古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

崖 梅崎春生

2024-11-30 08:50:19 | 小説の紹介

新潮文庫 昭和二十六年

 

この短編で、重要なモチーフとなっている崖で

 

あるが、ストーリー上でも重要である。

 

暗号解読係の主人公が、なくなった暗号書をネッ

 

チングの羽目板に見つける。

 

それを、山芋掘りに誘った加納、暗号書がなくな

 

ると、いつもいじめてくる上司が殴られることを

 

計算して、隠したと思われる張本人。その加納に

 

不意に、ネッチングの羽目板にあったことを冗談

 

めかして言うと、崖から突き落とされ、そして、

 

危ういところを救われる。本当に加納は主人公を

 

殺害しようとしたのだろうか?

 

それにしても、この短編とは、関係ないが、読むのが

 

遅すぎて、飽きてしまう、という問題が起こって来て

 

いる。ハハにそう言うと、そういう時は斜め読みする

 

のよ、と平気な顔をして言うのだ。

 

ぼくには、そういう芸当は出来ない。そう言われたこ

 

とで、天邪鬼(あまのじゃく)のぼくは集中して読む

 

ことが出来た。

 

(読了日 2024年11・17(日)21:30)

               (鶴岡 卓哉)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日の果て  梅崎春生

2024-11-29 01:45:29 | 小説の紹介

新潮文庫 昭和二十六年

 

WWⅡの戦時下での男たちの葛藤を描く。

 

隊から離れ、逃亡し、女をつるんで逃げている

 

花田。それを追う宇治中尉と高城伍長。

 

文学的に優れていて、文学的表現に溢れて

 

いる。

 

ラストの撃ち合いになる場面ひとつとっ

 

ても、そこは、直截表現するのはではなく、

 

文学的処理が為されている。

 

この中編を読まれる方はおられるのだろうか。

 

それなら、ネタバレはしない方がいいのかな。

 

文豪と云われる作家に手による究極の戦争

 

小説をこの度拝読して、死と云うものの扱い

 

方が非日常として、ある意味、軽く扱われ

 

ている。このことの怖さを是非堪能していただき

 

たいと思った。

 

(読了日 2024年11・14(木)16:00)

                 (鶴岡 卓哉)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

桜島  梅崎春生

2024-11-28 01:41:13 | 小説の紹介

新潮文庫  昭和二十六年

 

美しく死ぬ、と云う言葉を胸に刻んだ村上兵曹。

 

終戦を島で迎え、その玉音放送も雑音が激しく

 

直截は聞けなかった。我々は本土決戦をする、

 

と上司の男は意気巻き、臆病者をぶった切る、と

 

豪語したあと、あのラジオは、終戦の放送でした、

 

と云うちょっとコントかよ、っていうほどのオチ。

 

でもなあ、本土決戦も覚悟していたのに調子狂うよ

 

っていう想いはあっただろうね。

 

さすが、文豪梅崎氏だけに、光る文章も多く、文体

 

もしっかりとしていて、これぞ、戦争文学って感じ

 

だった。

 

死ぬまで生きる、美しく死ぬ、昔日の日本人のもっ

 

ていた生きると云うことや、死についての意義が

 

垣間見えて、人間の根源をついた作品となっている。

 

(読了日 2024年11月10日(日)23:40)

                (鶴岡 卓哉)

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロビンソンの末裔 開高健

2024-11-27 01:03:03 | 開高健

新潮文庫 昭和四十七年

 

北海道の戦前から戦後にかけての開拓民の

 

苦悩を描く。

 

東京で食うや食わずで、北海道への開拓の

 

うまい話にのって、広い大地と格闘するものの

 

敗れ果てて行く話だ。

 

解説にもあるが、その開拓の話しだけではない、

 

上野駅での混乱、混沌、混濁、垢に塗れる汗、

 

腐臭にまみれた体臭が、このその場の空気を

 

活写した感じは、イキイキとしていて、ルポル

 

タージュとも言えない、小説の世界を表現し得

 

ている。

 

開高氏は果たして、大地に根差した作家なのだろ

 

うか? と問うと、ぼくはその後の作品を鑑みて

 

決して、この作品が浮いているとは思えない。

 

いや、釣りへと興味が湧いて来る発端が現れ出て

 

いるのではないか、と思うのだ。きっと、開高氏は

 

自然と云うものの驚異を三十歳のこの頃から如実に

 

感じ、表現したかったのかもしれない。

 

(読了日 2024年11月10日(日)22:20)

                (鶴岡 卓哉)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

もたない男 中嶋タツヤ

2024-11-26 02:18:43 | 本の紹介

新潮文庫 平成二十二年

 

漫画家である著者のものを持たない生活

 

の在り様を淡々と描いたエッセイ。

 

部屋にはレンガにテープを巻いたものが

 

ひとつ転がっているだけ。

 

ボールペンも使うとインクが減る分削って

 

いくというヘンタイぶり。けど、ここまで

 

いくと、潔くって、気持ちがいい。

 

ぼくは、この文章もムダがなくって、シンプル

 

な文章に、ちょっと、と思ったが、読むと

 

くせになり、断捨離男のIZMと云うか哲学も

 

気になり、ほぼ一気読みだった。

 

最近ではこんなに夢中になった本はあんまり

 

ないかな。

 

バイクのフェンダーまで捨てちゃって、雨

 

の日にびしゃびしゃになったらしい。

 

ぼくも人と比すると、物を持たない方だとは

 

思うが、部屋にはけっこう小物が溢れていて、

 

CDとか、その方が安心するタイプみたいね。

 

