ことの葉散歩道(13)
正直の反対は?
「正直の反対は嘘をつくことではありません」 朝日新聞朝刊に連載中の小説 「春に散る」沢木耕太郎著より |
ボクシングジムへの入門面接のやり取り。
「君は、正直がいいことだと思っていますか」という問いかけについて入門希望者が答える。
「ええ、嘘をつくよりいいと思います」。
これに対して、冒頭の「正直の反対は嘘をつくことではありませんよ」という言葉に繋がってくる。
さらに、面接者の真田(どうやら、ジムのオーナーらしい)は続ける。
「話と言うのは、省略することができるんです。
省略することは、嘘をつくことではありません。すべてを話すのではなく、必要なことを話せばいいんです」
「相手が聞きたいことは何なのか。大切なのはそれを考えて話すことです」
相手が何を希望しているのか。
どう答えたらいいのか。
これを見極めるのが大切だ。
その上で、省略すべき点は省略し、要点のみを簡潔に述べることが肝要だ。
とくに、就職試験の面接のように短い限られた時間で自己表現しなければならない時には大切な心構えだ。
しかし、自己表現を前面に押し出しすぎて、我欲が出てしまうと、マイナスとなるから注意が必要だ。
自分を飾ることなく、自己表現することはなかなか難しい。
良く見せたい、良い印象を与えたいなどと、どうしても地の自分に甘いオブラートを掛けてしまいがちである。
そうした傾向は、多少の差こそあれ、誰にでもある傾向だからそれ程悪い事ではない。
ただし、ほどほどにしないと鼻に付いてきて、化けの皮が剥がれ、信用を失うことになる。
同じように、手紙や報告書を書く時も、
「相手が何を要求しているのか、要点は何処にあるのか」をよく理解し、把握することで手紙や報告書の良し悪しが決まってくる。
一番大切なことは、自分が何を言いたいのかをしっかりとらえることである。
その上で、言いたいことの八割を述べることが大切。
抑制のきいた手紙や文章は、無駄がなく、読後の余韻が心に残る。 (2015.10.6記)
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