古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

ファイナル・ガール     藤野可織

2019-03-29 10:07:41 | 藤野可織
角川文庫   2014年



ホラー作家というふれこみだが、おれっちはこの7つの短編を


読んで怖かったか、と問われれば、別に怖くなかったと答える


だろう。


それは、この7つの短編が文学として、きちんと立っているから


だと思う。どこか不可解で、不穏な空気感の中で、おれっちはた


のしんでいた。


それが、解説で村田沙耶香さんも「大好き」と名言をしたものな


のである。


おれっちは長らくこの物語を待っていたのだ。


特に好きだったのは「狼」と題された作品だ。5歳のときに「狼」が


ドアの向こうに来て、両親が倒して以来、「狼」と対峙することを


待ち望み、とうとうそのときになって、ひ弱なカノジョに「狼」を


ぶちのめすお株をとられてしまう、というような話しだと思うのだが


、この「ズレ」こそが、ニュー・ホラーの技巧、テクニックである


とみた。


新しいホラー作家の真骨頂ですね。

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爪と目     藤野可織

2018-06-24 09:52:22 | 藤野可織
文庫版だが、まずいいと思ったのが、字が大きいということだ。


文庫だと特に字が小さくていらだつということがよくあるのだ。


藤野女史の作品は初めて拝読したが、本領はホラーだという。


三歳児が果たしてマニキュアを剥がしたのをママハハの目に入れるか


、と聞かれれば、そんなことは絶対にあり得ない、と大抵の人は答


えるだろう。しかし、そのあり得ない感が逆に怖さを生む、というこ


ともある。


「しょう子さんがわすれていること」も怖い。「五人目」って誰? となる


あたり、ラストへのベッドから落ちて、跳ね回るとこなんか、ゾクッとくる。


夏の夜にぴったりだ。


そして、極めつけが、「ちびっこ広場」だ。不穏な空気が漂いつつ、しっかり


としたハハと子供というホラー定番の配置。


とんでもないことが起こりそうな予感に満ち満ちて終わるラスト……新しいタイプの


芥川賞作家の誕生を今更ながら体感した。
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