古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

オモロマンティック・ボム!  川上未映子

2024-01-24 08:49:13 | 本の紹介
新潮社 2010年

読んでいる最中に、自分でオモロマンティックな

レビューの文章を描きつつ、しかし、読み終わって

しまうと、そのオモロマンティックな文章は、淡く

儚く、消滅していた。

未映子氏は眠くなるらしくて、一日10時間も

昏々と眠るらしいね。けど、太宰氏もいってい

たように、女性というものはよく眠る生きもの

らしいので、安心していいと思います。

思えば、ぼくの姉もほっておけば一日じゅう

眠るような人でした。昏々と、しんしんと。

ピッコン! というエッセイで幕をあけるこ

のエッセイ、未映子氏というのは、死語を

恐れている人だな。言葉というものの賞味期限に

敏感なのだな、と感じました。でも、言葉と言

うものはいつも変容していくもの、追い続けると

疲弊してしまうよ、くたくたに。

では。

(読了日 2023年12・25(日)22:55)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ユービック    フィリップ・K・ディック

2024-01-20 09:20:18 | 小説の紹介
浅倉久志・訳 早川書房 1969年

ディックの第三期の黄金期に書かれた

ユービック。

月に探査に行き、そこでチームは死に、

架空の世界で退行現象に見舞われ、19

39年にまで退行してしまう。

ユービックという時間を巻き戻せるクスリで

死をまぬがれる主人公。兎に角、SF的仕掛け

がふんだんにあり、ミステリー要素もある。

飛び切りスリリングで、SFチックな世界に

ハマりたいのなら、読んでソンはないだろう。

テレパスとかワクワクワードもふんだんに出てきて

その不思議な世界を堪能した。

こういうのはあまり深読みせず、純粋に楽しめばよ

いのだと思う。楽しんだ者勝ちだ。

(読了日 2023年12・20(水)21:40)
                (鶴岡 卓哉)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヴェニスに死す   トーマス・マン

2024-01-18 05:09:35 | 小説の紹介
高橋義孝・訳 新潮文庫 1912年

ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画

「ベニスに死す」の原作である。

アシェンバハは50過ぎのおじさんだ

が、美少年タドゥツィオに魅せられて

しまう。その頃、コレラが流行っていて

アシェンバハはコレラに冒されて、死んで

しまう。

トニオ・クレーゲルのような独自の理論を

振りかざさない分、文章は分かりやすくなっ

ている。

文体の中を自由に泳ぎ回って、楽しめた。

ノーベル文学賞をマンさんは獲っているら

しいが、やはり、その価値は充分あるようだ。

文章自体は難解だが、ぼくはおもしろいと思

って夢中で読んでしまったが、今の文学に

親しんでいる人にはなんじゃこりゃ的な文章

なんだろうな。

反ナチスのドイツ文学者として有名でもある

ということだ。

(読了日 2023年12・17(月))
           (鶴岡 卓哉)



































コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

しろばんば  井上靖

2024-01-16 12:38:58 | 小説の紹介
新潮文庫  昭和37年

ノスタルジーにあふれた洪ちゃという少年

の少年時代をおぬいばあさんと暮らしていく

中で成長していく物語。

心にいちばん残ったのは、いとこのハハの妹

のさき子が死んでし舞うところだろう。

若くてキレイで利巧な女性の若死ににはやはり

つらいものがある。

いろいろな出来事が出し惜しみないかんじが、

読んでいて楽しい。

洪ちゃもぼくは基本子供はだめなのだが、大丈

夫だった。まあ、日本版スタンド・バイ・ミー

って、ちょっと違うか。

兎に角583Pあるので、一カ月半読むのにか

かってしまった。

井上靖氏の書く文章に興味があって、次ど

んなのが来るか、楽しみでもある。けど、

これ、井上氏とはなんら関係のない話しな

のだろうか。そこいら辺はよく分からないが、

とても練られたストーリーテリングに徹した

感じでした。拍手喝采。

(読了日 2023年12・17(日)20:54)
                (鶴岡 卓哉)         

























コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

猟師の肉は腐らない    小泉武夫

2024-01-14 03:16:34 | 小説の紹介
新潮文庫  2014年

登場人物は義っしゃんと俺、と犬のクマ。

義っしゃんは八溝で生きるワイルドな男だ。

犬のクマに食(か)せるウサギの汁ものは

すごくうまそうだし、ドジョウ汁も、イノシシ

の肉もなんともうまそうである。

初め、この物語は小泉氏自身の物語かとまた

騙されてしまった。いつも、そういうスタンスで

読んでしまって、やられたなあ、と思うほど、

「俺」は小泉氏の生き写しだ。

それだけ、小泉氏は知識が深いということだろう。

2014年、まだSDG’Sが叫ばれていなかったころ

に、持続可能な生活を提案しているように感じ、

その慧眼に驚かされる。

(読了日 2023年12・16(土)23:10)







