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脳動脈瘤 その44 脳血管内治療:その14 フローダイバーター Pipelineの初期治療成績

2021年11月28日 | 動脈瘤
昨日まで日本脳神経血管内治療学会で福岡に出張していました。
しばらく間が空いてしまいしたが、フローダイバーター治療の説明を進めていきます。

今回はフローダイバーターの治療成績を紹介します。
まずは日本に初めて導入されたフローダイバーターであるPipelineを用いた治療の初期成績を見てみましょう。
2008年から2013年の世界17施設のデータです。(AJNR Am J Neuroradiol 36:108 –15 Jan 2015)
この頃の治療適応は最大径10ミリ以上の内頚動脈近位部動脈瘤でしたが、この研究によると実際には、内頚動脈遠位や椎骨脳底動脈、10mm未満の小型瘤や破裂動脈瘤も含まれていました。
トータル793名の患者さんの906動脈瘤の治療が解析対象となりました。
未破裂脳動脈瘤が824個 [91%]、破裂脳動脈瘤が76個 [8.4%]、不明が 6個 [0.7%]でした。
その結果、全体としての合併症は後遺症7.4%、死亡3.8%という成績でした(図左)。
これを見るとかなり後遺症・死亡の確率が高いです。
なぜでしょうか?

上述のように、この研究には破裂脳動脈瘤や椎骨脳底動脈などが含まれていることが理由と考えられます。
そこで未破裂と破裂動脈瘤を比較したデータを示します(図右)。
これを見ると、どの場所、サイズにおいても破裂脳動脈瘤の後遺症・死亡率が高いことがわかります。
このような条件から、日本では未破裂脳動脈瘤のみが治療適応になっていると考えられます。
また、ここで気づくのは、10mm未満のサイズの動脈瘤における治療成績が最も良く、椎骨脳底動脈瘤の治療成績が不良なことです。

このデータは2008年から2013年に取得されているため、当時の治療器具や薬剤、医師の経験度を考慮に入れる必要があります。
このため、その後、どのような治療成績になっているかが気になります。
一方、大型脳動脈瘤においては開頭手術の治療成績も良くないとされていますが、この治療成績との優劣についてはまだわかっていません。

しかしこれらの成績を元に、世界的に一気にフローダイバーター治療が広まっていきました。



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