今度、この本を読んで、いろいろ捨てるのも

 

アリかもな、と思ったりしているのでした。

 

(読了日 2024年11月7日(木)22:05)

                 (鶴岡 卓哉)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

食べるのが好き 飲むのも好き 料理は嫌い 内館牧子

2024-11-25 06:29:21 | 本の紹介

講談社文庫 2004年

 

本書はお皿などの料理に関する小物が好きで

 

集めるが、料理は嫌いと云う著者が出来合い

 

を自分でつくりました的に出して来た、と語る

 

一方、なかなかの光る料理のセンスを見せる。

 

ちょっと笑っちゃうエッセイなのであります。

 

センテンス、長すぎ! ですね。

 

著者は薄幸の女を気どり、木村多江主演で映画

 

でも撮れそうな、爆笑なシナリオを書いて、気仙沼

 

で「お牧」と云うおでん屋を開きたい、と各所で

 

言って来たそうな。そのくせ、おでんはおでんの素

 

でしかつくったことがなくて、妄想はどんどんエスカ

 

レートし、ふくらみ、暴走してゆく。

 

最終的には、料理をつくる時間があったら、格闘技と

 

相撲を視に行くという位だから、時津風部屋の「豚

 

キムチちゃんこ」は抜群においしかったので、

 

時津風部屋風にアレンジして、ちゃんこ鍋屋にしようと

 

いうことになるが、? ちゃんこと薄幸? と疑問に

 

思わざるを得ない。元気いっぱいイメージしかちゃんこ

 

にはないのですが、とツッコミを入れておいた。

 

(読了日 2024年11月4日(月)22:15)

                 (鶴岡 卓哉)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画を書く 日本映画の原風景 片岡義男 その4(最後)

2024-11-24 12:48:53 | 本の紹介

今回は、「泣蟲小僧」1938年(昭和十三年)を

 

みてゆこう。

 

ずい分、しみったれた貧乏くさい子供の出て来る可

 

哀想な話しのようだ。

 

貞子と云う女性がふたりの子供と共に住んでいるが

 

その子供、啓吉少年がたらい回しにされ、すごく

 

憐れだ。この作品を片岡氏は高く評価していて、

 

特に子役がすばらしい、透明度の高い静かな佳作

 

と評している。なかなかいい映画のようだ。

 

(映画の内容は違えど、文体はいつなので、同じ

 

印象を持ってしまい、その文体も退屈この上ない

 

ので、これにて終了)

 

(読了日 2024年11・2(土)22:04)

                (鶴岡 卓哉)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画を書く 日本映画の原風景 片岡義男 その3

2024-11-23 05:19:05 | 本の紹介

今回は、「母の曲」1937年(昭和十二年)を

 

みてゆこう。

 

この娯楽映画は、稲と云う名のひとりの女性の、

 

妻として、母としての身の上話だ。

 

上流社会に入ったお稲さんが、上流社会に馴染めず

 

はじき出され、工場で働いているような男、田中

 

龍作の元に転がり込み、娘の幸せのために身を引く

 

という話しだ。

 

お稲さんは女工だったのだが、そのとき、知り合った

 

夫の職工だった純弥が、どうして数年して、世界を

 

飛び回る医学博士になったのか、ヘンな話しだ。

 

ここで当然、この話は破綻している。

 

昔の映画は、ムリも通れば道理引っ込む、といった

 

感じだったらしい。

 

(読了日 2024年11月3日(日)23:50)

                 (鶴岡 卓哉)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画を書く 日本映画の原風景 片岡義男 その2

2024-11-22 01:00:11 | 本の紹介

今回は「東京ラプソディ」1936年(昭和十一年)

 

を見てゆこう。

 

舞台は銀座、若い女性の足で有楽町の駅から小走りに

 

三分ほどのところに若原クリーニングがある。

 

そのクリーニング店の子供で働いているのが藤山一郎

 

扮する一郎という青年だ。クリーニング屋の向かい側の

 

煙草屋の看板娘が一郎の恋人のような存在だ。

 

その子はハト子といい、友人のマキという女性とお茶の水

 

の近くのダン・アパートメント・ハウスで都会の独身

 

生活を送っている、という設定で、この本編のエッセイ

 

では細々としたストーリー展開が語られてゆく。

 

一郎は歌手になり、いろいろ込み合った男と女の

 

もつれ、キビなどが描写されてゆく。随分と都会的な

 

映画であると云う印象だった。

 

(読了日 2024年11・2(土)13:12)

                (鶴岡 卓哉)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画を書く 日本映画の原風景 片岡義男 その1

2024-11-21 13:14:30 | 本の紹介

文春文庫 1996年

 

これからは、この義男氏の映画を書く、を一本

 

一本検証してゆこうという趣向である。

 

今回は、この「東京の宿」1935年(昭和十年)と

 

云う映画を見てゆこう。この片岡氏は、この映画を

 

一回だけみて、書いたのだろうか。それにしては、

 

細部のストーリーまで心ゆくまで追っているようだ。

 

この作品は小津安二郎氏が作ったサイレント映画だ。

 

コメディと云うことだ。喜八という男が出て来る夏の

 

日の物語、身上話と云うことだ。長屋に住んでいて、

 

殺風景な工場地帯で男と女が出合い、病気の娘の話し

 

とかが出て来て、破綻した話しが展開される。不幸な

 

身の上話の展開に、実際に映画やTVなどで見たならば、

 

消していただろうな、と思う。ぼくは映画を途中で

 

やめることは多々あるのだ。

 

(読了日 2024年11・1(金)14:32)

               (鶴岡 卓哉)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする