古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

鳥葬の山    夢枕獏

2019-03-30 10:04:14 | 小説の紹介
1993年


奇怪な夢枕ワールド八編があなたをおそう。


「鳥葬の山」で描かれる鳥葬だが、今は、人間の体内に溜まる


毒素を嫌う鳥は食べないという話しを人から聞いた。


しょっぱなの「柔らかい家」は衝撃的だ。奇怪なホントに恐ろ


しい家が夢幻的よそおいででてくる。これはちょっと、イヤ、


マジで怖い。というか、痛い。


独創性から言っても、ピカイチではないだろうか。


まさに恐ろしい才能があったものである。


中島らもさんの解説も今ではレアである。

                  
                    (鶴岡 卓哉)
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ファイナル・ガール     藤野可織

2019-03-29 10:07:41 | 藤野可織
角川文庫   2014年



ホラー作家というふれこみだが、おれっちはこの7つの短編を


読んで怖かったか、と問われれば、別に怖くなかったと答える


だろう。


それは、この7つの短編が文学として、きちんと立っているから


だと思う。どこか不可解で、不穏な空気感の中で、おれっちはた


のしんでいた。


それが、解説で村田沙耶香さんも「大好き」と名言をしたものな


のである。


おれっちは長らくこの物語を待っていたのだ。


特に好きだったのは「狼」と題された作品だ。5歳のときに「狼」が


ドアの向こうに来て、両親が倒して以来、「狼」と対峙することを


待ち望み、とうとうそのときになって、ひ弱なカノジョに「狼」を


ぶちのめすお株をとられてしまう、というような話しだと思うのだが


、この「ズレ」こそが、ニュー・ホラーの技巧、テクニックである


とみた。


新しいホラー作家の真骨頂ですね。

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お父さん大好き    山崎ナオコ-ラ

2019-03-28 10:07:43 | 小説の紹介
文春文庫   2008年


「手」は芥川賞の候補にはなったらしいが、本タイトルは


逃したようだ。ちょっとこの作品ではムリかもしれない。



むしろ、表題作「お父さん大好き」の方が出来はいいようだ。


中年の上司と若いOLがランチを食べにいくところで、若い


OLはパクチーもトムヤムクンもしらない体で描いている。


ナオコーラさんはなにも知りたくなかったんじゃないか。その


反動で、何もかも知っている(と、思われている。その実、なにも


知りはしない)おじさんに焦点を定めたのではないか。


情報というものは大切だが、それはどこまで必要なのか? レゾン


・デートルという言葉を使い、その存在理由を問う。


我々は本当に必要なことを知っているのだろうか。


ナオコーラさんにとって、おじさん、とは情報そのものなのでは


ないのだろうか。


資本主義の名前を背負ったナオコーラさんの宿命として、それらは


必然的テーマになり得るのではないだろうか。
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晴れた日は巨大仏を見に   宮田珠己

2019-03-27 13:59:00 | 小説の紹介
幻冬舎文庫     2004年


日本に40メートル以上の巨大仏がかつて16体あった


という。それらを見に行った紀行エッセイ。


「ぬっ」と現れでるそのマヌ景を坂口安吾からのアプロ


ーチで解明していく。


昭和から平成になったころに、巨大仏が続々とつくられ、


あるものはレジャーとして金儲けのためにつくられ、宗教


のためにつくられたものももちろんあったり、商売人がつ


くったりとそれぞれ、経緯は違うらしいし、そのひとつひ


とつに個性があり、ひとくちに巨大仏といっても、おのおの、


造詣も違ってくる。


あぁ、巨大仏を見に~ってタイトルを見たときに、あっ、



これだ、と思ったんですよねえ。


牛久の巨大仏に興味があって、見に行きたいなあ、とずっと


思ってるのです。


でも、見に行くことってなかなか難しいなあ、半ばあきらめ


ていた。


いや、いつか必ず、牛久を見に行ってやるぞッ、おれっち………


合掌。
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クロム・ハート    桜井亜美

2019-03-26 11:54:56 | 小説の紹介
幻冬舎文庫   平成15年


こんな陰湿で暗い小説イヤだなあ、と初めは思ったが、


読み進めるうちに、こういうタイプの小説を必要とし


ている人もいるのではないか、と思えるようになった。


傷つけたり、傷つけられたり、それは若いウチにある、


やっておかなきゃいけないことのようなような気がする。


人間として、大切なことは全部小説やエッセイで教えて


っもらったおれっちみたいなヤツもいるってこと。


そして、結局、人間嫌いになるんだよな、人間ってホント


怖いもん。


とことん人間嫌いになって、見えてくるのは、結局、なんと


かやってかなきゃいけないっていう現実なんだよ、どうしよ


うもないけどさ、心の臓が止っちまうまで踊るしかないんだ


よな、ホントにさ。
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考えない人    宮沢章夫

2019-03-24 11:48:03 | 本の紹介
新潮文庫   1996~2010年


「考えない人」について「考える」。ひとつひとつがネタになって


いて、おれっちは笑ってしまった。


笑ってはいるが、「考えてはいない」。反射的に笑っているだけだ。


なんとなくおかしいと感じるから笑っている。いや、ホントに「考え


ていない」のだろうか?


