古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

手品師  吉行淳之介

2024-09-29 02:12:19 | 小説の紹介

中公文庫 「奇妙な味の小説」所収。

 

この短編は山田詠美氏・編の「せつない話」の巻頭

 

に載っている話として一読している。

 

ストーリーなどは重複するので、避けるが、想った

 

ことなどは似たような感じだった。

 

思い込んだら百年目の童貞の19歳の暴走気味の

 

ところとか、おもしろい、と思った。

 

これは吉行氏が編んだ、「奇妙な味の小説」という

 

文庫本なので、ご自身でも気に入っていたし、評価

 

も高かったのではないか、と想像できる。

 

自分で満足出来る作品を書けるってすごくステキな

 

ことだな、と思う。

 

僕は未完成でもいつでも、自分の作品に満足を感じる。

 

かといって、上昇志向がないわけじゃなく、常により

 

よい作品にしていこう、と思っている。

 

(読了日 2024年9・6(金)0:55)

              (鶴岡 卓哉)

 

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火星年代記    レイ・ブラッドべリ

2024-09-28 03:05:59 | 小説の紹介

小笠原豊樹・訳 ハヤカワ文庫 1976年

 

火星に移住して生活する世界を描く一大スぺクタクル。

 

連作短編となっていて、印象的に深く刺さる短編が

 

連なっている。ひとつ強烈なのは、ひとり火星に

 

取り残されたと思っているウォルターという男

 

が電話が鳴るのを聞いて、きっと女だ、と思い込み

 

電話しまくって、美容院に電話すると、女の人が出る。

 

そこに飛んで行ったが、いなくて、元いた町に来た

 

んだ、と悟ったウォルターは戻って、探すと、そこに

 

いたのは、怪物のように太った女だった、という、

 

ボーイ・ミーツ・ガールなんだろうけど、こんなの

 

ありか、っていう展開に口が塞がらなかった。

 

もしかしたら、地球も、火星から逃げて来て、住み着いた

 

火星人が最初かもしれない、と妄想してしまった。

 

(読了日 2024年9・4(水)1:05)

              (鶴岡 卓哉) 

 

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二重壁   開高健

2024-09-27 03:41:42 | 開高健

中公文庫

 

開高氏らしい文体で攻めて来る。二重壁とは

 

のぞき鏡なるもので、そこでは、人は何をし

 

ているのかをのぞかれているらしい。とても

 

詩的なので、一読すると、よく分からないし

 

文体に慣れていないと読み辛いかもしれない。

 

戦争で、慰安婦と関係を持ち、病気をもらった

 

男が、子供を作ることを拒み続け、会社で上役

 

の人の娘と結婚したものの、うだつの上がらない

 

潔癖症。全くの創作だと思うが、ぼくは開高氏の

 

こういった作品は未読だったので、おもしろく

 

読ませていただいた。とても良かった。

 

(読了日 2024年9・2(月)22:37)

               (鶴岡 卓哉)

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暗い海暗い声 生島治郎

2024-09-26 05:01:31 | 小説の紹介

中公文庫

 

この4pばかりの短編。船の上で幽霊のような

 

男が、実は幽霊ではなく、話しかけた男が幽霊。

 

片腕なく、海に身をやつした男であったという。

 

何となく、都会的で、世慣れた感じがする。

 

それでも、自殺してしまった、というんだから、

 

なんとも遣る瀬無くなってしまう。

 

(2024年 9・2(月)21:45)

           (鶴岡 卓哉)

 

 

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勝負師  近藤啓太郎

2024-09-25 06:11:32 | 小説の紹介

中公文庫 「奇妙な味の小説」所収。

 

碁の勝負の世界を描いた短編。坂田というのが

 

いったい誰なのか、碁に詳しい人からしたら、

 

そんなことも知らないのか、と言われそうだ。

 

坂田の勝負へのこだわりは近藤氏に見に来てもらう、

 

という一点にあるようであり、そこに坂田氏はす

 

ごくこだわっていた。

 

ぼくは碁も知らないし、興味もそれほどないが、

 

阿川弘之氏も登場し、その打ち姿がおもしろいもの

 

だねえ、と言ってたのを読んで、そういう見方も

 

出来るのか、と思った。

 

銀座へ飲みに行ったり、お金持ちの世界だな、と感じ

 

入った。ぼくには縁のない世界のような気がすごく

 

した。

 

(読了日 2024年9・1(日)23:18)

               (鶴岡 卓哉)  

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スパニエル幻想  阿川弘之

2024-09-24 04:06:07 | 本の紹介

中公文庫 「奇妙な味の小説」所収。 吉行淳之介・編

 

1988年に印刷されているこの本の活字が

 

とてもいいが、割れてしまった。一日、一遍

 

読もうと思っているが、完読できなかったのが

 

一遍あった。この阿川氏の作品は幻想とある通り

 

犬がホテルの一室にやって来て、追放しないでくれ、

 

と喋るのだ。スパニエルという犬の種類で、徹夜

 

