古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

ベトナム戦記   文・開高健  写真・秋元啓一

2016-06-24 11:13:10 | 本の紹介
朝日文庫。


二百人の部隊が十七人しか生き残らなかった



という戦火を体験したルポルタージュ。北ベ



トナム人は優秀な兵士だが、南ベトナム人は



兵士としてはダメだそうだ。そして、こういう


対ゲリラ戦では、20対1ないと勝てないそうだが



アメリカ対べトコンは10対1だったそうだ。アメ


リカは一日二百万ドル使ってせっせとべトコン


を作りだして、結局負けた。そこには戦争という



勝った負けたの底にある現実の生死の戦いがある。



こんなことが果たしてあっていいのか、と言いたげな



魂を抜かれたような開高氏の写真は印象的で、この


戦争の事実を日本人が確実に物語っていた。
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死に急ぐ鯨たち    安倍公房

2016-06-22 15:02:13 | 本の紹介
公房文學、特に方舟さくら丸の絶好のテクスト


になっている。読み解くヒントになるだろう。


僕も方舟さくら丸は読んだが、どうして、トイ



レにハマるようなドジな人が主人公なのかな、と



思っていた。あと、興味深かったのは、言語の向


こう側には行けないということだ。どこまで行っ


ても言語の枠組みからは逃れられない。だから、人


間は感情を溢れさせると、狼狽えたり、戸惑った



りするんだナ、と思った。言語で説明のつくうちは


まだ安心していられるのだろう。あとひとつ、リーダ


ーの発生に関することで、火事に巻き込まれた人が、あ



る人が忘れ物をしたと言って、それを待っていて全員焼



け死んでしまった、というもの。文脈から外れたことを



するとリーダーになる、というのはなかなかおもしろ




く感じた。

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西日の街     湯本香樹実

2016-06-18 23:42:55 | 小説の紹介
十歳の少年がてこじいと呼ばれるじいさんと過ごした




Kという町での日々。てこじいは雨の日に、電車で四



十分かかるところまで赤貝をバケツ二杯とってきて、


戻ってくる。それは元気のない母への思いやりなのだ。


そういう朴訥な優しさに溢れた小説のような気がする。



そして、我々は迷惑をかけたり、かけられたりしながら、



いきてゆく、ということも思い知らされる。けど、こんな


おじいさん一人でもいたら大変だろうなあ。
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ことばの食卓   武田百合子・文 野中ユリ・画

2016-06-14 20:37:18 | 本の紹介
ステキな銅版画の挿絵の付いた本である。



百合子さん(もう何冊も読んでいるうちに



ついこう呼びたくなる)は食べることが何



より好きであり、「枇杷」も枇杷の実を八


個もぺろりと泰淳氏がモゴモゴと食す間に


食べてしまったと書いてある。僕が百合子


さんの文章で好きなのは、美味しいものを



上げつらってゆくのではなく、不味いもの


を食べてしまったことが書いてあるものだ。



「夏の終わり」も、オムレツをビルの四階


にある、いかにもおいしそうなオムレツやで


まずいオムレツを喰わされた、と書いておら


れる。この裏切られた感は、なんともおかし


みを誘う。ひどく可哀想になってしまうので


あるが……。
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目まいのする散歩      武田泰淳

2016-06-07 10:56:58 | 本の紹介
8つの散歩から成る小説エッセイ。妻の百合子



さんのことも分かるし、恰好のテクストとなっ



ている。娘の花さんの幼かったころのことも書



かれていて、愛されていたのが分かる。文章は



混沌としている部分もあるが、それが先生の魅



力でもある。ロシア紀行の話しも出てきて、泰



淳さん側からの最後の旅行を紐解くことが出来


る。これ読んで思ったのは、夫婦ってええなあ、



と思ったが、僕のようなものには結婚はムリで



あろう。百合子さんみたいな人と結婚するには



人からデカい男だ、と言われるような男じゃア


ないと務まらないからだ。僕がデカいのは、体


だけかな……合掌。
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