古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

パンツをはいたウルトラマン     椎名誠

2023-01-31 12:52:06 | 小説の紹介

「ねじのかいてん」所収。

 

秘宝館のショーにでているウルトラマンがゲゾ化

 

してしまって、被りものが脱げなくなってしまっ

 

た男を描く。

 

体は1.5倍になり、力は7倍になり、なにせ、

 

秘宝館のウルトラマンだから、股間におっきなナニ

 

が付いていて、アマゾネスとなにやらいたすという。

 

この男はフツーの時はリーマンなのだが、営業で

 

とても都合よく、成績も3倍になったといい、女子ウ

 

ケもいいらしく、脱ぐ気もなくなってくる。

 

同じくゲゾ化したギエロン星獣とたたかい、同じ身を

 

憂い、裏山に身を隠す。

 

ハイテク秘宝館ブーム、と書いてあるが、それはどーゆ

 

ーことだろう、エロもシーナ氏によるとデジタル化して

 

いくらしい。

 

  (読了日 2023年1・11(水)12:30)

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュートラル      鶴岡卓哉

2023-01-29 07:15:20 | ポエム

もう過激にならず

 

しとしとと降る雨の如く

 

煙る部屋の中、何を思う

 

必ず来るという数年に一度の怪物

 

ポップソングを口ずさむ夕暮れ

 

痩せゆく僕に惜別を

 

言葉に仕えるのではなく

 

ゆっくりと泳いでゆこう

 

揺蕩う大地に新たなる一歩

 

スケールの大きさではない

 

三角形を嫌う男の子のように

 

タバコを百九本一日に吸う

 

怪物を退治するための武器

 

地面を転がす万年筆の蓋

 

サイダーの泡のようにキラキラ光って見える湖面

 

あの娘は怒っているだろうか?

 

僕は頭をニュートラルにした

 

その方法を覚えることに成功したのだ!

 

氷を溶かす方法を三十二通り試してみた

 

カフェには誰も来ぬ、僕のせいか……暑さのせいか?

 

怪物は来なかった

 

地球の怪物は僕以外

 

死に絶えたのである

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

水域       椎名誠

2023-01-28 00:41:39 | 小説の紹介

講談社文庫    1988年

 

後年、長編「水域」に結実する前の短編バージョン。

 

様々なエピソードの断片が垣間見えるが、全貌はぼくも

 

読んだが、とてつもなくおもしろかった。

 

この短編バージョンも見どころがたくさんある。

 

主人公「私」の影のある感じ、不思議な魅力のあるキャラ

 

クターたち。そして、こまごまとした奥目背曲虫、や、

 

メダマガエシ、ヤマナラシ、泥根魚などのサブキャラ。

 

いやーこれは楽しい世界観だ。まったくの創造的空間

 

が拡がっている。SFの真骨頂だ。

 

これでSFに目覚めるひとも多いと思うのだ。ぼくも

 

そのひとりである。

 

   (読了日 2023年1・10(火)14:25)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ねじのかいてん     椎名誠

2023-01-25 14:34:41 | 小説の紹介

講談社文庫   1989年

 

どこかに誰か何者かに拉致られて、収容されている

 

男の辿る運命。

 

それぞれ深いSFチックな研究家が拉致られていて、

 

私はねじの研究家らしい。

 

デレ山と名付けた看守が、体をでれでれとさせて、

 

見回っている。クソを食わされ、私もデレ山と同じ

 

ようにぶくぶくと太ってしまうのだ。

 

おふくろとも会うが、これは幻覚なのか。

 

ねじをなんとかこじ開け、外にでて、この収容所で

 

行われていることを告発しなければならない。

 

SFチックな用語と椎名語とも言える、独特な言葉遣い

 

で描く、収容所短篇。

 

  (読了日 2023年1・8(日)2:55) 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バスジャック      三崎亜記

2023-01-24 08:08:45 | 小説の紹介

集英社文庫    2005年

 

「バスジャック」表題作。この作品はおおいに問題がある

 

と思った。バスジャックをすごく茶化しているのだ。

 

実際にバスジャックに会って、心に傷を負い、体にも傷を

 

負った方もいらっしゃる。そういうことをどう思ってかいて

 

いるのだろうか? 戦争を茶化すのに似て、これはいかんね。

 