明けの朝に吠えたりするので、女優さんと喫茶店で

 

偶然会った時に、あげてしまうことにするのだ。

 

犬の喋るのはあり得ないが、なにせ小説だ、なんでも

 

あり得る。けど、幻覚かと思ったら、そうとばかり

 

は言えないらしいところに、阿川氏のリアリズムの

 

煌めきがあるのではないか、と思った。

 

(読了日 2024年9・1(日)22:30)

               (鶴岡 卓哉)

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思いがけない旅  河野多恵子

2024-09-23 05:50:57 | 小説の紹介

「奇妙な味の小説」所収。

 

河野氏の作品を初めて拝読したが、プロットは

 

いささか難しく、後半は良かったが、前半は良く

 

分からなかった。文章もあまり分かり易い、す

 

っきりとした文章とは違うようだ。読後感は確かに

 

奇妙な感じがした。実に奇妙だ、と呟きたくなる

 

ような感じだった。

 

(読了日 2024年8・27(火)23:30)

                (鶴岡 卓哉)

 

 

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召集令状  小松左京

2024-09-20 02:44:13 | 小説の紹介

「奇妙な味の小説」所収。

 

左京氏と言えば、「日本沈没」のSF小説で、

 

ディストピア小説だと思われる。

 

1960年代の日本で、20代の若者に突如、

 

赤紙が来て、召集される日に、突如、この世から

 

消えてしまう。という事件が頻発する世界を描

 

いている。

 

それはパラレルワールドで、起こっていることが、

 

影響していると思っていたが、どうやら、念力で

 

この世界を捻じ曲げている男がいて、その男というのが

 

精神病院に入っている主人公の父親らしい、という

 

ことになる。チチキトクと召集一時間前に迫り、精神病院

 

にタクシーで急ぐ主人公。そして、説得を試みるも、

 

死んでしまったらしい、「天皇陛下万歳」と叫んだ父親

 

を前にして、背後でガチャリと佩剣(はいけん)の音が

 

するのを聞くのだった。

 

この本は1988年のものであり、やはり活字が活きていて

 

良かった。初版本でした。

 

(読了日 2024年8・26(月)23:20)

               (鶴岡 卓哉)

 

 

 

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鶴岡たか ヒロシマねこ 原画展

2024-09-19 04:16:50 | ギャラリー

2024年9・20(金)~10・20(日)まで

 

鶴岡たかによる絵本・ヒロシマねこの原画展を古民家

 

ギャラリーうした&古本カフェで行います。

 

この絵本はいろいろな雑草で描かれており、そのテク

 

ニックには目を見張るものがある。この絵を描くのに、

 

50年の歳月がかかったと、本人も言っており、その

 

歳月の重みと言葉のないところが、ひしひしと心に

 

響いて来る。

 

2018年に死んだ、僕が飼っていた、とび丸が主人

 

公で、ヒロシマのいろいろな場所に行き、自分という

 

ものを刻み付け、刻印し、確認して、主人の元へ挨拶に

 

行き、魂が帰って来て、生まれ変わる、という物語だ。

 

広島の人なら、ああ、ここか、と分かるかもしれない。

 

勿論、分かる場所もあるだろうが、分からないだろうな

 

あ、という場所もある。

 

場所というものは、人にとって、どういうものなのか、

 

ということも、訴えかける。鶴岡たかにとって、広島と

 

はどういうところなのか、ということが、伝わって来る

 

だろう。

 

平和への問いでもあり、平和ってどういうことなのだろう、

 

と改めて考えてみるのもいいかもしれない。

 

原画は絵本とは違って、やはり、すごくいい。リアルに

 

雑草で描かれたということが分かるし、筆の息づき方も

 

違う。やはり、一度、原画で見てみる、というのも

 

体験として、貴重なものなのかもしれない。

 

美味しい飲み物をご用意して、お待ちしております。

 

どうぞ、ご観覧にいらして下さい。

 

 

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うまい話  結城昌治

2024-09-19 04:01:00 | 本の紹介

「奇妙な味の小説」所収。

 

金持ちの老婆を殺して、金をせしめようという

 

話に、これで悪事も最後にしようという代吉と

 

兵馬という男は乗った。渋木という男の案だが、

 

そんなに殺してしまうのだし、うまい話でもな

 

いと思うのだが、えてして、犯罪者というのは、

 

馬鹿が多いらしい。大体、馬鹿じゃなきゃ、犯罪

 

なんてしない。それに、殺した金で政治家になる

 

だのと本気で考えるほどの馬鹿だ。

 

きっと、今どき、この奇妙な味の小説を読もうという

 

人もいないだろう。だから、言ってしまうと、渋木

 

が人間のレバーを食ったことがあるか? と問う。

 

実に人間のレバーはうまそうだ。そうだ、この代吉

 

と兵馬も、この老婆と渋木はグルで、レバーになって

 

喰われちまうらしいのだ、怖ぇー、怖いわあ。

 

(読了日 2024年 8・26(月)22:20)

                 (鶴岡 卓哉)

 

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