古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

松茸めし    椎名麟三

2022-10-31 06:57:21 | 小説の紹介

「もの食う話」所収    

 

今一度、よく読んでみると、この「前菜」とされる松茸めし

 

はなかなかいけるぞ。

 

ただ、「前菜」に松茸めしとはちょっとヘビーなのでは。

 

作品としては小品、うす味の品のいい突き出しだろう。

 

姫路市外の農村で松茸をたくさんとった少年時代、父の

 

米相場で儲けたので、その金で山の入札をして、大威張り

 

で帰ってきたが、そんなことで威張る人はさすがにいない。

 

なん十人も入札しているのだ。松茸で遊んでいる父と出くわし

 

「阿保、帰れ!」といわれて、退散。父も大阪へ逃げるよう

 

にして帰っていった。少年の日々を綴っているという感じか。

 

東京のたこ焼きは「まったくなっちゃいない」と糾弾し、故郷

 

の明石焼きの味こそホンモノの味だ、といったらしい。

 

ぼくも広島の三越で明石焼き食べたら、美味しかったなあ。

 

      (読了日 2022年10・16 20:15)        

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グリモの午餐会     澁澤龍彦

2022-10-30 12:31:27 | 本の紹介

文藝春秋編「もの食う話」所収     「饗宴」昭和56年6月

 

澁澤氏といえば、日本の、いや、世界のエロティシズムの

 

大家である。グリモはちゃんとした名をバルタザール・

 

グリモ・ド・ラ・レニエールといい、1758年、パリに生

 

まれた。美食学’(ガストロノミー)を考える上で、外せない

 

人物らしい。本当にヘンテコなパーティーを開いたりして、

 

贅沢を尽くしたという。おもしろいと思ったのは、「食通

 

年鑑」という今でいうミシュランガイドみたいなみたいな

 

ものをつくって、家に贅沢な食材を集めて、食べまくって、

 

結局、独りになってしまって、それがバレて、パリをおン

 

出されたらしい。晩年は城で豚を相手に食事をしたらしい。

 

グリモは生まれたときから、両手の指が癒着していて、指の間に

 

あひるの水かきのような捲くがあり、爪は獣の爪のように鋭かった

 

というから、生まれ出たときから、フツーの人とは違っていたと

 

見える。人間ではなかったのかもしれない。これが歪んだ人間に

 

していったということらしい。

 

午餐会に行きたいか? いえいえ、ぼくは遠慮しておきますよ、

 

ぬか漬けに、お茶漬けでけっこうでございます、チーン。

 

        (読了日 2022年10・16 19:55)        

 

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食い地獄      赤瀬川原平

2022-10-29 12:03:05 | 本の紹介

「もの食う話」所収。   「夢泥棒」昭和50年5月号

 

食べるということは恥である、ということが描かれている。

 

古代から人はものを食べてきた。弱いものを食べてきた。

 

弱いものが殺され、一日に三度、食べられてきた。これを、

 

赤瀬川氏は神の失敗だという。

 

ここまで、食べるという行為が汚く描かれると、ほんとに

 

食べることが恥ずかしくなってきて、女性がものを食べている

 

姿を見ると、うへっ、となってしまう。

 

食べるということは、出すということと、直截つながることだ。

 

恋人同士で食事に行くっていうのも、考えてみれば、それだけで、

 

相当エロティックであるな。

 

ぼくに一緒に食べるような、女はいるかって? いないな、ハハは

 

女じゃないしな、ぴえーん。

 

          (読了日 2022年10・16 1:10)

                    

 

 

 

 

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出口     吉行淳之介

2022-10-28 10:23:44 | 小説の紹介

「もの食う話」所収      「群像」昭和37年10月号

 

非常にエロティックである。うなぎ屋というモチーフも、

 

見張りの男はいるが、出入り自由なのだが、とらえられて

 

いるところといい、とても不思議な浮遊感というか、謎め

 

いた感じと、うなぎが折り重なって、ぬらぬらとしている

 

感じが、とてもエロくて、ユーモラスでさえある。

 

うなぎ屋の兄妹の夫婦という、門を閉め切って釘をうってし

 

まっていて、出前しか取らない、というところ。

 

とにかく、不思議に満ちている。

 

それらが、ひとつの作品に収められ、パッケージされてい

 

ることに、ひとつの吉行淳之介というひとの手腕を見ること

 

ができる。

 

父上はモダニズム作家の吉行エイスケ、妹に小説家の吉行

 

理恵、俳優の吉行和子。

 

結核の療養中に、芥川賞受賞を知った、とある。

 

遠藤周作、安岡章太郎らと共に「第三の新人」と呼ばれたと

 

いう。

 

      (読了日 2022年 10・16 0:40)

                     (鶴岡 卓哉)     

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家靈        岡本かの子

2022-10-27 06:13:29 | 小説の紹介

「もの食う話」所収

 

これもどこかで読了済みのような気がする。いや、気がする

 

だけかもしれない。

 

かの子さんといえば、太郎のお母さんとして有名だ。与謝野晶子

 

