児童文学 「ビルマの竪琴」に見る水島上等兵の気持ち(4)
魂の救済
一人きりの力のむなしさに水島は愕然とします。
「私はその時、ビルマの戦場に置き去りにされている仲間の死体を、
そのままにして帰るわけにはいかない」
手紙にはそう書かれていました。
「一人も漏れなく、一緒に日本へ帰ろうという同胞の言葉は今も忘れません」
しかし、
置き去りにされた仲間の死体を見てしまったからには、
「私は、それを諦めなければなりません」
「私はビルマに残ります。そして、皆様が懐かしくなったら、竪琴をひきます。
長い間お世話になりました。皆様の幸福を、心からお祈りします」
兵隊たちは、
肩を抱き合い、
ある者は泣き、
ある者は、
かすかに見える陸地を眺めながら、
水島上等兵のことを思い浮かべました。
船上の兵隊にはその時、あの懐かしいメロディが聞こえてきたように思えました。
互いにむつみし、日ごろの恩
別るる後にも、やよ 忘するな
身を立て 名をあげ やよ 励めよ
今こそ 別れめ、いざさらば
船は懐かしい祖国日本に向かって、ビルマを離れていきました。
波の音と風の音が船上の兵隊たちを静かに慰めているようでした。
(おわり)
参考文献
ビルマの竪琴 竹山道雄著 新潮文庫 (写真)
アニメ日本の名作ビルマの竪琴 金の星社
弓兵団インパール戦記 井坂源嗣著 光文社NF文庫
以上の文献を参考に脚色しました。
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