古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

日日雑記      武田百合子

2016-02-25 12:52:35 | 小説の紹介
中公文庫。



88年6月~91年4月までの三年間を描く。正月三が日の




風邪をひくところから始まる。飼っている玉ちゃんと



云う猫がいるのだが、この作品ではキーとなっている。



19歳とちょっと生きたらしいが、玉ちゃんが死んだ



ところではつらつらと涙が出てきた。そのまなざしは



細かく厳しく、あるいは、ゆったり穏やかだ。この日


日雑記を書かれた二年後に亡くなっている。読み終わ


ると親しい友人のような気がしてしまう記である。



女性らしく、男には書けないなあ、と思ってしまう。
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小説の周辺      藤沢周平

2016-02-23 10:05:34 | 小説の紹介
文春文庫。



Ⅰ・Ⅱでは故郷鶴岡での幼少時代の思い出を描いている。野を走る



ワンパク坊主らしかったが、青年の時には結核で療養所に入ってい


たらしい。そこで俳句と出会い、「一茶」などが生まれるキッカケ



となったようである。キーとなる本に平輪光三氏の「長塚節・生活



と作品」というのがあるが、その本を三十年付かず離れず読んでこ



られたという。このようなある本がかかれたキッカケなどを読むの



は楽しい作業である。たとえ、その作品を読んでいないとしても、




おもしろいと感じられて僕は好きである。
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もっと遠く!上・下        開高健

2016-02-21 16:14:34 | 小説の紹介
写真……水村孝。北米篇。



秋元啓一氏は54年の夏にがんで亡くなったことが



明かされる。ヴァンクーバー、ヌシャガク河で釣


り。ヴァンクーバーからシアトルへ。とにかく、


今回の企画では、北米から南米に抜けていき、


縦断をしようというのである。こういうのを、店番



をしながら読むわけである。僕は実際は行けるわけ


はないのでせめて心だけでも、旅をしようと言う腹




積もりである。開高さんは、文章もうまいし、擬似




トリップには打ってつけである。僕は、釣れなくて




舌打ちし、ときに、30ポンドのマスキーを釣り上げるので


ある。文學が最高だなと思う瞬間でもある。
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窓を開けると      池部良

2016-02-20 09:56:38 | 小説の紹介
文春文庫



原稿用紙五枚くらいにみな収まっていて、90歳でこんなに



まとめられるなんてスゴイな、と思いつつ、中身は呆けて


いるような、いないような、すっとぼけた、やおいに似た



オチらしい、オチもなく……嫌いではないですけど。




みな老人ばかりが主人公で、呆けただ、体が悪いだ、と、



……でも、そんな老人話を明るく、笑い飛ばしてしまう




エネルギーがこの池部さんにはありました。
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芋虫      江戸川乱歩

2016-02-19 10:19:43 | 小説の紹介
昭和4年、「新青年」1月号



初出時のタイトルは、「悪夢」。戦争で両手両足を失い




更に口もきけない体になった須永中尉と、時子夫人の




愛を描いたショッキングな一作。発表当時、発禁の憂目



にもあったが、「友戦的な事件を取り入れたのは、偶然、



この恋情を語るうえで好都合だった」からとイデオロギー的



なものはなかったことをうかがわせる。ヘンタイ性欲を



見事に描き切った力作と言えるだろう。
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ただいま浪人    遠藤周作

2016-02-18 08:35:21 | 小説の紹介
講談社文庫



一つの家族の行方を追っているが、なにせ偶然が多すぎる。



偶然に人が出会い過ぎるのが気になるのだ。信也と言う青



年の挫折を描き、姉の真理子の恋愛をも描いてる。



とは言え、長大な小説であるため、読み通させること自体、



この小説が持っている力を感じさせる。



最後のストーリーの仕掛けにも、驚いたので……ご紹介し



ました。
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食の達人たち  フードストーリー  野地秩嘉(つねよし)

2016-02-16 11:09:01 | 小説の紹介
全部で18店のご主人やその店を支えている人たちの





話しを聞く。そこには人生がある。時に敗れ、挫折し




小説では描き切れない、「リアル」がある。息をし



美味しいものがあるということこそ、人生なのだ。




その美味なるものを作るには苦労があり……それを



乗り越えてこそ、真の味に到達できるのだろう。



そんなことを考えさせられた……。





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マンボウ人間博物館     北杜夫

2016-02-15 16:15:01 | 小説の紹介
文藝春秋 昭和56年1月号~11月号まで。


テオフラストスの、「人さまざま」から着想を得た作品。


様々な箴言、格言など、雑学に詳しい。風呂についてだ



ったり、鬼について、阿呆について、ヤクザについて、




ウソ発見器などについて、詳しく書いてある。北さんは




ご自分のことを阿呆とおっしゃっているが、なになに、



知識も豊富で、阿呆と言ってるのはフリに過ぎないので



ある。まあ、躁鬱であったことは確かであるようだけれど



・・・…。











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旅をする木      星野道夫

2016-02-13 10:14:56 | 小説の紹介
1995年8月    ……文春文庫



「南東アラスカの海を旅し、ザトウクジラの親仔を見て、子を失くした



友人O のことを想った」り、「ルース氷河に来ている。そこにどこから



か迷い込んだか狼の足跡が……誰にも話したことがない」たりする。




雪深い中をクマの発信機を付け替えに行く。小さな巣穴で春を待ってい



るクマに睡眠銃を撃って眠らせて、つけかえるときに、毛皮を撫でて、


元に戻す。



そんな事柄が、清潔な簡潔な文章でもって、鮮烈に描かれてゆく。



星野さんは96年にクマに襲われて亡くなっている。惜しい人を亡く



して、二十年になる……。
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孤高の鬼たち   素顔の作家

2016-02-12 13:54:19 | 小説の紹介
文藝春秋編。


⑴三鷹・下連雀・太宰治    瀬戸内寂聴



自信が太宰にゆかりのある下連雀に住み、太宰の住んでいた


というボロ屋に住んでいたという女との交流を描き……太



宰が愛した五人の女性について書いている。太田治子とも



宿に止まり、話し、治子は太宰ちゃま、と呼んで、神様だと



思っているという。全体的に沈んだトーンで暗い影を落とし


ている感じがなんとも太宰のやるせない人生を表している




ようだった。




たくさんの先生方が原稿をお寄せになっている中で、初めて


読んだ瀬戸内寂聴さんの文章のが、一番簡潔で、おもしろかっ



たように思う。 
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