古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

象の消滅   村上春樹

2023-09-30 07:12:23 | 小説の紹介
文春文庫    1985年

ありえないことが起こる。現実には象は消滅したり

しないだろう。ちょっとそういうスキみたいなもの

は、この短編にはあった、と思うんだけれど、ウソ

だろぉ、という。考えてしまうスキ、いや、短編自体

には、文章に欠陥はないと思うのだけれど、そう思う

のは自由だろ、けど、読後になんか、いや、待てよ、

そういうことが起こる世界もありえるかもしれない、と

匂わせるあたりが、この短編がうまくいっているって

ことだ、と思う。パン屋再襲撃ほど、鼻につく、技巧的な

文章もないし、ちょっと真面目に取り組みすぎている感

もある、にはあるが、A-くらいの作品だと思う。

  (読了日 2023年8・17 21:05)
                (鶴岡 卓哉)        
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酒と博奕と喝采の日々   矢野誠一+読書考

2023-09-29 06:58:05 | 本の紹介
読書する時、昔は音楽を聴いて読んでいた。

それは、90年代だが、マイケル・ジャクソン

やプリンスを聴きながら、村上春樹氏を読んだ

りしていた。よく、物事の本質ってもんをわかって

いない頃で、今では、なにも聴かずに読んでいる。

静寂の中で、読む悦楽、読書の世界に耽溺できるこ

とを知ってしまえば、音楽など必要がないことが

分かるだろう。

まあ、耳が弱くなったっていうのもあるかもしれ

ない。活字を読む悦楽を知ってしまえば、時間と

いうものの概念が変わってくる。宇宙空間のどこかに

読んだということはメモリーされていて、それは。

経典のように、数珠繋ぎになっているのだろう。

これは、いささか、理解し辛いかも知れない。

空論でありさえするだろう。しかし、それが、読書

というものの本質だ。いや、話しがいささか空転し

てきた。

今日は1995年に発表された、矢野誠一氏の酒と

博奕と喝采の日々、ですよ。

文藝春秋  1995年

よく知られたトニー谷や水原弘にはじまり、マイナーな

桂文我、伊藤一葉まで、よく取材し、ユーモアを交えて

紹介されている。破滅型といわれるトニー谷の生き方に

芸人の意地を見るような気がする。16人にわたって

紹介されているのだから、目移りも激しい。越路吹雪は

稀代のエンターテイナーだったという。ぼくとはまったく

縁のない世界で、どう表現したらいいかすら分からない。

ここは、これらの人々を表す文章を読んでいただくしか

あるまい。とても、よくできた文章で、おもしろく読める

に違いないから。

                   (鶴岡 卓哉)
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暗い旅   倉橋由美子+風邪

2023-09-27 07:10:21 | 小説の紹介
ひと晩で治ってしまったが、昨夜は熱がちょっとあがった。

朝になると、治っていた。コロナも流行っていると聞く。

気を付けないと。でも、今回は、ほとんど辛くもなく、

五年ぶりくらいに熱が上がったのだが。これで、済め

ばいいが。みなさんも、気を付けてください。ま、余計

なお世話ですな。すいまそん。

今回は、暗い旅という倉橋由美子さんの作品ですよ。

倉橋さんはすでに亡くなっていますね。

河出文庫   1961年

黒い波頭が岩に打ち付け、海岸で女がひとり、冷たい風に

晒されているイメージ。

「あなた」とは、文学少女を指すらしい。帯に、文学少女

のバイブル、とある。恋愛小説の金字塔というものを是非

読んでみたかった。決して楽しい読書にならないだろうこと

は分かっていた。きっと、辛くて、厳しい、読書になるだろ

うな、と予感していた通り、それはなかなか辛気臭い読み物

だった。暗い旅って、いいタイトルだなあ、と思った。

このタイトル付けるの勇気がいるだろう。暗いが悪いと誰が

決めたのだ。暗いのは決して悪くないし、悪でもない。暗いの

上等、カレシ失踪、上等、というわけで、きっと、恋愛という

ものは、ぼくにはムリなのだろうなあ、と確信致した次第

です。

                  (鶴岡 卓哉)
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さよならバードランド  ビル・クロウ 村上春樹・訳+地球滅亡考

