古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

ネコババのいる町で      瀧澤美恵子

2018-04-28 10:47:17 | 瀧澤美恵子
文藝春秋  平成2年3月


表題作で、第六十九回「文学界」新人賞、第百二回芥川賞を受賞。


母に捨てられた恵里子。叔母さんと祖母に育てられた。そして、


としごろの高校生になると、叔母さんには内緒で、実の父に会い


に行く。名古屋まで行くが、会っただけだった。そのとき、手切


れ金として、お金をもらっている。叔母さんとそのお金のことで


やり取りがある。叔母さんは男運がなく、貢いでばかりいるらしい。


恵里子の半生を追った作品となっている。



神の落とし子は、短編ではあるのだが、それでも、長すぎるようで


ある。話しとしてはとても面白いので、もったいない。一族の転落の



リリスの長い髪は、二人の女と結婚した亙が直美という女に耽溺



して、首に髪を巻きつけるというプレイを好んでいたことからこのタイ



トルである。



医者の話で、エリートたちの苦労話というか、人生が語られる。



やはり、ネコババ~が一番良かったようである。
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追憶の一九八九年     高橋源一郎

2018-04-27 15:06:38 | 高橋源一郎
角川文庫。



なんで高橋氏はそんなにモテるのかな、といろいろ邪推していたが、結局は



モノを買ってあげてるんだな、と分かった。



Nさんも(きっと創作で)ブランド好きのノータリン女に描かれておるが、こ



んなアホ女に色キチガイの高橋さんが惚れるわけないから、きっと、ホントは



クレバーな若い女性なのだろう。



この日記をおもしろくさせているというか、ボク好みにさせているのは、猫ち



ゃんたちの活躍が描かれていることだろう。クツにおしっこしたりと大活躍だ。



それにしても、Nさんは子供か? と思わせるほどだ。カエルの死骸に怯えると



ころなぞは、笑止である。心の清い人なのだろう。高橋氏も少年っぽいところが



あるからお似合いであったということだろう。たのしい生活を垣間見えて、ボクも




実に楽しい読書タイムを送らせていただきました。

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ファンク

2018-04-27 10:00:20 | ポエム
オレの神の名はブーツィー


スゲえファンキーでクール


神聖な血を騒がすことができる


お前は、今、騒いでいるか?


お前は酔って、愛の真実を問うている



お前はいつでも神と対話できる


サタンの姿を借りて神は話す


その声は真珠のようだ


オレはいつでも神に答えを聞いている


神は人それぞれさ!


そして、そいつは信じている人にしか


聞こえないのさ!
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ひとり日和     青山七恵   

2018-04-26 09:39:17 | 青山七恵
河出書房   2007年作品。


駅のすぐそばにあるけれど、すぐには行きつけない一軒家に


吟子さんの家はあった。それは、別れが繰り広げるだろう駅


という舞台にすぐ行けない、みえているのに、近づけない、


真実のような気もしてくる。吟子さんは七十一歳だ。ボクの


ハハが七十二歳だから、それよりも若い。うちのハハはすごく


元気なので、ボクは、おばあさん、だとはあんまり思わないが



二十歳くらいのコからしたら、すごくおばあさんに思えるの


かもしれない。でも、吟子さんも、バレンタインにホースケ


さんにチョコを買ってあげるくらい若々しく描かれている。


二十歳で、二人の恋人と別れる。そりゃ、40にもなったら、


老けて、ババアにもなろうというものだ、と納得がいった。


世の女性もタイヘンであるな、と感じ入った。まあ、小説


世界の話ではあるがね。それとも、サセコの気味もあるこの


主人公が悪いのだろうか、そりゃ、させれば、すぐに男は


飽きるわな、それが分かっていないという風に描かれている。


けなげというか、バカというか……二十歳って、ホント、バカ


だよねえ、という風に描かれているのであった。




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ポトスライムの舟    津村記久子

2018-04-25 09:47:36 | 津村記久子
講談社文庫  2007年~2008年。


まずとっかかりでつまずいてしまって、なんかつまらないな、という


印象だった。でも、十二月の窓辺へと読み進めるうちに、この作家の


言いたいことがわかってきたような気がして、それからは一気読みし


てしまった。


この人独特のリズムと文体について、やはり、特異な新しい世代とも



いうべきものを持っているというべきだろう。同じように、仕事について


描いていて、同世代作家に同じく芥川賞作家の小山田浩子がいると思うが、


この二者をもってしても、その切り口にしろ、語り口にしろ、まったく違


うように思う。しかし、その仕事というものに関する、手触りには似たものを


感じる。リーマンにとっては共感すべき点があるだろうし、我々のような自


営業にはシステムで働くことのタイヘンさが分かる、という点において、新たな


労働文学ともいえるものがあるのではないか、と思えてくる。
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乙女の密告      赤染晶子

