僕は誰も信じることができない
信じるに足る根拠もないし、理由もなく
真実を知りたければ、ドアを叩けばいい
誰かの心はそれで開かれる?
ボクは荒野でひとり、求めている
ドアを探し、理由を探す
どこにもボクの求めるものはない
頭の中にしか追い求めているものは
存在していないのだから………………
もう過激にならず
しとしとと降る雨の如く
煙る部屋の中、何を思う
必ず来るという数年に一度の怪物
ポップソングを口ずさむ夕暮れ
痩せゆく僕に惜別を
言葉に仕えるのではなく
ゆっくりと泳いでゆこう
揺蕩う大地に新たなる一歩
スケールの大きさではない
三角形を嫌う男の子のように
タバコを百九本一日に吸う
怪物を退治するための武器
地面を転がす万年筆の蓋
サイダーの泡のようにキラキラ光って見える湖面
あの娘は怒っているだろうか?
僕は頭をニュートラルにした
その方法を覚えることに成功したのだ!
氷を溶かす方法を三十二通り試してみた
カフェには誰も来ぬ、僕のせいか……暑さのせいか?
怪物は来なかった
地球の怪物は僕以外
死に絶えたのである
Mデパートの裏口の階段で
トランキライザーを飲んでラリっていると
腐敗臭のするどしゃ降りの雨が降ってきた
そこいら中に腐敗の臭いが立ち込め
オレはクラクラする
オレンジジュースの氷がカチカチと鳴る
どこにオレンジの果実が……探し回る
オレンジジュースを飲み干し
尖った包丁の先みたいな感覚の中
オレはよろよろと立ち上がり
イヤな臭いのする雨の中
歩き出すんだ
唇の赤い端を指でなぞる夕暮れ
彼女の描いたストーリーを生きていた
抱き合っていた彼女は虚構の存在?
墜ちていった深い溝の中で、もがいているのか
光のない闇に埋もれた夜空の中で
ボクは影のような女を求めていたのか……?
知らぬ間に、ボクは存在を失い、ボク自身さえ
透明な目に見えない何者かによって、失ってしまった
心をもう取り戻せないのか?
新潮文庫 1999
詩というものは、時間をそっと言葉という容器に密閉し
保存しておくといった意味合いがあるのではないかと
思う。そういう意味では砂糖づけとは、甘くて、すみれ
の花をそっと甘く保存するという意味もあるこのタイトル
ステキ度は高いんじゃあないか。
江國女史は、都会的で、洗練された女であるだろう、と
思うのだが、この詩集を読めば、おのずとぼくの言う意味も
わかっていただけるだろう。
ぼくは恋とは、縁遠く、恋というものをあまりしたことが
ない男なのだが、この詩集には、ほのかに恋の味がする。
それも、ただの恋じゃない。危うく、脆く、時に、危険な恋
だ。あぁ、ぼくにはよくわかんないやつだなぁ、と諦めて
いるが、ここの指先に籠められた先を見なければいけない。
そうだ、詩の示す先を見つめなければならんのだよ、分かる
かね?(うーん、分からない)……合掌。
尾道
この町は坂がやたらと多く道はくねくねと続く
やけに静まり返る中に猫が陽だまりに
やけに有名だけどあまり美味しくないラーメンを食べると
何だか少しだけ幸福に近づけたような気がする
錯覚だか大げさかは知らないけどさ
ちょっとだけとまどってみることが
ちょっとだけ進んでみることが
時に大きな意味を持ってきたりするんだ
その時間が時に僕に重くのしかかってきたりするんだ
たまに君を想ったりするときにね
それでも列車は待ってくれたりしない
時刻通りに列車は走り出すんだ
列車はやっぱりレールの上をガタンガタン
やけに揺れるけど僕は大丈夫、たまに君を想いだして
たまに君を忘れ、列車に揺られて
進んでいくんだ
町を守って戦いたい時は、ねぎっこ焼きだ。こいつを食えば、十秒だけ戦える。走り込んで、怪獣にテレビで見て覚えたハンセン張りのウェスタン・ライアットを食らわせてやれ! それで、この町も守られるだろう……。
僕は味覚のない人間になってしまった
僕は感情のない人間になってしまった
それでも、僕は生きていたい
けれども、僕の中の何かは死んでしまっている
死ぬことが僕の本能なのか
生きることのみが僕の真実なのか?
形のない混乱と静寂、それから、微かに香る腐臭
僕はどこにいるのか
僕は死を見つめることで生きようと
いや、僕は、背けている
そのことで僕は、跪いている
世界の隅っこで僕はひとり蹲っている
哀しみの涙も枯れ果ててしまった
僕は世界を嫌悪しているんだ
友達もいないし、お金もないんだ
将来もないし、希望もないんだ
僕にはなにもない、空っぽなんだ
世界の隅っこで僕はひとり疲れ切っている
僕は不幸のストーンを手にする
それは実に不幸の種であり
僕に様々な不幸を運んでくる
それでも、ストーンを捨てようとしなかった
僕は不幸を甘んじて受け入れた
いつか幸福になれると信じて