福島原発事故で発生が報じられ、TVなどの専門家は「止めるは成功した」と解説し、言葉や表情から「誇らしげとも安どした」とも感じられる印象を受けました。「止める」に失敗していたらどうなっていたのでしょうか?
キーワード「原子炉スクラム」「失敗」で調べてみました。
「止める」に失敗したらとういQ&A(教えてgoo) もありますが、確かなことはわかりません。
注:
原子炉スクラム とは
こんなものが出てきました。
海外の原子力発電所における主な事故 ((財)高度情報科学技術研究機構)
10.米国ブラウンズフェリー発電所3号機のスクラム失敗
BWR(沸騰水型原子炉)の出力発振-核暴走事故の危険性-(
京都大学原子炉実験所 原子力安全研究グループ)
出力振動が起きた場合でも,いまのところスクラムがかかって大事故に発展していませんが,最終的な歯止めであるスクラムに万一失敗すれば,チェルノビリ事故同様の反応度事故(暴走事故)に発展するのは必至です.スクラム失敗はありえない事故ではなく,スクラムできなかった事故はいままでにも結構ありました.幸いなことに,ただそれが暴走事故や冷却水喪失事故などと結びついて起きていないだけのことです。中略 電力各社から通産省資源エネルギー庁に出された「シビアアクシデント対策」には,このようなもの(出力振動に関するもの)はその影も見つかりませんでした。
「出力振動」に関して
超高出力密度炉心ABWR プラントの実用化に向けた技術開発
近年においても海外ではBWR の核熱水力安定性の問題に起因する出力振動事象の発生が見受けられる。この中には,経済性の向上を目的としたプラント増出力,即ち,炉心出力密度の増加に遠因すると想定されるものもある1,2。本研究において,炉心出力密度増加時に想定される核熱水力安定性の問題に取り組む一環として,出力振動時を含めて高い精度で事象を評価するモデルを開発し,また,これを用いた安全評価手法の構築を進める。これにより,事象発生の抑止のみならず,その発生時においても炉心燃料等の安全性評価が適切になされ,我が国の原子力プラントの安全な運転,即ち,我が国の電力の安定供給の確保に資することが期待される。
IAEA のホームページから出てきた、日本原子力研究所(現在の独法原子力開発機構)(2005年 平成17年)が公刊した文書 ↓
「
THALES-2コードによるBWRMark-IIを対象としたレベル3PSAのための系統的なソースターム解析」
原子力発電所の確率論的安全評価(PSA)のために(過酷な事故)時の事故進展と放射性物質(以下ではFPと略す)の移行挙動を解析できるよう日本原子力研究所(原研)で開発された総合的シビアアクシデント(過酷事故)を解析コードである。現在、原研では、
Mark-II型格納容器をもつ110万kW級BWR・5プラントを対象とするレベル3PSAを実施しており、その一環としてTHALES-2を用いた広範な事故シナリオに対するソースターム評価を実施した。本報告書では、炉心損傷事故シーケンス及び格納容器の機能が喪失するシナリオ(格納容器機能喪失シナリオ)の違いがソースタ}ムへ及ぼす影響について、主要な知見を報告する。 とういものです。
今回福島原発では「止める」(制御棒正しく挿入された)は成功したと言われています。
「止める」に失敗したらどのような状況が起きるかなど、コンピュータでシュミレーションして見た結果だと考えられます。
本文の27頁(文書全体の43/152)
4. 5原子炉スクラム失敗(TC)(制御棒正しく挿入されないなど緊急停止失敗)シーケンス
制御棒の一部の挿入不可を考慮するために出力の一部を残した状態での計算は、反応度解析モデルが組み込まれていないことからTHALES-2 コードでは解析できない。そのため、TCシーケンスの炉心での急激な冷却材の蒸発を模擬するため、W/W及びD/Wの圧力と温度を初期条件で高く設定し、約1.5時間程度で格納容器が破損するものとしてソースターム解析を実施した。従って、本事故シーケンスについては5章においてソースターム評価結果のみを示す。
4.6イベント(事故の進行)時刻に関する支配因子
炉心溶融の開始時刻は、炉心への注水がどの程度の期間、働くかによって決定され、炉心損傷事故シーケンスによって異なる。また、その後の炉心支持板破損、圧力容器破損といったイベントの発生時刻は、炉心溶融開始時点、での燃料中の崩壊熱の蓄積量に依存する。Table 4.6にTCを除く4つの炉心損傷事故シーケンスに対する計算開始から炉心溶融開始までの炉心で発生した崩壊熱、炉心からの除熱量、炉心への蓄積熱量、各イベントの時間間隔の比較を示す。炉心からの除熱量は、炉心冷却系の作動の状況によって決定される量である。炉心での蓄積熱量と事故の進展をみると、炉心溶融開始時点での蓄積熱量が多い事故シーケンス程、事故の進展が早いことがわかる。
TQUVシーケンスは、炉心注入系が全く働かない事故シーケンスであるので、炉心での蓄積熱量が最も多く、
炉心溶融開始から支持板破損までの時間間隔は15分と最も短い。
TQUV1Wシーケンスでは、
LPCI(非常用炉心冷却装置の非常用炉心冷却装置)が効率的に働いたために、発生した崩壊熱以上に除熱されており、炉心溶融開始から支持板破損までの時間間隔は121分と事故の進展は最も遅くなった。炉心支持板破損以降の事故の進展は、炉心下部における冷却水の存在量及び金属一水反応から発生する熱量にも影響するので単純ではないが、この蓄積熱量が多い事故シーケンスほど炉心溶融開始から圧力容器破損までの時間間隔が短いと考えられる。
などと書かれています。
次に、
レベル2PSA 手法の整備(BWR) (独立行政法人 原子力安全基盤機構 2003年 平成15年度)
1-1頁(11/114頁)
地震の規模によっては、放射性物質放散の防護壁となっている格納容器自体の損傷が懸念されるとともに、 LOCA事象と全交流電源喪失、あるいは、クラム失敗とが重複するなどが懸念されることや、アクシデントマネジメント(AM(略))策の追加設備自体が地震により機能喪失することが想定されるため、格納容器の健全性及びソースタームへの地震の影響を確認できるように手法を整備する必要がある。
28/114頁~29/114頁には、
表2.2 地震時の代表的な事故シーケンス(1/2):
BWR-5 MarkⅡ改良型原子炉施設に、様々な想定がなされています。
地震時レベル2PSA手法の整備(BWR) 独立行政法人 原子力安全基盤機構平成19年2007年
も見つかりました。
「こういう事象が発生すると、こんな事態になる」がたくさん書かれています。