(以下敬称略)
劇団ジャブジャブサーキット『歪みたがる隊列』(作演出/はせひろいち)は、10/5~の名古屋・七ツ寺協同スタジオを皮切りに、北九州芸術劇場小劇場(10/21~)、大阪・精華小劇場(11/2~)と隔週のツアーで、ついに東京へ(11/16~。こまばアゴラ劇場)。
多重人格障害をテーマにした作品ながら、公演リーフレットの言を借りていえば「人格が瞬時に変化する、いわば『役者冥利に尽きる』ような表現」を除外して組み上げた挑戦的な構成! そんな非常に高いレベルの劇作を、はせらしい飄々とした語り口で、もちろん十八番の謎解きも盛り込んで展開した素敵な舞台でした。
余り触れられない“人格統合”をも優しい目線で描いて、クライマックスの、当事者の茜(咲田とばこ)と、代行人格ひろひろ(岩木淳子)の統合の場面は、弊団『大地の~』の溝口と安田のシーンをちょいと彷彿させるような温かいシーンで泣けました。これは演出的側面が強いか…。
その点では、多重人格の当事者・代行者(計5人)がそれぞれの人格として場に居ながら、ちゃ~んと一人に見える演出も、舞台成果を高める大きな要因となっていました。
前述、咲田、岩木に加え、前回どんどん蛇になる役(?)で圧巻だった小関道代が、キーパーソン茜の姉でさらなる成長を披露、コンブリ団からの客演ながら今やレギュラーで、座の核とも言えるはしぐちしんの重鎮ぶり(?)、はせが外部演出した『百円野菜』に続いての仕事となったNaoの新鮮な魅力など・・・他も触れられるだろうから、僕はあえて、分裂症患者・笠木を演じた岡浩之の演技に触れておきたい。今回はいつもより、かなりオイシイ役ではあったが、それもこれまで積みあげた努力の賜だ。前線と守備をつなぐボランチ的な位置で堅実に仕事をしたことに拍手!! もっと体を絞れば、なんつっても座内一の二枚目だしな…。
とにかく。連日の大入りも納得の一編
はせひろいちと同世代で、京都四天王と言われた松田正隆の初期の作品『坂の上の家』を演出したのは河田園子。劇団昴が三百人劇場の三階稽古場で続けてきた勉強会(無料)の、掉尾を飾るにふさわしい作品でした。
長崎の、文字通り坂の上の家で粛々と生活する、生きることへの賛歌に溢れた『坂~』は、次のステージで新たな歴史を刻む昴の姿と重なったからだ。
具体的には、成長著しい上領幸子、登場のパジャマで寝ぼけた格好がやたら良かった(?)渡辺慎平といった若手を、座の中心的俳優の北川勝博、田村真紀がしっかり支える座組は、さすが昴と膝を打った!(いまどき、OHと思って膝を打つ人は、銭湯からあがって、タオルでパンパン自分の体を叩く人くらい少ないだろうが…)
話の流れからすれば、長兄を演じた西村武純が本来もっと引っ張っていっても良いのだが、それが逆に上手く回って“リアルな家族”に見えたのは、彼の地なのか、演出なのか・・・。
9月に銅鑼が、やはりアトリエで無料で上演した『明日は風のない日』を改めたのが本作で、それが第1回OMS戯曲賞大賞に輝いたと聞いた。なるほど『坂~』の方が整理されている。が、ホンとしては、荒削りながら『明日~』の方が僕好みではあった。
本日、テアトルエコーに行く予定なので、叶えば今月は13作品(14観劇)となる。・・・見過ぎだな。。。