2023-09-25 01:08:49 | 本の紹介
アフリカのモザンビークなどで水害が拡がっているらしい。

20万人の村が、なくなったりしているらしい。どうやら、

地球は絶命の悲鳴をあげているらしい。こういう弱い地域

から地球滅亡は始まるのだろう。それが、どんどん拡がって

いってさ。アフリカは、動物も多いし、自然はそれは素晴ら

しいだろう。でも、水害で、そこから蚊が発生して、感染症

が起こり、状況はひどいらしい。TVでリポーターはあまりの

凄惨さに泣くしかなかったという。

2018年から始まっていて、10年でどうかしないと、滅亡

は決定的になるというから、あと6年しかない。その、滅亡と

いう強烈なワードの前では文学も為す術はない。文学はなんて

無力なんだ、と思う。音楽もそうだが、そういう芸術は、平和

じゃないと成立しない。でも、でも、だ。我々は、最後まで芸

術を諦めちゃあいけないんだ、と思う。芸術を諦めた瞬間に、

本当の意味で地球滅亡が始まり、地獄の使いの餓鬼かなんかは

哄笑をあげ、喝采するだろう。いや、そうなちゃあいけないん

だ。地球は滅亡しちゃあいけない。人間は、なんとか生き延び

るだろう。あと、6年なんて、子供たちにどう言い訳すればい

いんだ。

今日のレビューは、ジャズですよ。音楽をいつまでも、楽しめる

といいなあ。

新潮文庫   1992年

ビル・クロウという人は様々なトロンボーンやなんかをやった

末、ベーシストとして知られることになったミュージシャンだ。

副題に、あるジャズ・ミュージシャンの回想、とある。1950

年代の話しが一番、イキイキとしていて、楽しそうであった。

この本を読んで、更にぼくはジャズが大好きになってしまった。

ジャズというものの、親和性に魅せられてしまった。こういう、

50年代のものを読むと自然、ビートニクのジャック・ケルアック

が、思い起こされるが、やはり、なんかしら影響下にはあるんだろ

うね。躍動する人々に、ジャズの唸りが時代を創り出すという感動を

もって表されている。500P近くて、読むのに2週間以上かかって

しまったが、最上のときを過ごせた。

                     (鶴岡卓哉)



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ラオスにいったい何があるというんですか?  村上春樹

2023-09-24 09:59:29 | 本の紹介
最近、思うのは、部活精神って大事だな、ってことだね。大人に

なっても、お金お金ではなくて、趣味みたいに楽しむことって忘れ

がちになるからさ。部活って、あんなに一生懸命やっても一銭にも

なんないんだよ。ま、そこらへんが、やはり、考えどころなんだろ

うな。

推敲も第二作に入っていて、ラップが題材のヤツが、終わったね。

次も、やんなきゃ。けど、楽しくて仕方なくて。やんなっちゃう。

創作って、苦しくなきゃだめらしいからさ。でも、そうじゃ

ない読んで楽しいのは、書いて楽しんだものなんじゃないかな、と

いう気がしないでもない、今日この頃なのだった。

さ、村上春樹さんのレビューいってみっか。

文春文庫 2018年

様々なときの旅行気分や、世界観が時代も20年に渡って描かれている。

ボストン1 1995年、このころの春樹氏はとても良かった、A+だ。

でも、2013年ころになると、どうもだめになってくる。あの「サムシ

ング」がなくなってしまってきている。で、とうとうぼくもこの本をほっぽ

りだして、寝かせておいた。一か月ほどして、白い道と赤いワイン2015

年あたりから読みすすめ、くまモンの来熊(らいゆう、と読むらしい)の

訪問記を読んだが、辛さしかなかった。なにがこう、ってはっきり言えるも

のではないのだけど、春樹氏はやはり歳と共に失ってしまったということだ。

風について、誰にもまして描くことができるようになっただろう、でも、

でも、だ、それだけではない、なにか切実な例えようのないエナジーに近い

サムシングを失ってしまったようだ。

          (読了日 2023年7・14(金)23:43)          



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一九八四年(新訳版)   ジョージ・オーウェル

2023-09-21 05:43:29 | 小説の紹介
今度、文学賞に出そうと思っている作品も、ひと月以上

あるが、終わり、もう少し寝かせて、もう一度読んでみ

て出そうか検討してみようかな、と思っています。

その作品もSFチックな風合いなんですけどね。純文学

の賞にSFってどうなんですかね。でも、テーマは自由

ということらしいですよ。

相も変わらず、金欠で、困っていますが、フィリップ・

K・ディックも相当なボンビーだったそうですね。

今日のレビューはジョージ・オーウェル氏ですよ。

SFの金字塔ですね。

高橋和久・訳

旧訳版を持っていたが、読んだのか、よく覚えていないが

売れてしまった。ビッグ・ブラザーという支配者にテレス

クリーンによって監視されている世界。ウィンストンと

ジュリアは、ビッグ・ブラザーに反抗し、恋仲になるが捕

らえられ、101号室に送られることになる。ここら辺の

洗脳の描写は読んでいても辛かった。近年、まれにみる

読書の辛さを感じてしまった。それでも、なんとか読み通せた

のは、やはり、そういう監視というか管理社会が行きすぎると

どうなるのかに興味があったからだろう。

旧訳、きっと、読み通せなかったんだろうなあ。

                    (鶴岡 卓哉)

