2025年の年賀状(年賀はがき)は、かなり存在感が薄くなった。
以前から、電子メールやSNSで新年のあいさつをする人が増え、さらに高齢などを理由に年賀状を出すのをやめる「年賀状じまい」をする人も増えていたところへ、2024年10月にはがき料金が63円から85円に大幅値上げされたのが拍車をかけた。
各所の調査では、年賀状を出す/出さない人は、だいたい半々くらいになった感じか。
かつては11月頃になると、印刷屋、はんこ屋、それにイオンなどによる、個人用の年賀状印刷の見本が並んだチラシが新聞に折り込まれたものだが、いつの間にかなくなった。サービス自体をやめたわけではなく、イオンでは2025年用でも実施していた。
さらにさかのぼれば、1990年代後半のパソコンの普及により、インクジェットプリンター対応のはがきも登場。2015年の記事では、1997年に「コート紙」として発売。その翌年からインクジェット用になったとしていたが、今のWikipediaには2000年用からとある。2001年には、インクジェット用が品薄になる人気。引き換えに家庭用印刷機・プリントゴッコが衰退し、2008年販売終了。
郵便局員に年賀はがきの販売ノルマが課せられ、自爆営業させられることが問題になったこともあったが、今はどうなのか。※2015年の記事によれば、年明けに買うのに若干苦労した一方で、自爆営業も行われていた。
この20年ほどで、年賀状の存在は大きく変わった。
僕は、今年もパソコンで印刷して出した。
さらに、身内2人分の印刷も引き受けることになり(昨年までは別の者が作っていたのだが、そのパソコン故障等による)、3種類の年賀状を作ることになった。
はがき作成ソフトというものがあり、干支のイラストなどを入れたCD-ROM付き年賀状用ムック本もある。これらも以前よりは衰えたかと推測するが、2025年用も複数種発売。
僕は、はがきソフトに限らず、用途が限られたソフトをやたらと買ってインストールして使いたくないので、大昔に1度買っただけ。あとは、ネットのフリー素材やワープロソフトで作っていた。
今年の3つもワープロで作ろうと思っていたが、日本郵便が「はがきデザインキット2025」という無料アプリ(会員登録等は不要)を提供しているのを知った。通信面のデザインのみで、宛名管理・印刷はできない。
スマホではアプリ版だが、パソコンでは、インターネットブラウザの中で動くウェブ版。かつてはパソコン用インストール版もあったとのこと。
見てみると、イラスト入りの既成デザイン(テンプレート)がそれなりに豊富で、写真を取りこむこともできる。自由自在にデザインできるわけではなく、むしろ直感的に簡単にデザインすることに重点を置いているようで、あまりこだわりがなければ、充分、利用価値があると感じ、使うことにした。
ただし、機能には、かゆいところに手が届かない点もあるので、工夫(一部後述)や割り切りも必要。それに使いかたの説明(ご利用ガイド)がけっこう雑なので、パソコン操作に不慣れな人は、困ることがあるかもしれない。
以下、ウェブ版について備忘を兼ねていくつか。
基本の「デザインの編集」の手順。
まず、既成の「テンプレート」から1つ選ぶ。イラスト、賀詞、枠などが配置され、喪中欠礼・寒中見舞いも含めて402ある
選んだテンプレートに写真(絵でも可)を取り込んだり、文字を入力(メッセージ。一般的には「テキストボックス」)したり、賀詞・干支・縁起物等の「スタンプ」を入れたりすれば、もう完成。
その「スタンプ」は、拡大しても粗くなるようなことはない。テンプレート頼りにせず、スタンプとメッセージだけを組み合わせてデザインしても、(作る人の技術とセンスにもよるが)使用に耐える。長文の文字ばかりのはがきを作りたいという人だっているだろう。
そういう人のために、「何もない、無地のテンプレート」があってもいいのに、それがない。
ここでひと工夫。
ご利用ガイド「デザインを一から全て作成する」には書かれているのだが、本来は写真を取りこむテンプレートの1つである「全面写真」を使う。真っ白な画像データ(いわばダミー写真)を作って、そのテンプレートに写真の代わりに取りこむ。
ガイドには、ダミー画像のサイズまで指定しているが、こだわらなくてもいいと思う。小さいとエラーが出るが、それでも構わない。あとは、通常通りの手順。
