意義ある広島訪問だった。
オバマ氏が被曝者の森重昭さん(79)を抱きしめた映像は、感動的だった。
白髪で杖を手にした被爆者の言葉に頷きながら、オバマ氏の表情が悲しげな表情に変わっていく。
長い手を伸ばして抱きしめ、背中をさすった。
「自分の言葉でお礼を言いたい」と通訳を介さずオバマ氏に話しかけようとした森氏だが、
緊張に言葉が詰まり、体が震え、涙が頬を伝った。その瞬間森氏はオバマ氏に抱きしめられた。
2009年プラハ演説で「核兵器のない世界」を唱えたオバマ氏の心の内が現れた瞬間だ。
世界には推定15,000発の核兵器があると言われている。
「核兵器のない世界」には程遠いが、核軍縮の機運を高める礎になり、
核なき世界に向けた時代の転換点になれば、広島訪問は大きく評価できる。
「大統領があなたのところに行って話します。握手もします」
森さんがそう伝えられたのは、一連の行事が始まる約10前だった。
森さんは約40年間、広島で被爆死したアメリカ兵捕虜12人を調査し、
米国人の遺族と交流を続けてきた歴史研究家でもある。
民間のこうした恩讐を超えた行為が、米国側の招待者として選ばれたことは
賞賛に値する。
米国側の招待者・伊藤次男さん(81)も悲しい体験を持つ。
2歳上の兄を広島の原爆で亡くし、35歳の長男をニューヨーク同時多発テロでなくしている。
在米被爆者という経歴を持つカノ・ヨリエさんは、広島で被爆し、その後米国に移住した。
カルフォニア州からの参加だ。
米国側の招待者は6人だが、森さんの妻以外は、
全員が米国史と深くかかわりを持つ人たちだった。
招待人選に工夫の跡がみられる。
日本側がこだわったのは原爆資料館の見学だった。
悲惨な被曝の実態は資料館を見なければ理解できない。
だが時間がない(滞在予定時間は1時間足らず)。
主要な展示物を入り口付近に集め、やく10分の見学となる。
原爆ドームも訪れてもらいたい訪問先の一つだったが、
周辺に立ち並ぶビルからの狙撃を防げないと米先遺隊の反対で、
訪問を断念せざるを得なかった。
「謝罪をしろ」とは言わないが、原爆を投下した責任に触れることもなく、
あわただしい時間の中で、「核なき世界」の必要性だけは、しっかりと主張して、
日本を後にした。
核保有世界一のアメリカが「核なき世界」の実現を訴えるという、
何とも奇妙な一面が残ったオバマ氏の広島訪問でした。
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