せっかくのこの上天気、しかも滅多にお目に掛かれない雪景色でもあり、もう少し先まで
足を延ばしてみることにし、歩みを進めた。
第二花畑から先、私を追い越していった登山者の足跡のみがついていた。
ここから先さらに雪が深まり、40~50cm程度の積雪量だと思われる。先を行く登山者、
歩くのがお上手と見えて雪に足をとられるような様子がなく、足取り軽く進まれている。
しかしそうでなく、いったん凍って表面が固まっていた雪が日差しで解けて、だんだん柔らかく
なってきているのだとすぐあとで気がついた。彼が通った時にはまだ雪が締まっていて、靴が
あまり沈まなかったのだ。
時々雪の中深くに足がめり込み、時間がかかり、体力も奪われる。日帰り装備でこれなのだから、
山泊まり装備だとかなり苦戦するに違いない。
散らずに持ちこたえたナナカマドの紅葉と東大雪方面の山々。
エイコの沢手前付近で、私としてはこのあたりで限界と思い、ここで引き返すことにした。
ちょうどそこへ先ほどの登山者が戻ってきて、この先紅葉も期待できそうになく引き返した
とのことであった。
さらにそうして立ち話していた我々のもとに後発の登山者が追いついてきて、彼はスノーシューを
ザックに備えており、できたら山頂まで行きたいと我々を追い越していった。
しかししばらくするとやはり引き返してきて、ハイマツ帯の木が雪の重みで倒れ掛かり、通行が
困難なのであきらめたとのことであった。このあと20~30名程度の登山者が次々やってきて、
中には泊り装備の方々も見受けられたが、はたしてどこまでたどり着けたのだろうか。
札幌のIさんも長靴で登ってきて、できたら緑岳山頂まで行きたいと仰っていた。
雪の状況は刻々と変化するのでこのあとのことは想像するしかないのだが、いずれにせよ
相当困難な登山になったのには違いない。
遠望の緑岳斜面、数名の登山者が下山しているらしいのがわかった。これは早朝北海洋さんが
写真撮影を兼ねラッセルして板垣新道~緑岳までつけたルートをたどり、管理人やWさんが先導し、
雪慣れしていない登山者とともに下っている様子だったと後で聞いた。上は、下で考えていた以上に
深刻な状況であったようだ。
下山時の樹林帯の様子。
残っていた色づいたナナカマド。
見晴台からの雪化粧した高根ヶ原。できればこれを山上から眺めたかったところだが、それは限られた
エキスパートのみに許される世界なのだろう。
高原温泉駐車場では顔なじみの方々数名とお会いできた。このあと沼巡りすればさらに多くの旧知の
方と再会できたようにも思うが、私とすればこれで大満足し、温泉で疲れを落とせれば幸せであった。
三連休初日の晴天、山上はすでに冬山ということもあり、多くの方々は山頂を目指す登山はあきらめ、
高原温泉沼めぐりへと向かわれたと思われる。沼は相当な人出だったのと違うかな。
9月21日(土) 晴れ
高原温泉の駐車場での車中泊、かなりの冷え込みを覚悟したのだが、意外と耐えることができた。
昨日到着した時にはまだ大荒れの天候の名残が残り、バラバラっと時雨の雨が降り、駐車場には
解け残った雪が点在していた。
夜中何度か目が覚めて、最初が満天の星空、二度めが月明かり、三度目が雲が多めの月明かりで
あった。当初もう少し早く出かける心づもりであったが、夜の雪道、やはり自信なく、3:30頃に
歩き始めた。
樹林帯に入るとすぐに雪道となり徐々に深さを増し、10~20cm程度の積雪の急登を行く。
昨日の悪天候をついて数名の方が行き来しており、その足跡が残っているのがありがたい。
でなければ、どこが正規の登山道なのか、よくわからない地点があり、おまえに数か所、雪の重みで
倒れた木々で道がふさがれていた。
写真ブレブレだが、ヘッドランプを頼りに登っているのはこんな雪道である。
途中薄いガスに巻かれ、以前そのまま撃沈したのでまたダメかもと負のイメージが頭をよぎったが、
第一花畑へ到着すると、ガス帯を抜け出たようで、朝焼けが期待できそうな雰囲気に先を急いだ。
ところがここから積雪はさらに増え、30cm程度は積もっていて、足をとられ、なかなか前へ
進まない。なぜか日の出地点でない、東大雪方面がより焼けそうな気配なので、ここの見晴らしが
良くなる第二花畑より先に行きたいと、雪と格闘しながら歩みを進めた。
息せき切らしながら第二花畑に到達するも、かろうじて足跡が残っていたのはここまでで、
昨日の登山者たちは、皆ここで断念し引き返したらしいのだ。時間的にも考えていた撮影地点までは
たどり着けそうになく、あきらめ引き返し、第一花畑の上部で撮影することにした。
そこは平生夏道ならすぐの地点だが、雪が深く思うように歩くことができず、わずかな距離の
移動にも難儀し、焦った。
この朝焼けを山上で撮っていた方々は、かなり感触のいい作品を残せたと思うのだが、私もまあ、
予期せぬ急場しのぎな構図ではあったがなんとかメディアに収めることができた。
そして振り返り、朝日を浴びた緑岳を撮影しようとスタンバるが、東の空低くにわずかにガス帯が
あって、紅葉の木々になかなか日が差さない。
この時、緑岳山上に人がいるのに気がついた。札幌のWさんか、もしくは北海洋さんか?
北海洋さんは、19日、あのすごい悪条件をついて下から白雲避難小屋までたどり着いたそうだから
すごいよなあ。私だったら、予報を聞いただけでしり込みしている。
(後日確認したところ、山上にいたのは北海洋さんで、Wさんは小屋前で撮影していたらしい)
それにしても、もし私があのまま山上に留まっていたらどうなっていたのだろうか? 山頂付近
腰くらいまで積雪があったと聞く。よう下山せんかったんとちゃうやろか。
(これも後日談、やはり数名の下山困難者が出て、あわや救助要請というところまでいったそうだ)
そうこうしているうち、下からもう一人登ってきて、私を追い抜いて行った。
第一花畑の下部まで戻ってカメラを構えるも、ガスは多くなるばかり、今日はこれまでかと
あきらめかけたら、
しばらく待機したらピーカンの青空になって、撮影再開。
あの爆風に耐え、かろうじてナナカマドの紅葉が残っていて、一応三段紅葉的な写真も撮れた。
先ほどの地点に戻り撮影。
この時点で十分満足していたが、せっかく天気もいいし、もう少し先まで行ってみようと気が変わった。
昨日までの暴風はどこへやらの無風で、日が昇ると暑いくらいとなった。