妻が認知症になったら
砂川啓介インタビュー
(ラジオ深夜便・2016.4号より)
佐川啓介さんはNHK幼児番組「うたのえほん」の初代「たいそうのおにいさん」として長く務める。
妻・大山のぶ代はアニメ「ドラえもん」の声優として有名。
砂川氏は妻・のぶ代が認知症を患っていることをラジオで公表。家政婦と共にのぶ代自宅で介護していた。
その介護の様子を「娘になった妻、のぶ代へ」とし、老老介護の様子を公表した(2015.5)。
2016.4月砂川氏は尿管がんの治療のために、のぶ代を老人ホームに入所させる。
2017.5月には入院を余儀なくされ、脳梗塞を併発し同年7月11日死去、享年80歳
このインタビューは2016年1月に放送されたものです。時期的には、
「娘になった妻、のぶ代へ」を上梓してほぼ1年後である。
妻の異変
アルツハイマー型認知症の診断を受けた時には、現実を受け入れがたい思いがあったが、
考えてみれば異変は確かにあったようです。
2、3前に言ったことをすぐに忘れてしまうとか、
怒りっぽくなって人間が180度変わってしまった。
「そんなはずはない!」そんなはずはないという思いが強かったようです。
言ったことをすぐに忘れ、同じ話をくりかえす。そのことを「おかしい」とも思わなくなる。
高齢による物忘れとは全く違うパターンです。
忘れたことを気にならない。しかし、忘れるたびに周りからそのことを指摘されたりすると、
だんだん気が重くなるのでしょうか、無口になり、当然周りとの会話の数も少なくなってきます。
自分の意思を「思うように相手に伝えることができない」。「相手が理解してくれない」。
此のいらただしさが、行動の変容につながり、時には相手への暴力に繋がって来るようです。
やがて、のぶ代さんが長年務めた「ドラえもん」のことも分からなくなり、排泄、幻覚、徘徊などに振り回される日々が続いたのでしょう。
とてもとても、老老介護の二人ぼっちの環境ではどうにもなりません。
介護される側も、する側にとっても、辛く厳しい状況が続きます。
孤立無援の状況での老老介護の先には、破滅という辛い現実が待ち構えています。
行政的な援助や周りの人たち(血縁者等)の支援が必要になってきます。
福祉的支援は申請主義の立場を持っていますから、当事者が無知であったり、支援を拒否した場合にはなかなか難しい局面を迎えてしまいます。
「自分の妻は自分が面倒を見る」という選択も難しい選択です。
老老介護の果てに、介護する方が心身ともに疲れ、先に逝ってしまう例も珍しくありません。
介護の現実を見極め、「施設入所」の選択も仕方のないことと思います。
砂川氏の場合は、自分が体調を崩したことが原因でのぶ代さんの施設入所を考えたようです。
「病気の君を置いて先には死ねないよ」と言っていた砂川氏でしたが、冒頭に述べましたように
先に旅立ってしまったのは、砂川氏でした。
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