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ト二オ・クレーゲル  トーマス・マン

2024-01-13 04:16:21 | 小説の紹介
高橋義孝・訳 新潮社  1903年

こう読んでみると、作家の書くレベル、

人々の読むレベルというものは、最近は

とみに落ちているのではないか、と思う。

いや、むずかしくって、ぼくのような者に

はなにいってんのか、ちょっとわかんない、

といいたくなってくる。が、読むには読んだが

内容に関しては芸術家クレーゲルがどう思い、

どう考えたかを追っているとしかわからない。

女の子とどうかしたらしいが、その気持ちも

くみとってあげられなかった。とても繊細で

傷つきやすいクレーゲルくんのことについて

文章は良かったが、よくはわからなっかたん

だよね、残念なことに、チーン。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

螢川   宮本輝

2024-01-12 04:28:59 | 小説の紹介
角川文庫  昭和52年

第七十八回芥川賞受賞▽手法としては、とても

昔からある方法なのだろうな、40年ぶりの再読

だが、男の子のなにするのを風呂場でやれ、という

ところは覚えていた。もちろん、その頃、ぼくも

なにしていたので、なには風呂でするのか、と思った。

あと、覚えていたのは、乳首が硬くなってきた、とい

うところ。ラストも読んでいるうちに思い出してきた。

とても、印象的な蛍の乱舞する様が、そのとき、天才

だった男の手によって描写されていく。

ぼくはどっちかっていうと、泥の川の方がより好み

だったけどね、けど、ほぼ一気読みだったので、

なにか魅了するようなところのある文章だったように

思う。兎に角、この螢川と題された本はマスターピース

となり得るだろう。伝説的な短編であることは間違いな

いことのようだ

(読了日 2023年11・30(木)21:32)







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

午後おそい客   日本エッセイスト・クラブ編

2024-01-07 14:03:52 | 本の紹介
文藝春秋  1984年

1983年から行われていたベストエッセイ

を募集して、そこから、上位53篇をのせている。

どれもおもしろかった。一編だけ読み通せなかった

エッセイがあって、テレビ関係の人のだったが、

政治の内幕を刻々と描いたもので興味のない僕は

だめだった。ひとつ発見は、天津甘栗は天津には

ない、というもの。これは驚きだった。

ぼくのベストは水木しげるさんの失くそうにも

失くせないといういわくつきの安い300円の帽子の

話しだった。

84年ということでまだ戦争の話しとかもあって、

ぼくは戦争の話しはわりかし好きなので、その雰囲気

を味わえてよかった。

さすが、ベスト・エッセイ、たがわず読ませてくれた。


















コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泥の川     宮本輝

2024-01-06 05:31:42 | 小説の紹介
更新をしてないうちに世間様ではいろ

いろあって、まあ、とかく、世間様で

は大小常にいろいろあるわけですが、

考えてしまってね。それも、お正月に。

好きなことをし続けることは、簡単な

ようでしんどいこともたくさんあるし、

エネルギーもいる。でも、それをできな

かった人もいて、そういう人たちの気持

ちも引き受けつつ、生きていかなくちゃ

あいけないなあ、などと不肖にも思ってい

て。

今日は、泥の川ですよ。

角川文庫   昭和52年

小栗康平監督の「泥の川」を12歳ころに

みて、それはそれは衝撃を受けた。そのと

きに文庫本を買ってもらって読んだ本がまだ

あるっていうのも、けっこうすごくないか。

あらすじなんかはネットで調べればすぐ出て

くるだろう。

40年ぶりくらいに読んだが、本を読んで

泣いたのは久しぶりだった。ラストなんて、

涙なくしては読めないと言うと、オーバーに

聞こえるかもしれなけれど。お化け鯉が印象的に

つかわれていて、それは40年経っても覚えていた。

自分でもなんでやろ? と思ったのはポンポン船に

いったのぶちゃんが、パンパンのお母さんに黒砂糖

をもらうところは号泣してしまった。

ほんと、最近、自分でも、なんで? って思う

ところで泣くので困っている。

(読了日 2023年11・28(火)21:26)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする