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Mozart Album
2012年09月06日
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閑話休題
昨日発売の辻井伸行さんの新しいアルバム、入手しました。
これで仕事の合間、しばらく楽しめそうです。
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天才肌の辻井氏。
(
love 4 all
)
2012-09-06 23:18:04
以前、先生ご推奨の『CHOPIN』を聴いたら、癒し空間、生まれました。
彼、心なしか大人っぽくなりましたね。
PS:昨日はこちらからの予約変更依頼にもかかわらず、メールが繋がらず申し訳ありませんでした。
その後の丁寧なご対応に感謝いたします。
返信する
Mozart Album
(
M. L. Liu
)
2012-09-07 12:50:09
こんにちは 、アメリカから 。
I received this CD from Japan yesterday. The sound quality is outstanding, and the playing of Mr. Tsujii is crystal clear and precise. I too listen to it wile I work.
返信する
生きていること、生かされて在ることの「奇跡」
(
はまゆう
)
2012-09-10 00:51:25
吉村先生が<愛聴>なさっていらっしゃる辻井伸行さんを、
伝説のピアニスト=ヴァン・クライバーンが、「奇跡のピアニスト」と賞賛したことを
想い浮かべました。
その辻井伸行さんによるモーツァルトのアルバムということで、モーツァルトの音楽が
主人公の死生観に大きく影響を与えている小説――宮本輝の『錦繍』(新潮文庫)も、
併せて想起しました。
そのエピソードをここにご紹介することを、お許しいただければ幸いです。
*
「一曲のシンフォニィが、たとえようもないくらい美しい妙なる調べ、そして同時に
どうしようもなくはかない世界を暗示する不可思議な調べみたいに感じられてきた」
『錦繍』の主人公は、
「どうしてこんなにも美しい曲を、二百年も昔に、三十そこそこの青年が創りあげる
ことが出来たのであろう。しかもこんなにも烈しく、悲しみと喜びの二つの共存を
言葉を使わずに人間に教えることが出来たのであろう」
という問いかけのかたちで、モーツァルトという人間の「奇跡」への感動を語って
います。
また、モーツァルトの音楽は、「生きていることと、死んでいることとは、
もしかしたら同じことかもしれない」と感じさせ、「悲しみと喜びの二つの共存」を
教えている――本来は二項対立的にとらえられる概念や感情を、異質なものとして
認識させるのではなく、「共存」するもの連続するものとして感じさせていることに、
モーツァルトという人間の「奇跡」がうかがえると綴っています。
「宇宙の不思議なからくり、生命の不思議なからくり」を表現する
モーツァルトの「奇跡」――、
それはまさに、「辻井伸行」という青年の「奇跡」と<交響>し、私たちを感動
させてやまないのではないでしょうか。
日々の慌ただしい生活のなかで、生きていること、生かされて在ることの「奇跡」を
忘れそうになる度に、
モーツァルトの音楽を、辻井伸行さんの『Mozart Album』を、私も<愛聴>させて
いただきたいと思っています。
*
<生きていること、生かされて在ることの奇跡>ということの連想で、
血管内治療という<奇跡のような治療>を想起させていただきました。
自分自身が生を享けた時代に、<奇跡のような>血管内治療が開始され、
改善に向けた挑戦が日々おこなわれているということについて、
「脳卒中をやっつけろ!」の記事から教えていただくこと頻りです。
★「教科書の編集」(2010年8月15日)でご紹介のあった
根來眞・監修『脳動脈瘤血管内治療のすべて――基本から最新治療まで』
(メジカルビュー社 2010年7月)の巻頭に記されているように、
「当初あくまでも補助療法であったはずのものが、いまや脳動脈瘤治療の主たる
治療の座につきつつあること」を、
「脳卒中をやっつけろ!」の記事からも多々学ばせていただいています。
「病気に悩む患者とその家族にとって、請い願わずにはいられない<奇跡>――
奇跡とは通常、「常識では考えられない神秘的な出来事や不思議な現象」を
さす言葉だと思いますが、本書を拝見していると、<奇跡とは、そうあって
ほしいという切なる願いを、着実に実現すること>という“定義”にならざるを
得ないように思われます。」
と僭越にも記させていただいたコメントの想いを、改めて抱かせていただいています。
モーツァルトや辻井伸行さんと同様、
<生きていること、生かされて在ることの奇跡>を感得させてくださる
先生方の<奇跡のお仕事>に、今回も心よりの感謝とエールをお送りします。
返信する
錦繍
(
はまゆうさんへ
)
2012-09-11 08:35:31
焦点がずれていますが、私の中で作品名の「錦繍」がヒットしました。
普段、遣い慣れない言葉ですが、調べてみると色んな意味があるようです。
作品の中ではどんな意味合いで遣われているんでしょうか?
