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南中解体

2015-08-05 23:56:30 | 秋田のいろいろ
3年前に、秋田市立秋田南中学校と同秋田東中学校の校舎のことを記事にした。
秋田市立学校の校舎は、その建築年代によって外観の形状がほぼ同一(色は違うことがある)であり、結局のところ3パターンほどに分類できてしまう。
そんな中、それに当てはまらないケースが2つだけ存在した。それが南中と東中の校舎であった。

この校舎は、両中学校の教室棟のメインとして使われていると思われる、4階建てで比較的大型(おそらく16教室分)の建物。
外観の色は両中学校で異なるものの構造は同一のようで、他の校舎と比べると簡素というか安っぽい感じがしていた。鉄筋コンクリート造(RC造)ではなく、鉄骨造(S造)のように見える。※今回の件でやはりS造だったことが分かった。
前の記事にいただいた、この校舎を知る方々のコメントによれば、気密性が低く居住環境は良くなかったらしい。

東中は1975年度に西側の校舎として、南中は1976年度に南側の校舎として建設。
両中学校ともすぐ後で増築が行われたが、それらは他の学校と同じタイプのRC造となり、先にできた校舎が異彩を放つ結果になった。
東中の校舎は、2006年頃に大規模改修工事が実施されて色が変わったが、南中は完成当初のままの姿で40年を迎えていた。


このほど、南中のこの校舎(南棟)が解体されることになった。
既に工期に入っていて、11月いっぱいまでかかる予定。
先に設備関係の解体工事が行われるようなので、校舎そのものが壊されるのは少し先かと思うが、その前に囲われるだろうし、この校舎の姿を見られるのは残りわずか。
今週初め。右手前が南棟。ここの歩道~校地との境界付近はかつては「大堰」と呼ばれた水路で、暗渠化された今も一帯を「大堰端(おおぜきばた)」と呼ぶ人もいる
テニスコート脇の屋外トイレ(上の写真の南棟の前にある小屋)を解体し、そこに工事車両出入口を設置するようだ。既にガードレールと柵が切られてコーンが置かれ、路面を舗装している。
南中の校舎(体育館を除く)を上空から見ると「ロの字」なのが、解体後は「コの字」になる。

解体されるということは、いつの間にかこの大きな校舎が空き家になっていたのだった!
仮設校舎が建てられるわけではないようで、じゃあ教室が不足するのではないかと心配してしまう。
ところが、南棟の末期に普通教室として使われたのは4室ほどで、ほかは特別教室(教科別の教室)や業務用の部屋だったようだ。北側の校舎と体育館の下(も部屋になっている)へ集約すれば、なんとか融通できたということのようだ。それだけ、生徒数が減ってしまったことにもなる。
木も何本か伐採されるようだ
では、この校舎が解体される理由は?
構造も築年数もほぼ同一の東中の校舎は現役だし、40年で解体されるのは、若干早い気もする。
生徒数減少に伴う効率化なども理由の1つかもしれないが、大きな理由は耐震性能。

秋田市立学校では、1960年代の初期のRC造・S造校舎は、建て替え済み。以降の校舎は大規模改修や耐震補強が続々と実施されていて、すべての校舎が地震に耐えられると思っていた。
ところが、秋田市教育委員会総務課による今年7月付「秋田市立小・中学校施設耐震化計画」によれば、今年4月現在の秋田市立小中学校の耐震化率は99.3%。(全国で95.7%、秋田県で97.1%)
2014年度までは小学校1校(広面小。昨年度の大規模改造で対策済み)、現時点でも中学校1校つまり南中の耐震化がまだだった。
南中南棟の解体により(というか校舎としてはもう使っていないのだから、実質的には既に)、秋田市立学校校舎の100%耐震化が晴れて達成されることになる。

建物の耐震性能を示す「Is値」や「q値」という数値がある。
Is値は0.6以上あれば地震により倒壊・崩落する危険は低く、0.3以上0.6未満で危険性あり、0.3以下だと倒壊・崩落の危険性が高い。※学校の場合は0.7以上を目安としている。
q値は1.0以上で危険性が低く、0.5~1.0が危険性あり、0.5未満だと危険性が高い。

南中南棟のIs値は0.37、q値は0.68。「倒壊・崩落の危険あり」に当たる。
ちなみに、いずれも対策前の広面小は0.63と0.70、城東中で0.43と0.37。他にも初期に対策がされた(優先順位が高かった)学校では、Is値が0.1台のものもあった。
より危険なものを優先して対策した結果、南中南棟が「秋田市立学校でいちばん危ない校舎」として残ってしまったようだ。

同じ構造のはずの東中では補強して使い続けるのに、南中は解体されてしまうのは、地盤とか微妙な構造の差によるのか、生徒数や校地活用の将来的な見通しや時どき秋田市の財政状況によるのだろうか。


ところで、秋田南中学校のホームページには、簡単な工事の説明が掲載されている。
その最後に「今後について」として「体育館下特別教室の改築(国庫補助対象)により、7年間は取り壊せない」「7年後に新校舎建設計画」とある。
今後生徒が増えるわけでもないだろうし、現状で収まっているのを7年も現状維持した後、将来的には校舎が新しくなるのだろうか。

雄和・河辺地区を除く秋田市では、10年ほど前に勝平小、山王中、秋田北中などが改築されたのを最後に、大規模な校舎の解体も新築も行われていないはず。
一方で、改修されてはいるものの、南中南棟よりも古い1970年代築の校舎が複数(築山、土崎、旭南の各小学校など)あり、着実に歳を重ねている。そろそろ改築の話が出るかもしれない。
再掲)1970年にできた土崎小は今も現役

秋田南中学校が円形校舎があった楢山南中町から、南通宮田の現在地に移転して最初にできたのが、南棟だったようだ。多くの卒業生の思い出の場所が姿を消そうとしている。
卒業生でなくても、グラウンドに面して道路からよく見えた、南中を代表する建物がなくなり、印象が変わってしまいそう。
そして、東中の西側校舎がまさに秋田市内唯一の異端校舎として君臨し続ける。

※この後、お盆明け8月17日の週から工事が本格化。23日までの間に、仮囲い設置、トイレ解体が行われ、校舎中央部の下の階だけに解体が着手されて校舎に穴が空いた。
※翌24日とさらに翌31日の週では、中央の穴(1~2階部分辺り)はほぼ変わらず。東(線路)側の一部に足場が組まれた。
※続きはこちら
コメント (9)
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