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窓ぎわのトットちゃん     黒柳徹子 

2023-09-20 05:25:36 | 本の紹介
講談社    1981年

日本に住んでいる人で、徹子さんを知らない人は

いないんじゃないか。その徹子さんが1981年

に書き残している自身の小学校を退学になったと

ころから始まる話。ぼくはその30年前にこの本が

出版されて、とてもブームになった頃に一度読んで

いるので、再読だ。

ぼくは子供はあまり好きではない。特に最近の子は

好きになれない。昔の子と絶対的に違ってきてしま

っている。顔つきも違うし、性格も違ってきてしまっ

ている。

この本にはいわさきちひろさんのとてもステキな絵が

挿入されている。ちひろさんの絵が一番良かったかな。

この本のハイライトは、犬のロッキーと狼ごっこをして

いたら、耳を噛み千切られてしまって、ロッキーを叱ら

ないで、とトットちゃんが血塗れになっていうところ

だろうか。ここの場面では不覚にも泣いてしまった。

あ、けど、良い本だったなあ、と実感できた。

                  (鶴岡卓哉)
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熊撃ち    吉村昭

2023-09-19 14:17:33 | 小説の紹介
生きているだけで、なんでこんなにつらいんだろう、と

思うこともありますよね。でも、なんとか、やっていかな

きゃならんのですよ、これが。

今日は、熊ですよぉ。

ちくま文庫  昭和54年

先日、読んだ吉村氏の「熊嵐」という本があまりにも

衝撃的でおもしろく、この本は偶然、買ってあったので、

さっそく読んでみた。

この本は取材して熊撃ちを毎月書いてらしたらしく、

熊嵐はこの本の副産物だということだ。現地に行って、

猟師に直截話しを聞いて書かれているだけあって、近来の

頭でっかちの小説とは違い、地に足がついた、風を感じる

ことのできる小説だ。こんな体験型ともいうべきすばらしい

小説と出会えたことはとてもラッキーだった。

七話構成になっていて、オムニバス形式になっている。その

どれもが、熊の怖さが、そして、畏怖する心というものの素

晴らしさを感じずにはいられないものばかりだった。

    (読了日 2023年7・7(金)23:21)
                  (鶴岡 卓哉)
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地獄変    日野日出志

2023-09-13 07:06:52 | 本の紹介
今日はホラーマンガのレビューですよ。
さぁ、いってみよう。

オンデマンド   1982年

狂った絵師が人生をひもときつつ、地獄絵を完成させる。

地獄の具現化がテーマとなっていて、狂人の夢の中にはいり

こんだようなある種の爽快感さえ抱くことになる。

ここまで、狂っていると、気もちに迷いがなくなって来る。

なかなか狂っているねえ、などとほざきつつ、この世界に
 
耽溺している自分がいる。いや、嫌いじゃないんだよね、

こういう世界。あまりずっと浸っていようとは思わないが、

1Hくらいなら溺れていたいと思わせる。これで、最後と

思って描いたらしいが、また、次々と描いてしまったらしい。

いや、この描写はやめられんと思うよ。

まあ、犯罪に走るよりは描いたほうがよいのではないか。

いえ、これは芸術ですよ。

                   (鶴岡卓哉)
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硝子の向こうの恋人 蘇部健一

2023-09-11 22:00:33 | 小説の紹介
パソコンの機嫌がいいので、ついでに、一編、短編小説の

レビューをやっておこう。やりたいことは、やっておく

に限るからさ。

「NOVA6」所収   河出文庫

「トホミス」(トホホミステリー)というらしいので、あまり期待

していなかった。王道のタイムワープもの。恋人を助けるんだ、と

いうものだが、ハッピーエンドだし、爽やかで、すごくよかった。

過去にタイムワープするというものだが、そこいら辺は、詳しくは

描かれていなかったが、特に違和感はなかった。すごく描くのに

慣れている感じがあって、読んでいて、安心感があった。確かに、

まったく新しい新機軸みたいなものは皆無だったが、そこにはやはり

安定のお約束みたいな面白さがあった。


       (読了日 2023年6・24(土) 22:37)
                        (鶴岡 卓哉)
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