ご存知でしたら、ご教示いただけませんか。
返信する
命の交響のドラマ『錦繍』における「錦繍」の意味
(
はまゆう
)
2012-09-12 03:48:24
「奇跡のピアニスト=辻井伸行」が演奏する「モーツァルトの奇跡」という連想から、
宮本輝の小説『錦繍』の断片を(勝手に)ご紹介させていただきましたところ、
作品における「錦繍」という言葉の意味合いについてお尋ねいただきました。
関心を持ってくださった方に、以下、(吉村先生のブログ上で恐縮ながら)
ささやかな私見を述べさせていただければ幸いです。
*
宮本輝は「自作再見」(「朝日新聞」1991年1月13日)に、
「『錦繍』という題で、書簡体の小説を書こう・・・。しかもその小説は、死も生も、
ただ有るべき形の変化だけにすぎないということがテーマだ・・・」と記しています。
その「錦繍」という言葉の解説として、小学館『日本国語大辞典』には、次の4項目が
挙げられています。
①錦と刺繍をした織物。
②美しい織物。立派な衣服。
③美しい紅葉や花をたとえていう。
④うるわしい字句の詩文、詩文の巧みな思想をたとえていう。
この③と④の項目が、宮本輝『錦繍』に該当すると思われます。
『錦繍』は、かつて夫婦であった亜紀と靖明が、十年ぶりに「美しい紅葉」の蔵王で
再会し、その冬から翌年の秋にかけての約一年間、合計14通にのぼる往復書簡を
繰り広げた、その手紙の文章だけから成る長編小説です。
『錦繍』における「錦繍」とは、
亜紀と靖明が再会した時期の、すなわち自然の四季のうち「錦秋の候」を表現する
「美しい紅葉」(③)であり、
また、「死も生も、ただ有るべき形の変化だけにすぎない」という作者の死生観を
体現する主人公たちの手紙、すなわち「うるわしい字句の詩文」(④)であり、
さらに、彼らが到達した人生についての「巧みな思想」(④)を表現する言葉であると
考えられます。
その「巧みな思想」とは、「生きていることと、死んでいることとは、もしかしたら
同じことかもしれない」という死生観であり、
亜紀の場合には「モーツァルトの奇跡」を感得することで、
靖明の場合には自らの臨死体験の啓示によって到達した死生観でした。
*
辞書的な意味に対応させると上記のようになると思いますが、宮本輝の「錦繍」には、
さらに、随筆集『命の器』(講談社文庫)所収の「錦繍の日々」に記されたような
意味合いが籠められています。
「紅葉は、私にとってもはや植物の葉の単なる変色ではない。自分の命が、絶え間なく
刻々と色変りしながら噴きあげている錦の炎である。汚濁、野望、虚無、愛、憎悪、
善意、悪意、そして限りなく清浄なものも隠し持つ、混沌とした私たちの生命である。
どの時期、どの地、どの境遇を問わず、人々はみな錦繍の日々を生きている。」
『錦繍』執筆前後の宮本輝は肺結核に罹っていて、自分自身の<死>と向き合う
衝撃的な体験のさなか、「さまざまな朱色に燃える紅葉」に接して、
自らの「生命」の「燃え」を「錦繍」と表現しています。
すなわち、「錦繍」とは、宮本輝にとって、「一本きりの寂寥たる紅葉」であり、
また、「樹齢を重ねた、生命力豊かなもみじの燃え」であり、
「不可思議な法則とからくり」を秘めた「生命」そのものでした。
そして、宮本輝のこのような「錦繍」への思い入れが、小説『錦繍』を創出させる
原動力となったと考えられるのです。
*
吉村先生のブログ愛読者の皆様、
意を尽くせないまま、長々と記してしまい、本当に申し訳ありません。
それぞれにお好みがおありと思いますが、
<錦繍/錦秋の候>、この味わい深い素敵な小説を、どうぞご一読くださいませ。
返信する
お返事ありがとうこざいます!
(
はまゆうさんへ
)
2012-09-12 11:52:06
他愛ない質問でしたのに、詳しくご教示いただいて感激です!