おれっちが「考えるに」、「考えない人」については「考えない」のが


一番いいのではないだろうか。


「考えない」ことを「考えて」しまった時点で負けだ。なにに負けて


いるのかと言えば、制度とか社会だ。


そうなのだ、「考えている」社会こそ悪の根源なのだ。「なにも考え


ていない」制度、これこそが我々の目指すところだ…………そうなのか?


………………合掌。
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人間腸詰     夢野久作

2019-03-23 10:54:51 | 小説の紹介
角川ホラー文庫


人間腸詰(そうせえじ)、焦点を合わせる、一足お先に、


キチガイ地獄他全10編所収。


一人称の滑らかな語り口につい引き込まれる。まったくこ


んなスゴい才能がいたなんて、時代を超越している。


江戸川乱歩さんも激賞したという押絵の奇蹟、丹念に手紙を


書き込んでいて、女性目線で描かれている。


おれっちが一番好きだったのは、切った足の夢をみて、殺人


の濡れ衣を着せられそうになる「一足お先に」だ。


幻想とリアリティがうまく融合した、危うい作品だ。まったく


こんな作品を昭和6年に書くなんて、かなりいかれている。


もちろん、良い意味でだけど。
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東京自転車日記     泉麻人

2019-03-20 09:41:57 | 泉麻人
新潮文庫    平成9年


こういう本が100円本であるところがいいんだよねえ。


ボクが小四のころ、駄菓子屋が二軒あって、マルタとカドヤ


といったが、ドンキーコングJrとかが20円でできた。


そのころはまだプレステとかなくて(ファミコンすらなかった)


立ってプレイするような筐体で、復刻されているけれど、ああ


いうのがあって、駄菓子を買い食いしていた。


マルタは小六のときなくなって、カドヤもそのうちなくなって


しまった。思えば、たのしいいい時代だった。今の子はそういう


ところあるんだろうか。


まあ、それは、三十五年くらい前の昭和の時代の春日部での話しね。


牛田には田中っていう、米穀店が駄菓子を売っていて、近所の小学


生のたまり場になっている。牛田にはゴロゴロ(言葉は悪いけど)


子供がいるからね。


MBKにカゴをくっつけて、井の頭線かいわいをうろちょろ徘徊する、


なんかワクワクするエッセイでした。


                         (鶴岡)
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魔女のスープ   阿川佐和子

2019-03-19 10:39:23 | 本の紹介
新潮文庫


第三弾の娘の味がたのしくて、活字メシがうまかったので、古本屋


で魔女のスープ第二弾を見つけて、即、買い込んだ。


ボクもスープは好きで、(ちなみに、吉田修一先生もスープ好きだっ


て言ってたな)、ガーリックスープと自称しているものを、夜中に、


コトコトと煮て、作ってみて、ひとりたのしんでいる。けど、この


スープの行く末はカレーなんだよねえ。


この前も、ガーリックスープ作って、カレーにしたら、複雑に絡み合


った濃厚な味わいに、舌も腹踊りしていたが、なんともたのしかった。


鍋の底はかなり焦げ付いていたけどね。


あぁ、ホットドッグ食べたいなあ、と思ったり、刺し身、いいねえ、と


心も忙しく、空きっ腹にはこたえるなあ。
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博士の愛した数式    小川洋子

2019-03-18 22:32:58 | 小説の紹介
新潮文庫      平成15年


小川洋子さんの世界というと一種ファンタジー的な摩訶不思議な


商売やらがでてくるのですが、今回は、理数系と文学のマリアー


ジュです。


80分しか記憶が持たない、というが、よくよく考えればそんなの


成立するはずがない。狩りに、記憶が数十年前にリセットされると


してもだ。紙をクリップで貼り付けているというが、そんなのなんの


役に立つというのだ。となるが、これはあくまでファンタジーな理系


なのだ。まあ、あんまり、理を詰めると破綻してしまうだろう。


そういうのが気になって、チェスの話しとか、おれっちは途中下車し


てしまったのだが、(チェス台の下に入って、チェスをさすって話し



だった)今回はブジ終点に辿り着き、感動すら覚えました。


さすが芥川賞作家がベストセラーを書くとこうなるのかあ、と手を叩いて


ガッテンいたした次第でありやす。


                        
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