問題意識というものが低すぎる。

 

これが、表題作になっているのだから、この本には、やはりい

 

ささか大いに問題が存在しているらしいとしかいいようがない、

 

残念だ。

 

       (読了日 2022年 1・6(金)19:28)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

二人の記憶    三崎亜記

2023-01-23 06:52:55 | 小説の紹介

「バスジャック」所収。  2005年

 

幸せそうな二人のカップル。ただそこには問題があった。

 

二人の記憶はちぐはぐに食い違っていくのだ。

 

現実にはそんなことは起こり得ない。

 

この人はSF的作家なのだ、と遅まきにして気づいた。

 

しかし、作為的過ぎるところが気になり、一度は読むのを

 

やめた。この短編集にはなんらかの問題点があるようだ。

 

このオチはどうだろうか? あまりにキレイすぎて、

 

素直すぎやしないか、もうちょっとここは二階扉的なところ

 

が、ここでは欲しかったように思ってしまった。

 

    (読了日 2023年1・6 0:50)

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

しあわせな光    三崎亜記

2023-01-22 05:43:54 | 小説の紹介

集英社文庫   2005年

 

4Pの小品。丘の上から自分の家を双眼鏡で見る

 

と、自分の過去が見える。それは幸せな頃の両親の

 

姿。そして、自分。ある日、その灯りを見ると、見

 

慣れない女の人が見えて、そして、自分らしき人が見

 

え、三歳くらいの女の子も見える。ぼくはこのまま、

 

孤独のまま終わるわけじゃあないんだ、と悟る。

 

温かみのある終わり方が好感が持てる。二つ目の短編が

 

これなら、一篇目のブラックなオチも納得である。

 

   (読了日 2022年1・3(火)21:10)       

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

二階扉をつけてください   三崎亜記

2023-01-21 11:08:50 | 小説の紹介

集英社文庫 2005年 「バスジャック」所収

 

出産のため妻は家を留守にしている間に、回覧板

 

が回ってきて、二階扉をつけるように、告知され

 

ていたようである。二階扉とはなんぞや、と頭を

 

捻りつつ、読みすすめるが、いよいよ、訳がわか

 

らなくなってくる。残像固定費ってなんだ? 読

 

み手にはそれがどこでもドア的なものであることが

 

なんとなくわかってくるんだが、オチは、まあ、ブ

 

ラックだよね。あんまりそれがすがすがしくないか

 

な。ぼくなら、ただいまあ、と妻が二階扉から入って

 

きて、赤ん坊を見て、にんまりして、終わるけどなあ。

 

     (読了日 2022年1・3 20:30)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

In My Rain    鶴岡 卓哉

2023-01-20 11:38:37 | ポエム

Mデパートの裏口の階段で

 

トランキライザーを飲んでラリっていると

 

腐敗臭のするどしゃ降りの雨が降ってきた

 

そこいら中に腐敗の臭いが立ち込め

 

オレはクラクラする

 

オレンジジュースの氷がカチカチと鳴る

 

どこにオレンジの果実が……探し回る

 

オレンジジュースを飲み干し

 

尖った包丁の先みたいな感覚の中

 

オレはよろよろと立ち上がり

 

イヤな臭いのする雨の中

 

歩き出すんだ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ここは、おしまいの地   こだま

2023-01-19 19:26:59 | 本の紹介

講談社文庫   2018年

 

「夫のちんぽが入らない」で衝撃デビューした、第二作が

 

本書である。

 

あまりの不幸の数々に、今の自分がどれだけ幸せかを痛感

 

してしまい、思わず涙を流している自分がいたり、笑って

 

いたりする。人の不幸を笑う、という言葉があるけれど、

 

人の不幸は面白い、いや、かわいそうなのはわかるが、

 

本人は「かわいそうな」ワケない、と言っているのだから、

 

これはひとつ、盛大に笑ってあげようではないか。

 

気本、この人は文章が上手で、自分の言葉というものを

 

持っているのだろう。自分の言葉を信じていない人に

 

夫のちんぽ、とはなかなか言えないだろう。

 

年ごろのころは「ヤリマン」だったらしい。ブスで

 

「ヤリマン」なかなか凄みがあるな。

 

       (読了日 2022年12・28) 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする