麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

相撲とレスリングと『尺には尺を』

2006年05月29日 | 鑑賞
女子レスリングが、ワールドカップ3連覇!
   大相撲夏場所、優勝は白鳳。

 ヨーロッパを代表する格闘技で日本が頂点にある一方、我が国の国技では横綱・朝青龍、大関に琴欧州、白鳳、小結・旭天鳳…さらには、露鳳、黒海に把瑠都と外国勢の勢いが止まらない!

 さて先日(5/24)、青年劇場の『尺には尺を』(作/シェイクスピア、訳/小田島雄志、演出/高瀬久雄)を観た。
 シェイクスピアの『夏の夜の夢』で旗揚げした劇団である。ほかに『十二夜』『ロミオとジュリエット』あわせて1000ステージを超す上演とパンフレットにある。高い評価を得てきた歴史を持つ、ということだ。
 青少年に向けた『翼をください』や『愛が聞こえますか』など幅広いレパートリーを誇る青年劇場の『尺~』は、それら伝統を踏まえながら《新しい芝居創り》に果敢に挑み、かつ成功した公演であった! 外部演出の手腕と、それに応えた俳優陣及びスタッフ陣(青年劇場は照明音響大道具等々の座内スタッフも抱える劇団の一つである)の力によるものだが、これこそが、W杯での日本の闘い方に通じると、僕は思う!

 とどのつまり、伝統だとか何だとかにあぐらをかいていては“大相撲”になってしまうということだ。青年劇場は『ケプラー~あこがれの星海航路』に続いて高瀬氏を演出に起用。さらにスタッフに、今波に乗っている伊藤雅子(美術)、今や日本を代表する衣裳家、音響家の前田文子と藤田赤目といった面々を集結させ、ヒロインには入団4年目の大月ひろ美を大抜擢・・・と、非常に前掛かりのサッ、もとい“前向きの芝居創り”が功を奏した!!!

 是非ジーコにも見習ってほしい。いや、前掛かりのサッカーしろってんじゃなく、あることに固執せずに・・・具体的に言えば、アジアでは柳沢や三都主や宮本で通じたが、世界では世界の闘い方があるのだ!ということに気付いて欲しい。あれ???

 それにしても、伊藤雅子の舞台美術は絶好調で、昨日、青年座劇場※で観た『衣裳/薔薇』の2本立ても、見事に二つの世界観を抽出する素晴らしいものだった。
 ウィーンの街や監獄や、セント・ルーク村の農家など奥行ある美術を活かした鷲崎淳一郎の照明もGOOD。そして、またもや藤田赤目の音響だ! とにかくスゴすぎ・・・。衣裳も面白かった。

 今更すじを書くのも何だが・・・侯爵から全権を託された官吏アンジェロが、謹厳な故に陥る「人の心の闇」をシェイクスピアらしい裁きで進めていくのだが、重要なのが、死刑宣告を受けるクローディオの妹・イザベラの存在。
 
 そのアンジェロに現代的なスーツを着せるアイディアや、舞台ほぼ中央の風見鶏が実にこの「芝居」を象徴していながら、どちらももーちょい生かせたのではないか…、でありながら、最後は逆にあざといエンディングだったのが、欲を言えば惜しかった……。  
 東演も伝統を大切にしながらも、アグレッシヴに行きたいと思わされる素敵な舞台でした。
(※青年座のアトリエ=青年座劇場を会場に、
         青年座が制作に当たった作品です)

【文中敬称略】


コメント (2)
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