昔ながらの印刷した年賀状は、通信面に差出人の住所・氏名があるのが定番レイアウト。
だが、はがきデザインキットではそのようなテンプレートは1つもなく、自力でメッセージとして入力・配置せねばならない。
それには理由がある。ご利用ガイドには「はがきにおける差出元の住所などは宛名面(切手がある面)への記載を推奨しています。」とあり、郵便屋さん公式のサービスだからこその、こだわり(?)のため。
だったら、宛名の印刷はできないとしても、宛名面に差出人の住所氏名だけを印刷する機能(お年玉くじ・切手と重ならず、郵便番号枠に収めて印刷できる)を提供してくれてもいいのに。
さらに、縦書きで郵便番号や番地にアラビア数字を使った時に、見栄え良く配置する「縦中横(たてちゅうよこ。過去の記事)」ができない。
どうしても縦中横にしたければ、その部分だけ、別枠で横書きのメッセージ(テキストボックス)を作って、位置とサイズを調整して、縦中横っぽく見せることになる。
そのままだと半角は横向きになる。左のようにするにはひと工夫(ひと苦労?)必要
最後は、使用できる書体、フォントについて。
パソコンにインストール済みのフォントではなく、はがきデザインキット側が用意した5書体だけを使用できる。
上から 「手書き」「デザイン」「ゴシック」「明朝」「楷書」
ウエイト(太さ)は各1種類ずつ、ゴシックはいわゆる角ゴシック体なので丸ゴシック体が使えない、行書もあれば、など不満も出るだろう。
だけど、僕はこのフォントが、はがきデザインキットを使うことに決めた大きな理由だった。
これらの書体は、モリサワ製のフォントだから。※「手書き」だけはフォント名もメーカーも特定できなかった。
購入すれば1書体につき、最低でも2万円(1万9855円?)はするフォント。それで自分の名前入りの年賀状を作れるのなら、魅力的。
「手書き」以外のフォントの正体。
「デザイン」は、「丸フォーク M」。
見たことがあるようでいて、どこで使われたか印象にないフォントではあるが、適度に柔らかなで端正な印象。
でも、モリサワのデザイン書体(=明朝、ゴシック、毛筆でない書体)があまたある中で、どうしてこれだけを選んだのか。「もっと砕けたカジュアルな書体」「もっとエレガントな書体」「もっとほのぼのした書体」等々の需要も多いのではないか。
「ゴシック」は、「見出ゴMB1」。
よく似た「見出ゴMB31」とともに、1960年代から続くオールドスタイルのゴシック体。今も広告などで見かける。
モリサワのゴシック体は好きだけど、年賀状向きと言えるのか。やはり丸ゴシック体はほしいし、「新ゴ」などニュースタイルのゴシックのほうがふさわしいと思う。
「明朝」は、「A1明朝」。
これも1960年からの伝統書体で、今もよく使われる。写植時代のぼやけた輪郭が再現されていて、独特な柔らかな明朝体。
明朝体も年賀状ではあまり使わないと思うが、これはそういう独特さにより、悪くない。一方で、喪中、寒中見舞いのような長めの文章でこれを使うのは、やや読みづらく、ややそぐわないかもしれない。
「楷書」は、「教科書ICA M」。
年賀状で楷書といえば、毛筆書体・毛筆体の楷書体のほうが一般的だが、教科書体なので硬筆寄り。教科書体の中では太めの「M」だが、毛筆体と比べると細く、これでは使えないと感じる人もいるだろう。他の教科書体と比べても、“お硬く”、とっつきにくい感じがするかもしれない。
だけど、この教科書体こそ、真の教科書体だと思う。年賀状ソフトに付属するような、お安い教科書体にはない、品と風格がある。
どうも、もともとはイワタの書体のようで、国語の教科書でおなじみの光村図書が使う「光村教科書体」ともほぼ同じ。モリサワ製は、少なくとも「で」の濁点の位置が異なる(上の縦中横の「からみでん」参照。また、モリサワでも学参書体仕様の教科書体ではまた違う。この記事参照)。
そんなわけで、小学校の先生などには、利用価値が高い。
以上、なんだか気が利かないのは、いまだに郵政省時代を引きずったお役所気質で使う側の立場になれないのか、それともあえて使いづらくして、印刷業界やはがきソフトを“民業圧迫”しない配慮だったりして。
そして、2026年版はがきデザインキットはどうなるのか、それ以前に2025年版のはがきデザインキットがいつまで使えるのか。
