「原発事故の賠償費」
なぜ私たちが負担しなければならないのか(2)
負担の理由と負担額、そしていつまで負担したらいいのか
原子力発電は1960年代からある設備なのに、
事故を起こした時の賠償への備えをしていなかった。
そのツケをどうして国民に負担させるのか、納得がいかない。
経産省の説明
「原発事故の賠償費は本来、
日本で原発が動き始めた60年代から確保しておくべきだった。
だから、過去にこのコストが含まれない安い電気を使った人に負担を求めるのが適当だ」
必要な備えを半世紀近くも怠っておいて、
その責任を電力会社に問わずに国民に負担を求めるのはいかがなものか。
現在に至るまで、政府や電力会社は原発の電気は、
他の火力発電(天然ガス、石炭)や水力発電に比べて低コストだと説明してきた。
しばしばいわれているように、原発の事故リスク費用を価格に備えとして加えていなければ、
価格競争のスタートラインそのものが揺らいでしまう。
それなのに、「過去にこのコストが含まれない安い電気」を使っていたのだから、
「電気代に上乗せしますから負担してください」というのはあまりに虫のいい話ではないか。
原発優遇策(託送頼み)
福島第一の廃炉費などにも、新電力の送電線使用料金(託送料金)に上乗せして、
費用捻出しようとしている。
電力自由化を推進しながら、その裏で新電力会社には全く関係のない賠償費の一部を
託送料金に上乗せして負担させるというのは、自由競争の原則に反するのではないか。
原発に関するコストは、原発を持つ事業者が担うものではないのか。
具体的に見ていこう
事故の賠償費を東電を含む大手電力9社が負担している。
そのうち下図の7電力が電気料金に盛り込んで消費者負担としている。
しかも、この負担金額は料金の内訳が書いてある検針票には載せていない。
商取引ではこのやり方は詐欺にあたり、クレーム対象になります。
電力7社が電気料金で回収する福島原発事故の賠償費(下図)
|
一年度あたり |
1KWhの |
1世帯の2016年 |
北海道電力 |
65億2000万円 |
0.22円 |
1034円 |
東北電力 |
107億 910万円 |
0.14円 |
774円 |
東京電力 |
567億4030万円 |
0.25円 |
1159円 |
中部電力 |
124億2060万円 |
0.11円 |
587円 |
関西電力 |
315億2420万円 |
0.25円 |
1212円 |
四国電力 |
65億2000万円 |
0.26円 |
1484円 |
九州電力 |
169億1940万円 |
0.22円 |
1127円 |
(朝日新聞による試算)
この試算によると一世帯当たり1年で587~1484円ぐらいになるらしい。
しかし、前にも述べましたがこうした金額は各家庭に配布される料金の内訳が書いてある
「検針票」には載せてありません。
一世帯当たりの負担額を筆者の家の電気料金に当てはめて計算すると次のようになります。
関東地方の筆者は東京電力管轄になります。
3月の検針票によれば1カ月の使用料は255KWhになります。
計算式は以下のようになります。
1カ月の使用量(255kwh)×0.25円=63.4円
3月は月額63.4円の負担になるわけだが、請求金額に含まれている様子が感じられません。
1年分の金額は 63.4円×12カ月=761円となる。
検診票にはこのことには一切触れいない。
新聞記事も徴収方法については具体的に触れていない。
何度も記事を読み返し、推測できることは新電力の託送料金に上乗せする。
電気会社が出した利益は、従来であれば電気料金の値下げとして消費者に還元するのだが、
それをしないで、賠償費に充てるということなのだろうか。
この記事も、一番肝心な部分で不親切である。
釈然としないので、東電と記事を掲載した新聞社に電話をして質してみた。
次回はこのことについて、簡単に述べたいと思います。
(風の行方№36) (つづく)
(2017.4.18記)
(風の行方№36)
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