古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

ライフタイマー   鶴岡 卓哉

2018-05-31 11:18:09 | ポエム
人々は公園の池の周りを走る


クルマのクラクションが眩しい太陽を丸め込む


日差しの陰でピストルの射撃音


足がもつれてコケて膝を擦り剥いてしまう


もうこれ以上走れない


もう止める気なのか


時間切れギリギリのライフタイマーがカチカチと鳴り


使い古したラジオからソフィスティケイテッド、レディ


バイクの横をすり抜けたなにかが


金の欠片をばら撒いてゆく


ジュークボックスは走り回り


岸にたどり着き、走り続け


オレの足は空を切り、地面に叩きつけられるんだ
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八月の路上に捨てる     伊藤たかみ

2018-05-29 09:46:36 | 伊藤たかみ
文藝春秋刊    2006年。


表題作は第135回芥川賞を受賞。


修羅場小説っていったらいいのか。自販機に缶ジュースを入れて


ゆく配送中に、想起される仕掛けになっているので、なお一層や


ねこさが際立つ。


フツーの人たちはこんな(特に離婚経験者は)体験を(似たような)


をされていると思うと、さぞやタイヘンであろうなあ、と思うのだが、


おれっちは、あいにく修羅場というものをあまり体験していないせいで、


他人ごとのように、楽しく(?)読めたが……。


貝から見る風景、はスゴく短い小説で、別れを怖れている男の、スー


パーのお客様の声に寄せられる、ふう太郎スナックの有無を無性に気


にする話しである。ふう太郎スナックが存在しない、ということが、この小


説では重要であり、肝になっていると思う。イタズラなのか、さもすれば、


この短編自体もイタズラで書かれたやもしれず、文学自体もなんらかの


イタズラ心、というか、そういったやむにやまれぬ衝動みたいなもので


あるともいえるわけである。
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カソウスキの行方     津村記久子

2018-05-26 10:56:07 | 津村記久子
講談社   2006年~2007年。


「カソウスキの行方」のタイトルは「仮想好き」なのだろうか。


それにしては、話しの展開がちょっとわかりにくい。やはり、


メインテーマは、好きと仮定してみる、というところ一点と


いうことか。評価は、B-といったところか。


「Everyday I write a Book」は話しとして


、読みやすいし、心情もわかりやすく描いてある。



仕事とというもののやねこさも描かれているし、Aの作品だろう。


「花婿のハムラビ法典」は結婚をテーマに描かれているが、リアリ


ティと言う点でB+といったところか。



やはり、際だったキャラは、「Everyday ~」の野枝さんだろう。


僕は、「リアル」を感じた。
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いざとなりゃ本ぐらい読むわよ  高橋源一郎

2018-05-24 13:52:29 | 高橋源一郎
朝日新聞社 1993 10.15~1996 8.30


の「週刊朝日」に連載。


高橋氏の書評の一番いいところは、その書評を読むと


、その本を読みたくなってうずうずしてきちゃうとこ


ろだと思う。


それに、文章はうまいし、心に直截ひびいてくる。


まるで、ダチに、それでおもしろい本読んでさあ、と


語りかけられているような気分になってくる。


それも実に、気の利いた男に話しかけられるのだから、


こっちも気分が良くなってくるというものだ。


表紙はこのシリーズではお馴染みの松苗あけみ先生


である。


まったく、古びていないのにも、驚かされる。
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かけら   青山七恵

