石室へ戻り、北海洋さんはテントを撤収、私は設営した。下山する彼と別れ、北海沢方面へ向かう。
途中大きく一塊になって咲いていたリンドウを接写。カメラの能力を超えたようで、ピントが
合っていない。
北海沢付近はこれといって見頃はなく、ほとんど撮影できないまま石室へ帰り着いた。
宿泊の受付をした際に天候のことを尋ねたら、今晩から大荒れになるとのことであった。
明日って聞いてたけど、すでに今夜から??
日中やや風が強まってはいたがまだまだ穏やかで、そんなにすぐ急変するのかと半信半疑。
でもまあ機会を逃さず、今日のうちできるだけのことはしておこうと、再び黒岳を目指す。
再び黒岳山頂から表大雪方面。ポン黒岳斜面のウラシマツツジはまだギリギリ見頃を保っていて、
これを写せただけでも収穫があったとしておきたい。
そしてテントへ戻り、ここで今日初めての大休止。日中は行動食のみで、お昼は抜き、
お茶タイムもなしで、晴れ間をできる限り有効に使った結果だと割り切る。でもかなりへばった。
この日はテントは5張りのみ、静かだ。ほどなく夕食をとり、歯磨き、トイレを済まして、
さあ寝ようとした矢先の19:00頃、急に風が強まったかと思うと、一気に大荒れとなった。
推測だが風速は軽く20メートルは超えていたと思われ、瞬間的にはもっとすごい風が吹いただろう。
ゴー、シューというハイマツやナナカマドを吹き抜ける音がうなりを上げ、テントが大きく軋み、
すさまじく揺さぶられた。眠気はあるので数秒から数分は目を閉じても、すぐに揺り起こされ、
音と揺れでとても眠れる状況でなく、夜中5度ほどそんなこんなを繰り返しながら、明け方まで
ほとんど眠れずじまいであった。
テントが飛ばされたり、ポールが折れないかと冷や冷やしたが、なんとか持ちこたえられたみたいだ。
今期から導入したモンベルの新型のステラリッジテントはかなりの軽量で、生地も薄く、張綱なども
細いのでずいぶん心配していたのだ。でもまあ、それなりの耐風性能があることが実証できた。
まさかこのタイミングでワルプルギスの夜に見舞われるとは思ってもみなかったよ。
もう我慢できず、ここで契約を交わし「魔法オヤジ」になるしなかいと決意したのに、
ついにキュゥべえは現れなかった。見捨てんといてくれ~!
天気予報では留萌あたりに強風注意報が発令されている程度で風に対する警戒が特別必要だった
わけではなく、下界と山上では気象状況がまるで違うことを思い知らされた。たまに、周辺
風が強いわけでもないのに、見上げた上空の雲が急き立てられるように流れていることがある、
まさにそれである。
結局この暴風は、翌日の昼頃まで止まず吹き荒れた。しかもこの風、その後まったく収まったわけでなく、
10メートル前後の強風が下山するまで吹き続けたのだ。
黒岳石室手前で北海洋さんと合流する。彼は悪天候のスキをついて、昨日のうちに登頂していたのだ。
日帰り装備に換装後、ふたりで雲の平方面に向かう。しばらくすると、お昼寝中のキタキツネと遭遇。
このところ、なぜかふたりとキツネは相性がいいようだ。
巣立ちしたばかりのまだ若いキツネらしく、夏毛の割に毛並みがあまり汚くない。人を怖がらず、
すぐ立ち去る気配もなく、このあと私も一眼レフを取り出して少し撮影できた。きれいな草紅葉が
広がる秋らしいロケーションもバッチグーである。
あの十勝岳山麓の子ぎつね三兄弟がそのまま元気に育っていたら、今頃これくらいに
なっているはずなのだが…
このあとエサをねだりにこちらにすり寄ってきた。どうやらすでに観光ギツネ化しているみたいだ。
ひとの力を頼りにせず、生きていかんといけんよ! (お前もな)
お鉢の肩(お鉢平展望所)に到着。お鉢内の斜面のナナカマドも色づき始めていた。
雲の平~お鉢周辺のウラシマツツジはまだ美しさを保ち、ギリギリ間に合った感じ。
秋らしい風景を写真に収められ、まったく収穫がなかったわけでなく、ひとまず安堵した。
9月8日(日) 曇り時々晴れ
晴れの予報がしばらく続くのを信じ、三泊分の食料を背負って朝一番のロープウェイとリフトを
乗り継ぎ黒岳七合目へ向かう。ロープウェイ~リフトの乗車券が通しで買えるようになっていた。
これまでその都度別々の窓口で買うのが面倒で、なぜこれがなかったのかが不思議なくらいだった。
天気は続くものの、月曜日の山上の風予報が「風速20メートル」を越えているのが気がかりで、
これはどうやら台風13号の影響らしく、素人にはなぜこのような事態が起こるのか理解しがたいが、
遠くにあっても気象条件に影響を及ぼす、台風って本当にやっかいだ。
リフト乗り場から黒岳を見上げる。
南から暖かい空気が流れ込んで気温上昇、朝日直撃の東斜面の登路は蒸し風呂状態、真夏並みか
もしかしたらそれ以上の暑さに、汗まみれになった。
まねき岩付近、ナナカマドが色づき始めているがどうもあまりきれいでない。
見下ろすと、どうやらすでに七合目付近まで色づき始めていることがわかる。しかし、やはり
葉はチリチリに萎れてるものが目立ち、今年のナナカマドの紅葉の出来は、あまり良くないというのが
率直な第一印象。
実際には暑くてバテバテだったが、天高い秋空の空気をイメージさせる風景を切り取ってみた。
途中二度休憩してようやく黒岳登頂。烏帽子岳~赤岳方面を望む。烏帽子岳斜面のナナカマドが
少し期待できそうに見えたが、けっして万全ではなさそうだ。手前のウラシマツツジはピークを過ぎ
黒ずみ始めている。
表大雪方面の山は、すっきり全部見えていた。