2018-04-24 10:12:32 | 赤染晶子
新潮社 2010年


自身は42歳で亡くなったらしい。伝説の書、ということになるだろうか。


伝説の名に恥じない、実に深い小説だった。アンネ・フランクの日記と京都


外大の乙女たちの生態をだぶらせ、バッハマン教授という個性的な人物を配


することによって、より、深い境地へと舞い降りて行っている。


密告をおそれる女……そして、アンネと名前に付された意味……抽象性から具象性


へのおそれ、といったもの。乙女という存在でいなければならないと同時に


「私」を見捨ててはならない、その間で揺れ動く、みかる、麗子様などの心情を


こっちで慮ってしまうようなスタイルでした。乙女とは潔癖なのですね。  
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リアル     鶴岡 卓哉

2018-04-21 09:47:20 | ポエム
心の中で誰かが叫んでいる


今いる場所が分からないの?


妖精たちの透明なる世界


ボクの知らないなにかがボクの中にいる



ボクのことが好きみたいだ……ここはブラック


答えを欲してる……質問しても答えない


ボクはフランス映画のセリフのような答えを期待していたのに


ボクの痛みは妖精たちの痛み…………いっしょに暮らしている


ボクらは…………存在を否定し、肉体を肯定する


ロジックなき実体


リアルとはそういうものだ!
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銀河鉄道の彼方に    高橋源一郎

2018-04-17 09:53:10 | 高橋源一郎
集英社 2005年三月号「すばる」~2011年五月号。



夢というものは一体なんだろうか? 夢が現実に影響を及ぼすようになったら、


そう考えると、ちょっと怖くなる。



現実が勝手に失われていったり、改変される世界を高橋教授は始終考えて


おられるのだろう。


宇宙船から疾走したG***くんのお父さん。「宇宙でいちばん孤独な男」


といわれる、宇宙の涯ヘと旅立った男の末路とは? あまのがわのまっくろな


あなの言葉の真意とは?  手が神がかった力を持った男の見た世界とは?


数々の謎が怒濤のごとく押し寄せ、そして、頭の中で瞬いていく。そして、


最後に僕らの見たものとは?…………そうだ、突き詰めて考えれば、ものは原子で



できていて原子はもっと突き詰めていくと無なのだ、そんなものも無なのだが、


もっともっと突き詰めて見ていくと、いっぱいいっぱいいろんなものが詰まっ



ているのかもしれない…………たしかに、無も無じゃないってワケか…………なるほど。
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極楽船の人びと   吉田知子

2018-04-14 09:37:13 | 吉田知子
中央公論社 昭和59年。


死に向かう共同体の中で、狂気に陥る者、過去を語る者……。そんな


ものは、実際にはありはしないが、幻想としてのパラダイスへの階段


というか……。目を背けたくなることにこそ文学的価値があるとす



るなら、まさに、これは文学でしか成しえない作品だろう。


ツドイと呼ばれる船客たちの集会で語られる有象無象の話し。ここでは


真実などどこにもない。人の死に向かっていく欲望に支配されている、



のみならず、なにも知らない人たちも混じっているらしい。


運命を担った船は爆破に向かって驀進してゆく……。


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私説 東京繁昌記    小林信彦 写真・荒木経惟

2018-04-13 09:59:08 | ポエム
高橋源一郎氏が凄く誉めていて、おもしろそうだから読んでみた。


東京下町を中心に、戦中、戦後の街の風景が思い描けて、おもし



ろかった。東京砂漠という言葉は知っていたが、それは東京オリ



ンピックの時の水の断水のことを言っているのだと発見があった。


東京という街は実に奥深いなあ、と思いつつ、その広大さに目が



くらむようである。ちょっと暗いのが気になったが、大人の読み物


としては、このくらいのテンションの方が落ち着いて読めるので、


良いと思います。
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