2018-05-23 10:25:03 | 青山七恵
新潮文庫    2009年


「かけら」が川端賞を受賞している。「かけら」では家族全員で


出かけるはずだったさくらんぼ狩りに父娘二人で行くことになった


顛末が描かれている。


桐子はカメラ教室に通い始めていて、その課題に「かけら」をテー


マに撮って来い、というのがあるところから、このタイトルである。



人間にフツーの人なんていないってことは当然のこととしても、こ



のお父さん「遠藤忠雄」も確たる一個の人間として描かれている。


しかし、通勤すれば、通勤する人に紛れて分からなくなる、という


風体である。たぶん、この人は、というか、文学というものすべてに


言えると思うんだけれど、人生を描きたいんだ、と。



そこには元カノを想う男がいたり、西表島から大学を見に来た従妹を



もてなす、若夫婦が現実と向かい合い、戦う姿が描かれる。


虚構でありながら、リアルを追求する姿勢こそ、想像力を喚起され、


果ては自分を豊かにしてくれる何かであるはずなのだ。

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窓の灯    青山七恵

2018-05-22 09:47:14 | 青山七恵
河出書房   2005年


この作品は解説にもあるように、整合性に欠けるという


指摘がある。でも、小説って、そういうもんだけじゃな


いおもしろさも時に必要になってくる。


ワクからはみ出たおもしろさっていうものが、この作品


にはある。


それは若さが時にもたらす、けた違いのエネルギーからくる


ものなのかもしれない。


22歳でこれだけの文章を書けるなんて、早熟な人なのだろう。



ときに詩的に、ときに骨太な文章で、実に読ませてくれる。
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傷口にウォッカ    大道珠貴

2018-05-21 00:46:41 | 大道珠貴
講談社文庫  2005年1月


40歳の永遠子の恋愛遍歴を描く。クリトリスにバターを、的な


ことかと思うが。


性への描写が赤裸々に描かれるが、妙なイヤラしさもない、というか



辟易してしまうようなところがなかったのが救いだ。


カラッとしている。


たぶん、本人は異様にどろどろとした気分なのだろうなあ、と察するが


文学としてみたときに、それが、穢れではなくなっているのだ。


この人の特質だろうなあ、と思う。


しょっぱいドライブでも、どろどろを描きながらも、カラッとしたと


ころが読ませてくれた。


その書き方が踏襲されていて、さらに、パワーアップしている、という


感じである。


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やりたいことは二度寝だけ    津村記久子

2018-05-19 09:44:59 | 津村記久子
講談社文庫……2012年


こんなゆるぅぅぅぅい本を講談社というところから


出していいんだろうか? という脱力系エッセイ。


帯には、地味でも、アホでも生きていけます、とある。


エッセイに、ネットのことを書くのはアリなのか、と


いうことは一度議論した方が良いと思うのだが。


なんとなしに、つまんねえな、とか言いながら、読み


終えてしまうという不思議な魅力を持ったエッセイだ。
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すみれ      青山七恵

2018-05-18 10:01:30 | 青山七恵
文春文庫  2012年。


少女でもなく、思春期でもなく、微妙なお年ごろの時に


レミちゃんというパパとママと同い年のちょっとフツー


ではない女の人と暮らしたことが描かれている。


高校受験の時っていったら、一番人生でナーバスな時期に、



こんなおとなになり切れない、ヘンなおとながそばにいたら、



やねこいだろうなあ(あ、これ広島弁で、メンドクサイみ


たいな意味ね)と思う。



そして、結局、パパとママからも見放されてしまう。その前に



憂子自身が見放してしまっていた。



ボクらはいつになったら、人を救うようになれるのだろうか。



誰しもが、自分のことで精いっぱいで、人を救っている余裕



なんてない時代……いや、時代のせいにするのはやめよう。



ボクらは少しでもマシになるために頑張っているのに、その



ために碌でもなくなっているという事実……とほほ。
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恋愛    鶴岡 卓哉

2018-05-09 13:51:02 | ポエム
振り向きざまに君は笑ってみせた


僕の体を洗いたいのかい?


シャワーの飛沫が僕の心を軽くさせる


サクセスってどこに転がっているんだろう?


これが三十四回目?


僕は君に降参する……いつも君はムチャを要求する


単純なことなのに、僕は難しく考える


タバコの味が分からなくなるくらい


僕の部屋は煙っている、そして君は


シャワールームに二度と入ってこない
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