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九十九鶏弁当

2022-11-02 22:21:17 | 各地お土産・食べ物
少々“劣化”してしまった山形駅弁を取り上げた。今回は、それとは別の山形の“準駅弁”と言える弁当の話。以前から話に聞いていて、食べてみたかった。

ところで、「駅弁」の定義は、場合や人によってまちまち。狭義では、「日本鉄道構内営業中央会」に加盟する業者が、駅構内(改札内や改札口周辺)で販売する商品ということになるだろう。それに従えば、山形駅では上記もりべんと、輸送される米沢の2社の商品が該当する。

今回取り上げるのは、中央会に加盟しない業者が製造し、駅ビルS-PALのテナントに委託して販売する弁当。ただし、元々は正規の山形駅弁だったものの流れをくんでいる。
そんなわけで、そういう事情は知らないけれど、存在を昔から知っている人には、「今でも山形駅弁」という位置付けなのだろうし、「駅弁なのに(改札口前などの)駅弁売り場には置いていない」という、謎の存在になっているかもしれない。

その名は「九十九鶏弁当」。
個人ホームページ「駅弁資料館(https://kfm.sakura.ne.jp/ekiben/06yamagata_yamat.htm)」などによれば、元は「紅花軒(こうかけん)」が製造販売。
後に紅花軒が駅弁から撤退するも、製造と市中店舗での販売は続けられ、2000年代前半には、駅ビル内の精肉店で売られていた。
そして、2000年代後半頃には、別の業者「九十九鶏本舗」が同名で同内容の弁当を作るようになり、駅ビルの別の店で販売。紅花軒のほうは、中身はほぼ同じで名前が違う弁当になって、引き続き精肉店で売られていた。
2017年に駅ビルから精肉店がなくなったが、市中では紅花軒版を引き続き販売する店があるらしい。今、駅ビルで売られるのは九十九鶏本舗版。
といった経緯。つまり、駅弁でなくなった後、2派に分かれ、名称は後からできたほうに受け継がれている。なんか複雑な事情がありそう。

九十九鶏本舗は、九十九鶏弁当だけ(サイズ違いや肉だけの販売はあり)で商売をしており、山形市内に店舗がある。地域に定着し、親しまれている証。購入できるのは、その店と、市街地の食品館256というスーパーと、駅ビルの3か所らしい。
ちなみに、ネット上の情報では、仙台駅の駅弁屋 祭で、2022年4月頃に販売されていたという情報もある。2022年9月末の平日にはなかった。

山形駅ビルで売るのは土産物店「清川屋 山形S-PAL店」。清川屋は鶴岡市に本社があり、自社ブランドのお菓子なども製造し、庄内地方のお店だと思っていたが、こちらにもあったのか。
駅ビルの中でそれなりの広さの店舗の、レジ前に置かれていた。
16時時点で、最後の1個だった。
透明なポリ袋に入れてくれて(レジ袋は有料)、「傾けずにお持ちください」と駅弁屋ではあまり言われない注意を受けて購入。

特製 九十九鶏弁当 1120円 1食454g 828kcal
清川屋のレシートでは「九十九鶏弁当 小」と印字。
九十九鶏本舗ホームページには3種類の弁当が掲載されていて、本品と一致するものは、真ん中の「九十九鶏弁当 鶏肉の巻き物入り」として1000円(2022年1月の改定後の価格らしい)。
なお、安い「九十九鶏弁当 一番人気」は880円、高い「九十九鶏弁当 極上」は要予約で1300円。清川屋での取り扱いは不明。

厚紙の蓋を載せ、白い荷造り紐(いわゆるすずらんテープ)で縛ってあるのが珍しく、取るのにちょっと苦労。

濡れお手ふき付き。箸袋への爪楊枝封入はなし

ここまであえて示さなかった「九十九鶏」の読み。
「九十九」が「つくも」なのは、ちょっと難しいが熟字訓としておかしくない。では「鶏」は「とり/どり」でいいのか、「にわとり」なのか。
蓋と箸袋にふりがなが付いているのだが…
左が箸袋
蓋のほうは「九十九」に「つくも」だけで、「鶏」にはふりがななし。
一方、箸袋は、「九十九鶏弁当」全体に、「つくもべんとう」とある。これでは、「鶏」は読み飛ばすのか??
上記、駅弁資料館サイトに掲載されている、紅花軒時代1970年頃の掛け紙の画像にも、筆跡は異なるが同じ割付で「つくもべんとう」とある。