以前から、電子メールやSNSで新年のあいさつをする人が増え、さらに高齢などを理由に年賀状を出すのをやめる「年賀状じまい」をする人も増えていたところへ、2024年10月にはがき料金が63円から85円に大幅値上げされたのが拍車をかけた。
各所の調査では、年賀状を出す/出さない人は、だいたい半々くらいになった感じか。
かつては11月頃になると、印刷屋、はんこ屋、それにイオンなどによる、個人用の年賀状印刷の見本が並んだチラシが新聞に折り込まれたものだが、いつの間にかなくなった。サービス自体をやめたわけではなく、イオンでは2025年用でも実施していた。
さらにさかのぼれば、1990年代後半のパソコンの普及により、インクジェットプリンター対応のはがきも登場。2015年の記事では、1997年に「コート紙」として発売。その翌年からインクジェット用になったとしていたが、今のWikipediaには2000年用からとある。2001年には、インクジェット用が品薄になる人気。引き換えに家庭用印刷機・プリントゴッコが衰退し、2008年販売終了。
郵便局員に年賀はがきの販売ノルマが課せられ、自爆営業させられることが問題になったこともあったが、今はどうなのか。※2015年の記事によれば、年明けに買うのに若干苦労した一方で、自爆営業も行われていた。
この20年ほどで、年賀状の存在は大きく変わった。
僕は、今年もパソコンで印刷して出した。
さらに、身内2人分の印刷も引き受けることになり(昨年までは別の者が作っていたのだが、そのパソコン故障等による)、3種類の年賀状を作ることになった。
はがき作成ソフトというものがあり、干支のイラストなどを入れたCD-ROM付き年賀状用ムック本もある。これらも以前よりは衰えたかと推測するが、2025年用も複数種発売。
僕は、はがきソフトに限らず、用途が限られたソフトをやたらと買ってインストールして使いたくないので、大昔に1度買っただけ。あとは、ネットのフリー素材やワープロソフトで作っていた。
今年の3つもワープロで作ろうと思っていたが、日本郵便が「はがきデザインキット2025」という無料アプリ(会員登録等は不要)を提供しているのを知った。通信面のデザインのみで、宛名管理・印刷はできない。
スマホではアプリ版だが、パソコンでは、インターネットブラウザの中で動くウェブ版。かつてはパソコン用インストール版もあったとのこと。
見てみると、イラスト入りの既成デザイン(テンプレート)がそれなりに豊富で、写真を取りこむこともできる。自由自在にデザインできるわけではなく、むしろ直感的に簡単にデザインすることに重点を置いているようで、あまりこだわりがなければ、充分、利用価値があると感じ、使うことにした。
ただし、機能には、かゆいところに手が届かない点もあるので、工夫(一部後述)や割り切りも必要。それに使いかたの説明(ご利用ガイド)がけっこう雑なので、パソコン操作に不慣れな人は、困ることがあるかもしれない。
以下、ウェブ版について備忘を兼ねていくつか。
基本の「デザインの編集」の手順。
まず、既成の「テンプレート」から1つ選ぶ。イラスト、賀詞、枠などが配置され、喪中欠礼・寒中見舞いも含めて402ある
選んだテンプレートに写真(絵でも可)を取り込んだり、文字を入力(メッセージ。一般的には「テキストボックス」)したり、賀詞・干支・縁起物等の「スタンプ」を入れたりすれば、もう完成。
その「スタンプ」は、拡大しても粗くなるようなことはない。テンプレート頼りにせず、スタンプとメッセージだけを組み合わせてデザインしても、(作る人の技術とセンスにもよるが)使用に耐える。長文の文字ばかりのはがきを作りたいという人だっているだろう。
そういう人のために、「何もない、無地のテンプレート」があってもいいのに、それがない。
ここでひと工夫。
ご利用ガイド「デザインを一から全て作成する」には書かれているのだが、本来は写真を取りこむテンプレートの1つである「全面写真」を使う。真っ白な画像データ(いわばダミー写真)を作って、そのテンプレートに写真の代わりに取りこむ。
ガイドには、ダミー画像のサイズまで指定しているが、こだわらなくてもいいと思う。小さいとエラーが出るが、それでも構わない。あとは、通常通りの手順。
