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馬場先生のメディカルイラストレーション講座

2017年12月14日 | 報道・出版関係
馬場元毅先生のメディカルイラストレーション講座が出版されました!
若手脳神経外科医は必携です。
私も研修医の頃から一生懸命、手術の絵を描いてきました。
みんな、頑張れ!

私の書評を掲載しておきますね。

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ついに出た!馬場先生のメディカルイラストレーション講座

 私たち脳神経外科医は手術の記録を絵にして残すよう指導されます。私も研修医の頃に、「手術の絵はカラーで綺麗に描いてプレゼンするように」と指導されました。当時からビデオ録画はされており、プレゼン用に動画の編集もするのですが、それとは別に絵を描くように指導されていたのです。そして私は現在、当科の若手スタッフに手術の絵を描くことを推奨しています。それはなぜなのでしょうか?
 一般的には動画は「動き」が分かりますし、慣れれば編集も早くなるので手間もかからないように感じます。それに最近では手術の技術が向上して、無血の術野で手術が進むことが多くなり、動画でもかなりのことがわかります。しかしそれでもなお、絵を描くことが推奨されるのはなぜなのでしょうか?それは、動画では「表と裏を同時に示すことはできない」からなのです。脳神経外科の手術においては、術者は術野に見えているものの裏側を常に意識して操作を行わなくてはなりません。そうしないと器具の挿入や構造物の牽引時に裏側の神経や血管をキズづけてしまう可能性があるからなのです。そのために術者は、吸引管や鑷子を用いて一瞬、構造物の裏側を覗き、それを脳裏に焼き付けて手術を進めるのです。つまり、経験の豊富な術者は「透視」のようなイメージを持ちながら手術をしているということです。では、このようなスキルを身につけるにはどうするか?その近道が絵を描くことなのです。しかし、手術の絵の描き方など誰も指導してくれません。特に、もともと絵の苦手な人はどうしたらいいのでしょうか?
 そこに待望の本が出ました!「Dr. Babaのメディカルイラストレーション講座」です。馬場元毅先生は脳神経外科の手術書で素晴らしいイラストレーションを描かれている「プロフェッショナル」です。そのような方がそのコツを教えてくださるという嬉しい企画なのです。しかもDVDの解説もついている。これは購入するしかありませんね!
 私は2016年に日本脳神経外科コングレスを担当させていただきましたが、会のテーマを「脳神経外科におけるアートとサイエンス」と致しました。これは「脳神経外科においてはアート(技術)とサイエンス(科学)の両輪が重要である」というメッセージだったのですが、もちろん「芸術のように美しい手術」といったニュアンスも含んで企画していました。その過程で、山梨大学の木内博之教授から「アートに関して良い講師がいる」と馬場先生をご紹介いただきました。「あの有名な馬場先生が直接ご指導頂けるのなら最高の企画になる」と直感し、イラストレーションの描き方に関するハンズオンセミナーをお願いしました。予想通り、このセミナーは大好評ですぐにチケットが売り切れてしまいましたし、実際に講習を受けた当科の若手の絵は、まるで小学生のようなレベルからセミプロレベルに一気に変わりました。まるでテレビ番組の「ビフォーアフター」さながらです。
 この本は、馬場先生の講習会に参加するのと同じ、あるいはそれ以上に本格的なイラストレーション指導書です。ぜひ医局に一つ、いや一人に一冊欲しいところです。この本を読んだ若手脳神経外科の皆さんの絵の上達と手術技術の向上を願っています。

兵庫医科大学脳神経外科学講座
吉村紳一
コメント
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