そして「九十九鶏」とは何者なのか。現在の公式サイトには明確な説明はない。その他のサイトでも同様で、大々的なブランド鶏などではなさそう。
駅弁資料館に1970年代の「九十九鶏弁当の栞」の画像があり、「この鶏はミルクと栄養剤だけで育てた鶏」「全身がササ身の軟かさをもっています。」などとある。製造元が代わり、時が経った今もそうなのかは分からないが。
また、ごはんは、現在は「山形県産ササニシキ100%」であると、公式サイトにある。1970年代の栞では「村山米」使用。


たっぷりのそぼろで埋め尽くされ、その上に2つの「鶏照り焼き」。照り焼きの下にもそぼろ。
この肉の塊は、1970年代の栞では「雉焼」表記となっているほか、分裂後の紅花軒では1つだったり、ないものもあったようだ。

撮影条件により色が悪いですがおかず
左上がパイナップルの缶詰、その下がこんにゃく、中央2切れが880円のには入っていない「鶏肉の巻き物入り」=「手作りのチキンロール」。あとは漬物系で、サクランボがあるのが山形らしい。
なお、1970年代の栞によれば、当時は晩菊、菊の花漬けと、さらに山形らしい漬物が入っていたようだ。


鶏肉の弁当といえば、秋田の大館や、折尾など九州(かしわめし)のものは違うが、「そぼろ」であることは多い。ウェルネス伯養軒(野辺地→仙台?)や高崎など。
九十九鶏弁当も、同じようなそぼろだが、思ったより薄味(個人の感想です。ネット上では「濃いめ」との声もあり)。そぼろにしてはこぼれづらく、食べやすい。
照り焼きは、ボリュームがあるが、歯ごたえもある。某秋田県知事なら「硬い(※)」と言いそう。※大雨被害を訴える生産者団体に面会した際の、比内地鶏に対する発言。そんな場面で言うべきことではないだろうに。
照り焼きは、そぼろとは別の味付けだそうだが、ちょっと“浮いている”ように感じてしまった。なくてもいいかも。
チキンロールは2つ入っているように見えるが、1つずつ異なるようだ。1つは鶏肉を巻いたもの、もう1つはテリーヌみたいなもので細かいニンジンも入っていた。これも薄味。
こんにゃくは、唐辛子のピリ辛。
ごはんがササニシキかどうかは、気にならなかった。さっぱりしたササニシキの味は好きなのだけど。

おいしかったけれど、正直な感想としては、期待が大きすぎたのか、申し訳ないがものすごくおいしいとまではいかなかった。
もりべんの変更前の「みちのく弁当の旅」と比べれば、そっちを選ぶのだが、それが貧素になってしまった現状では、悩むところ。

いずれにしても、これでこの価格なら、安い。山形の弁当は牛肉ばかりじゃない。よそ者には入手が難しいのが難だが、県外の人にもっと知られていい。

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2 コメント

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山形の花膳 (FMEN)
2022-11-03 00:11:14
鶏といえば花膳ですが、脅かす存在に?

山形はあたらしいブランド畜肉作るのがうまいです。
三元豚は酒田の農家が開発しましたし、牛肉にもなにかあったような。
秋田はどうにもこんなとこが弱い気がします。
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ライバル (taic02)
2022-11-03 17:34:29
鶏肉の使い方は異なるものの、販売地域が重なっていれば、ライバルになっていたでしょう。
花善は食堂部門、秋田市、弘前市、フランスにまで販路を拡げている一方、九十九鶏は山形市だけで売っているのが対照的です。

山形は米もあるし、果物もあるし。
秋田県は、それだけ米依存=稲作のウエイトが高いのだと思います。稲作から畑作への転換ならまだしも、新たに畜産を始めるとなるとハードルは高いことでしょう。
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