に師事していたとは知らなかった。一平の献身によって、文学的

 

才能が開花したらしい。

 

この話だが、どぜう店の娘が会計になって、母親の代からツケで

 

食べている彫金師に、どぜうをねだられる、というものだ。

 

広島には、どうやら、知る限り、このどぜう屋はないようだ。や

 

はり、関東のものなのだろう。

 

この徳永という老人、落語家張りに自分の仕事を説明するのだが、

 

職人がそんなに話が上手って、その職人の腕はあまり信用できませんな、

 

って思うわしは、職人ってのは、寡黙なイメージが頭にあるせいなんだ

 

ろうな。

 

            (読了日 2022年10・15 22:12)

 

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大喰いでなければ      色川武大

2022-10-26 10:49:33 | 色川武大

「もの食う話」所収。   昭和59年

 

このタイトルには二通りの意味があると思うのだが、大喰い

 

でなきゃもっと生きられんのに、というのが大きな意味だろう。

 

それにしても、この本、先を楽しみに見ていないが、いまの

 

ところ読んだことのある短編ばかり。あまり発見がない。

 

もう少し目新しいものが読みたい気分だ。

 

この短編が収められている「喰いたい放題」も読了済みであった。

 

うーん、おいらに読ます短編はねえ?

 

        (読了日 2022年10・13 10:50)

                      (鶴岡 卓哉)

    

 

 

 

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枇杷       武田百合子

2022-10-25 02:19:25 | 本の紹介

「もの食う話」所収。 昭和53年

 

口述筆記を泰淳さんのためにしたのが修行になったらしく、死後、

 

随筆家としてデビューした。百合子さんと言えば、この「枇杷」

 

というほど有名な作品だ。料理でいえば、カニクリームコロッケかな。

 

歯のなくなってしまった泰淳さんのために枇杷を薄く切って口に入れ

 

てあげる。その切なさ、やるせなさ、でも、そんな姿になった泰淳さ

 

んをいつくしんでもいる。けど、オチの「あの人の指も手も食べてし

 

まったのかな」にはよく読んでみると? しかない。

 

          (読了日 2022年10・12 16:10)

                        (鶴岡 卓哉)

  

 

 

 

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もの食う女      武田泰淳

2022-10-24 05:52:37 | 小説の紹介

「もの食う話」所収   昭和23年

 

前に一度読んだことがあって、再読という形だったが、これがやはりいい。

 

主菜だけあって、肉厚のステーキという感じだった、なんか、肉だな。

 

房子という、百合子さんなんだろう女性が描かれるんだが、「オッパイ

 

に接吻したい」という泰淳さんの希望に素直に胸をはだけて、吸わせる。

 

それは高級なとんかつを食わせてくれたお礼なのだろう。しかし、確かに

 

百合子さんは泰淳氏を愛していたのだ。接吻も、オッパイも度々、揉ませるが

 

いやいやじゃない。「女って、こんなことされて怒るかしら」というセリフ。

 

うーん、なかなかおおらかで、いい女だなあ、でも、そんな女のオッパイ

 

を揉んだり、キッスしたりする泰淳さん、なんか昔の男の逞しさを感じるなあ。

 

ぼくは、胸をはだけて見せられたら、走って逃げるかな。

 

           (読了日 2022年10・12(水) 15:20)

                             (鶴岡 卓哉)

 

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松茸めし    椎名麟三

2022-10-23 11:27:20 | 小説の紹介

「もの食う話」所収。

 

この掌編をもってして、「前菜」はおわりになる。

 

しかして、百鬼園と夢野久作と本作以外の三名の作家は

 

短いが収穫らしきものはなにもなかった。

 

この作品にしても、あっさりしすぎて、いかに「前菜」といえど、

 

食べ応えがなさ過ぎやしないか。

 

最後の、長谷川伸氏の「鼻くそ」という掌編の選び方もちょっと

 

まずくはないか。食べ物の話をしようというのに「前菜」に「鼻

 

くそ」はないんじゃないか。食欲が削がれるじゃあないか。

 

この本には、いささか問題があるようだな。

 

           (読了日 2022年10・23 10:40)

                          (鶴岡 卓哉)

 

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一ぷく三杯     夢野久作

2022-10-22 10:49:16 | 本の紹介

「もの食う話」所収

 

ほんの5Pの物語だが、そこには久作らしさが詰まっている。

 

お安さんというひとり者で、村一番のけちん坊が死んだ、という

 

話。窯の前で痩せ枯れた小さな体が、虚空を掴んで悶絶していた。

 

というんであるが、果たして、というんで、話はすすんでゆく。

 

オチはまあ、けちん坊がヒントですかなあ。

 

夢野氏は福岡市生まれ。「ドグラ・マグラ」が有名な作家さん

 

ですね。出家して、托鉢僧となり、関西を放浪していたらしい。

 

托鉢僧だが、牛肉が好きで、すき焼きが好物だったらしい。拳が

 

入るほどの口でパクリパクリ、とある。

 

       (読了日 2022年10・11 10:50)

                      (鶴岡 卓哉)

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