やはり作家さんの書くものは奥が深いのですね。
宮本作品にも、辻井作品にも、明るくない私ですが、非情に勉強になりました。
このニューアルバムも、ぜひ楽しんでいただき、感想などお聞かせくだされば幸いです。
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兵庫医科大学脳神経外科の吉村です。
脳卒中の診断と治療(外科手術・脳血管内手術)を専門としています。
みなさんに脳卒中に関する正しい情報をお届けします。
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脳動脈瘤、脳梗塞などを系統的に解説しています。手術アニメーションや動画もありますので参考にしてください。
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伝説のピアニスト=ヴァン・クライバーンが、「奇跡のピアニスト」と賞賛したことを
想い浮かべました。
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主人公の死生観に大きく影響を与えている小説――宮本輝の『錦繍』(新潮文庫)も、
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そのエピソードをここにご紹介することを、お許しいただければ幸いです。
*
「一曲のシンフォニィが、たとえようもないくらい美しい妙なる調べ、そして同時に
どうしようもなくはかない世界を暗示する不可思議な調べみたいに感じられてきた」
『錦繍』の主人公は、
「どうしてこんなにも美しい曲を、二百年も昔に、三十そこそこの青年が創りあげる
ことが出来たのであろう。しかもこんなにも烈しく、悲しみと喜びの二つの共存を
言葉を使わずに人間に教えることが出来たのであろう」
という問いかけのかたちで、モーツァルトという人間の「奇跡」への感動を語って
います。
また、モーツァルトの音楽は、「生きていることと、死んでいることとは、
もしかしたら同じことかもしれない」と感じさせ、「悲しみと喜びの二つの共存」を
教えている――本来は二項対立的にとらえられる概念や感情を、異質なものとして
認識させるのではなく、「共存」するもの連続するものとして感じさせていることに、
モーツァルトという人間の「奇跡」がうかがえると綴っています。
「宇宙の不思議なからくり、生命の不思議なからくり」を表現する
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奇跡とは通常、「常識では考えられない神秘的な出来事や不思議な現象」を
さす言葉だと思いますが、本書を拝見していると、<奇跡とは、そうあって
ほしいという切なる願いを、着実に実現すること>という“定義”にならざるを
得ないように思われます。」
と僭越にも記させていただいたコメントの想いを、改めて抱かせていただいています。
モーツァルトや辻井伸行さんと同様、
<生きていること、生かされて在ることの奇跡>を感得させてくださる
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普段、遣い慣れない言葉ですが、調べてみると色んな意味があるようです。
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関心を持ってくださった方に、以下、(吉村先生のブログ上で恐縮ながら)
ささやかな私見を述べさせていただければ幸いです。
*
宮本輝は「自作再見」(「朝日新聞」1991年1月13日)に、
「『錦繍』という題で、書簡体の小説を書こう・・・。しかもその小説は、死も生も、
ただ有るべき形の変化だけにすぎないということがテーマだ・・・」と記しています。
その「錦繍」という言葉の解説として、小学館『日本国語大辞典』には、次の4項目が
挙げられています。
①錦と刺繍をした織物。
②美しい織物。立派な衣服。
③美しい紅葉や花をたとえていう。
④うるわしい字句の詩文、詩文の巧みな思想をたとえていう。
この③と④の項目が、宮本輝『錦繍』に該当すると思われます。
『錦繍』は、かつて夫婦であった亜紀と靖明が、十年ぶりに「美しい紅葉」の蔵王で
再会し、その冬から翌年の秋にかけての約一年間、合計14通にのぼる往復書簡を
繰り広げた、その手紙の文章だけから成る長編小説です。
『錦繍』における「錦繍」とは、
亜紀と靖明が再会した時期の、すなわち自然の四季のうち「錦秋の候」を表現する
「美しい紅葉」(③)であり、
また、「死も生も、ただ有るべき形の変化だけにすぎない」という作者の死生観を
体現する主人公たちの手紙、すなわち「うるわしい字句の詩文」(④)であり、
さらに、彼らが到達した人生についての「巧みな思想」(④)を表現する言葉であると
考えられます。
その「巧みな思想」とは、「生きていることと、死んでいることとは、もしかしたら
同じことかもしれない」という死生観であり、
亜紀の場合には「モーツァルトの奇跡」を感得することで、
靖明の場合には自らの臨死体験の啓示によって到達した死生観でした。
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辞書的な意味に対応させると上記のようになると思いますが、宮本輝の「錦繍」には、
さらに、随筆集『命の器』(講談社文庫)所収の「錦繍の日々」に記されたような
意味合いが籠められています。
「紅葉は、私にとってもはや植物の葉の単なる変色ではない。自分の命が、絶え間なく
刻々と色変りしながら噴きあげている錦の炎である。汚濁、野望、虚無、愛、憎悪、
善意、悪意、そして限りなく清浄なものも隠し持つ、混沌とした私たちの生命である。
どの時期、どの地、どの境遇を問わず、人々はみな錦繍の日々を生きている。」
『錦繍』執筆前後の宮本輝は肺結核に罹っていて、自分自身の<死>と向き合う
衝撃的な体験のさなか、「さまざまな朱色に燃える紅葉」に接して、
自らの「生命」の「燃え」を「錦繍」と表現しています。
すなわち、「錦繍」とは、宮本輝にとって、「一本きりの寂寥たる紅葉」であり、
また、「樹齢を重ねた、生命力豊かなもみじの燃え」であり、
「不可思議な法則とからくり」を秘めた「生命」そのものでした。
そして、宮本輝のこのような「錦繍」への思い入れが、小説『錦繍』を創出させる
原動力となったと考えられるのです。
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吉村先生のブログ愛読者の皆様、
意を尽くせないまま、長々と記してしまい、本当に申し訳ありません。
それぞれにお好みがおありと思いますが、
<錦繍/錦秋の候>、この味わい深い素敵な小説を、どうぞご一読くださいませ。
やはり作家さんの書くものは奥が深いのですね。
宮本作品にも、辻井作品にも、明るくない私ですが、非情に勉強になりました。
このニューアルバムも、ぜひ楽しんでいただき、感想などお聞かせくだされば幸いです。