古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

平成ジャングル探検   鹿島茂

2024-05-30 07:19:56 | 本の紹介
講談社文庫   2003年

4年後のあとがきにすでにこれは歴史書に

なってしまった、と書かれているのだから

20年以上経った今は、ニュー新橋ビルの

ルポでおっしゃる通り時間旅行者となって

しまった感がある。

一番おもしろかったのは、安吾の「安吾巷談」

を模して書かれたという文章。やはり文豪安

吾の文章は光っている。

上野には「ホモ」がよく似合う。上野公園

でパンパンと共に「ホモ」が自分を売っている

様は上野を知るものならよくわかるはずだ。

この本書では都市がいかに発展し、衰退してい

ったかを、ニュー新橋、六本木、渋谷、大久保

銀座、浅草、大塚、赤坂、錦糸町、新宿歌舞伎町

そして、上野とルポしていき、だいたい男の

エロの観点から街を活写してゆく。鹿島さんが

大学教授でいらしたらしく、先日、Eテレでその

姿を拝見したが、すごくマジメそうなので、本書

でエロを扱っていらしたので、うーん、と唸って

しまった。でも、すごく他とは違う観点から東京

を見られて、とてもおもしろうございました。


















































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遊覧旅行   長野まゆみ

2024-05-27 03:41:54 | 長野まゆみ
河出文庫   1994年

半分くらいはJR西日本の情報誌の為に

書かれたものらしい。もう半分は「HA

NAKO」の為。1994年だと、まだ

長野氏は少年とファンタジーといったモ

チーフを扱っていた頃で、幻想的かつ神話的

イメージに溢れていて、ぼくが好きな世界を

表現されている。言葉選びにも神経をつかっ

たあとがあり、すごく勉強になったものの、

逆においら才能ないかも、と自信を失ってしまう

くらい素晴らしかった。全ては原稿用紙5枚く

らいで、直ぐに読めてしまい、初めは慎重に読

んでいたが、後半はなんとなく文体の間を泳い

でいる内に終わってしまった。

小話的なものなので、どうってことないの

だけれど、旅に関する話でとても良かった。


















































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ブランケット・ブルームの星型乗車券   吉田篤弘

2024-05-26 07:20:23 | 小説の紹介
幻冬舎文庫  2017


ブランケット・ブルームと言う名前の記者が

ブランケット・シティと言う架空の街で書く

記事というか、コラムがこの本である。

ひとつ飛ばしに環状列車の駅を取材するという

体なので、それを線で繋ぐと、星型になるという

わけだ。なんかおもしろい、なんかいい感じ。

コラムの中で魂について述べられていた。魂は

「ある」であり、「存在」はしない。面白みも

「ある」が「存在」はしない。このなんか

面白い感じをどう表現したらいいのか。

ちょっとフツーじゃない感じっていったらいい

のか。

まともとはちょっと違った尺度でものを見る。

ってことがこの篤弘氏には出来るんだろうな。







































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日記+鎌倉文士骨董奇譚 青山二郎

2024-05-21 15:57:01 | 本の紹介
一週間ほど、お暇を頂きまして、それと

いうのも風邪を引きまして、四日ほど経

って熱も引きまして、今はちょっと咳が

残ってますかね。

読書もできず、ちょっと活字に餓えてしま

っていますね。

なんか、けど、風邪ひいて、元気になった

感じしますね。骨を折ったら、丈夫になるみたい

なね。

今日は鎌倉文士骨董奇譚です。

講談社文芸文庫    1987年

装丁家、文筆家など様々な肩書を持ちながら

ちゃんとした職業を生涯持たなかった青山学

院と呼ばれる文筆家などの集団のリーダー。

8歳にして、日本古式泳法水府流を習得、

ぷかぷかと体全体を水面に浮かべることが

出来、タバコ一本分を肺に溜めることが出来

たという。

肌はいつもつやつやで荒れた酒を呑む生活を

していても、肌荒れということを知らない

特異体質だったらしい。

装丁を二千冊ほどしていたらしく、そのどれ

も今のアニメチックな装丁とは雲泥の差の

いいもので、味わいがある。人生をよく観察

していて、事細かにチェックしている。

魯山人は人を見る目がない、と言っているが、

これは他の人も同じようなことを言っているら

しい。審美眼に優れ、陶器に関しては一流の

目利きだったようだ。いや、ぼくも時代が時代

だったら青山学院に入りたいですよ。

(読了日 2024・3・12 9:12)
