昔ながらの印刷した年賀状は、通信面に差出人の住所・氏名があるのが定番レイアウト。
だが、はがきデザインキットではそのようなテンプレートは1つもなく、自力でメッセージとして入力・配置せねばならない。
それには理由がある。ご利用ガイドには「はがきにおける差出元の住所などは宛名面(切手がある面)への記載を推奨しています。」とあり、郵便屋さん公式のサービスだからこその、こだわり(?)のため。
だったら、宛名の印刷はできないとしても、宛名面に差出人の住所氏名だけを印刷する機能(お年玉くじ・切手と重ならず、郵便番号枠に収めて印刷できる)を提供してくれてもいいのに。
さらに、縦書きで郵便番号や番地にアラビア数字を使った時に、見栄え良く配置する「縦中横(たてちゅうよこ。過去の記事)」ができない。
どうしても縦中横にしたければ、その部分だけ、別枠で横書きのメッセージ(テキストボックス)を作って、位置とサイズを調整して、縦中横っぽく見せることになる。
そのままだと半角は横向きになる。左のようにするにはひと工夫(ひと苦労?)必要
最後は、使用できる書体、フォントについて。
パソコンにインストール済みのフォントではなく、はがきデザインキット側が用意した5書体だけを使用できる。
上から 「手書き」「デザイン」「ゴシック」「明朝」「楷書」
ウエイト(太さ)は各1種類ずつ、ゴシックはいわゆる角ゴシック体なので丸ゴシック体が使えない、行書もあれば、など不満も出るだろう。
だけど、僕はこのフォントが、はがきデザインキットを使うことに決めた大きな理由だった。
これらの書体は、モリサワ製のフォントだから。※「手書き」だけはフォント名もメーカーも特定できなかった。
購入すれば1書体につき、最低でも2万円(1万9855円?)はするフォント。それで自分の名前入りの年賀状を作れるのなら、魅力的。
「手書き」以外のフォントの正体。
「デザイン」は、「丸フォーク M」。
見たことがあるようでいて、どこで使われたか印象にないフォントではあるが、適度に柔らかなで端正な印象。
でも、モリサワのデザイン書体(=明朝、ゴシック、毛筆でない書体)があまたある中で、どうしてこれだけを選んだのか。「もっと砕けたカジュアルな書体」「もっとエレガントな書体」「もっとほのぼのした書体」等々の需要も多いのではないか。
「ゴシック」は、「見出ゴMB1」。
よく似た「見出ゴMB31」とともに、1960年代から続くオールドスタイルのゴシック体。今も広告などで見かける。
モリサワのゴシック体は好きだけど、年賀状向きと言えるのか。やはり丸ゴシック体はほしいし、「新ゴ」などニュースタイルのゴシックのほうがふさわしいと思う。
「明朝」は、「A1明朝」。
これも1960年からの伝統書体で、今もよく使われる。写植時代のぼやけた輪郭が再現されていて、独特な柔らかな明朝体。
明朝体も年賀状ではあまり使わないと思うが、これはそういう独特さにより、悪くない。一方で、喪中、寒中見舞いのような長めの文章でこれを使うのは、やや読みづらく、ややそぐわないかもしれない。
「楷書」は、「教科書ICA M」。
年賀状で楷書といえば、毛筆書体・毛筆体の楷書体のほうが一般的だが、教科書体なので硬筆寄り。教科書体の中では太めの「M」だが、毛筆体と比べると細く、これでは使えないと感じる人もいるだろう。他の教科書体と比べても、“お硬く”、とっつきにくい感じがするかもしれない。
だけど、この教科書体こそ、真の教科書体だと思う。年賀状ソフトに付属するような、お安い教科書体にはない、品と風格がある。
どうも、もともとはイワタの書体のようで、国語の教科書でおなじみの光村図書が使う「光村教科書体」ともほぼ同じ。モリサワ製は、少なくとも「で」の濁点の位置が異なる(上の縦中横の「からみでん」参照。また、モリサワでも学参書体仕様の教科書体ではまた違う。この記事参照)。
そんなわけで、小学校の先生などには、利用価値が高い。
以上、なんだか気が利かないのは、いまだに郵政省時代を引きずったお役所気質で使う側の立場になれないのか、それともあえて使いづらくして、印刷業界やはがきソフトを“民業圧迫”しない配慮だったりして。
そして、2026年版はがきデザインキットはどうなるのか、それ以前に2025年版のはがきデザインキットがいつまで使えるのか。