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渡された場面     松本清張

2024-05-14 13:29:42 | 小説の紹介
新潮文庫   昭和56年

久しぶりの推理小説だった。といっても、本作は

最初の方に殺人事件が起こるコロンボ方式なので、

推理と言うより、真実が暴かれていく様を楽しむ

と言った方がいいだろう。地方の九州での同人誌

に中居の恋人の信子からもらった作家小寺の原稿

をつかって書いたことから暴かれる真実。もうひ

とりバアの女も妊娠し、信子も妊娠し、邪魔にな

った信子を殺してしまう。複雑に絡み合った話で

読み応えは750グラムのTボーンステーキくら

いある。ほぼ一気読みの境地で、その清張氏の

ただの推理小説ではない、文学の地位を上げたい

といえる位の衝撃だった。いや、迫真に迫ってい

て、すごい圧を感じたいい作品だった。
























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神さまは雲のなか  宇野千代

2024-05-12 03:51:30 | 本の紹介
ハルキ文庫   1997年

ぼくは50を過ぎたが、宇野さんも50を

過ぎて初めて作家として、作品について考

えたらしい。

宇野さんはカネの為に書いていて、カネの

為なら、他に稼ぐ方法があると思って。着物

やら、雑誌やらに手を出して、失敗したらしい。

数々の男遍歴があり、今でいう、ビッチだった

んじゃないかと思うが、直ぐ男を乗り換える

らしいんだね。そのせいで、男好きだの、尻軽

だの言われるハメになるわけだ。

この本だが、谷崎潤一郎、小林秀雄などの文筆

家の男の部、三宅やす子と三宅艶子や中里恒子

の女の部に分け、それぞれに対して、交流の

あったことを書き綴っている。

実際にあって、話したりしているので、やはり

実感が籠っていて、面白い。やはり長生きとい

うことで生命力に溢れた人だったのだろう。


































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プア・ボーイ   野坂昭如

2024-05-10 12:45:35 | 小説の紹介
どうやらこれも野坂氏自身の体験による

私小説ということらしい。

ラ・クンバルシータの続篇で、少年院に

入った辰郎のその人生。盗みに手を染めて

母のものを次々に盗み、売って、そのうち、

捕まり、少年院に放り込まれ、見受けに

おじさんのところに転がり込むも、嫁に

惚れこみ、男にレイプされて痔になった

ところを見せたりするうちに、本当のお

母さんだと思うようになり、皆子という

ママハハにラヴレターめいたものを旅先から

書くも、それもおじさんに読まれ、なんやか

やで、ママハハの胸に顔を埋めると、そこに

ずっと鬼のような子宮のない、母と同じ女心

のないババアが立ち竦んでいた。ラスト、プ

ア・ボーイという歌の歌詞が載っている。人生

振り返ったら……。

ダウンタウンにおれは痔だから、あれはだめだよ、

と言っていたが、転がり込んだ男に毎晩、襲われて

痔になったのか、と合点がいった。

壮絶な人生である。





































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ラ・クンバルシータ   野坂昭如

2024-05-09 06:32:26 | 小説の紹介
ラ・クンバルシータとはキューバの

タンゴの名曲。この名曲を吹奏楽を

やっている学生が練習していると、

腹を減らした高志は胃のものを口へ

戻し、反芻できる牛のような男であった。

この気持ち悪さ、吐き気がして、もう少し

で読むのをやめようと思ったが、ウジ虫で

競馬をやる、という描写でどーでも好きに

せえや、という気分になり、バカバカしく

なってきた。腹が減る恐怖は何処までも追

ってくる。名調子はやや影をひそめ、一層

暗く、ゲテモノ感が増してきました。






















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死児を育てる   野坂昭如

2024-05-07 12:15:45 | 小説の紹介
戦後になって、久子は24歳になり、結婚、子供

を産む。TV関係の旦那との間の子だ、2歳と数か

月になったとき、久子は伸ちゃんの首を絞めて殺す。

それがなぜ、行われたのか? 戦前の世界で子供の

頃妹の「文子」、「あや子」と読むと、教えられるが、

その子、夜泣きが酷い。腹を減らしているらしいが、

自分も腹が減っている。文子の食べ物をくすねて

食べたり、泣き止むまで殴って気絶させたりする。

もう読んでいるこっちまで辛くなってくる描写が続く、

軽妙な独自の文体も影をひそめ、けっこう、腰の

落ち着いた文章で語られる。その「文子」に対する

傷。なんかすごく分かるような気がしたな、久子の

気持ちが。でも、悪いのは戦争だよ、と慰めてあげ

たくなった。











可tられる












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砂の海 楼蘭‐タクラマカン砂漠探検記   椎名誠

2024-05-06 02:20:36 | 本の紹介
新潮社   1996年

失われた中国の奥地にあったという幻の王国、

楼蘭を目指す旅。 久しぶりにシーナ氏の探検もの

それも怪しい探検隊ではなく、ほんものの、中国

との国際協力によってできた探検のとりこぼしが

あったことに感動しつつ、この頃のシーナ氏は

冴えまくってるよなあ、と読みすすめるごとに

確信いたしました。 そこは砂漠、砂の国、赤茶

けた大地は水平線ではなく、地平線に太陽が落ち

て行く。 うーん、かっこええなあ。 

装丁にはラクダに乗った砂漠を漂うシーナ氏の

姿。

本にも写真がたくさん載っている。 

その一枚一枚を宝物を見るように拝見。

うーん、幸せな時間だったなあ。

でっかい星空かあ、ぼくは小っさい人間に

しかなれへんかもなあ。

この小さな街、ヒロシマで充分満足しちゃってる

からなあ。






















 











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