1985年 「大人のための怪奇掌篇」所収。
小田氏は大蔵省に勤めているが蟹が嫌いであった。というような
冒頭。その小田氏が体から革命を叫ぶ文言が聞こえてくるように
なる。それは精神分裂症的な感じであるが、そういう感じですす
んでゆく。オチはこの人はちゃんとあるらしく、きちんとオチて
いた。ネタバレになってしまうのであえてここでは伏せておこう。
革命は体で起こっている。それを学生運動とかと勘違いした小田氏
が命取りだったのだろう。......合掌。
1985年 「大人のための怪奇掌篇」所収。
小田氏は大蔵省に勤めているが蟹が嫌いであった。というような
冒頭。その小田氏が体から革命を叫ぶ文言が聞こえてくるように
なる。それは精神分裂症的な感じであるが、そういう感じですす
んでゆく。オチはこの人はちゃんとあるらしく、きちんとオチて
いた。ネタバレになってしまうのであえてここでは伏せておこう。
革命は体で起こっている。それを学生運動とかと勘違いした小田氏
が命取りだったのだろう。......合掌。
1985年 「大人のための怪奇掌篇」所収。
レストランを経営している木原氏のところで10人くらいの
パーティーが華々しく行われている。
それはどうやらヴァンピール、つまり、ヴァンパイアたちの
会らしいのです。と、読みすすめていくと、ヴァンパイアと
いうのは増殖していくらしく、木原氏もヴァンパイアとなって
美少年の血をすすっていた、という感じ。うん、怪奇な感じ
もあるし、華々しさもあって、倉橋氏は2005年に亡くなっ
ているらしいが、おもしろそうである。......合掌。
新潮文庫 1968年
1968年といえば約半世紀前の本だ。もう日本人は大分
変わりましたよ、伊丹監督。体形も変わったし、言葉の使
い方も変わったし、あの頃になかったものもずいぶんある。
あの高度経済成長のころのヨーロッパに対する「初々しさ」
みたいなものは今の日本人には(少なくともぼくには)ない。
憧れもないし、欧米に対する卑屈さみたいなものもそんなに
ないのではないか。「キューカンバーサンドウィッチ」はキ
ューカンバーだけでは飽き足らず、いろんなものを入れます。
その当時、奇抜で目新しかったであろうルールもこだわりも、
今や、そんなに目新しくもない、っていうか、常識程度だ。
文学も日々刷新されていっているのだな、と痛感。でも、この
本は風変りに受け取られるという50年が経って、たしかに、
風変りな本として、若い人に受け入れられるのかもしれない。
あるいは、滑稽の域をでないのかもしれない。伊丹氏の自殺が
滑稽であったと感じられるほどに。いや、時代は変わりました
よ、伊丹監督。......合掌。
旦 敬介・訳
十二の遍歴の四つ目の短篇。あるエメラルドの目の入った
を指輪をした女性が晴天の日に大波を食らって死んだという
ニュース。男は、この女性が、予知夢を売り物にして生活し
ていたことを知っていた。真偽のほどは定かではないが、
当たったことがあって、それは弟がお菓子を食べると死ぬ
と言ったのに、食べてしまって死んでしまったことに発する。
予知夢というオカルティックな題材だが、それを文学的に
どう消化していくかという点にこの短編の見所があると思う
んだが。......合掌。
1982年6月
ある飛行場と飛行機の中の話。今世紀イチの雪が降り
空港内にとどまることを余儀なくされた男。男はそこで
今まで会ったことのない美女と会い、飛行機の中でその
美女は8H余眠り続け、男は横で悶々とする。
川端康成氏の小説のことがでてきて、これはエロチシズム
なのだ、ということだろうか。
ぼくは美女が怖いので、この男の気持ちは分からないが、
よく眠る女もあまり好みではないからして、あんまり、
この美女について、どうも関興が湧かないのであるが。
8P余の短篇でうまくまとまっていた。......合掌。
「十二の遍歴の物語」所収。
「聖女」と思われる娘の遺体を持つ男。それは「聖女」らし
く腐らなく、村中でなんとかしてもらおうよ、ということに
なるが、キリスト教関係のひとたちは一切相手にしない。そ
もそも「聖女」といわれる報告が何百件もあるらしい。
その「聖女」を巡っての話らしいのだが、後半はよく分から
なかった。分からないまでも読みはしたが、分からないのだ
から仕方ない、はい。……合掌。
「十二の遍歴の物語」所収。 1979年6月
訳が時折、直訳的になってしまうのが気になった。もっと
文学的に書いたらいいのではないのか。マルケス氏はよく
大統領をモチーフに用いることがあり、その状況は様々だ。
今回の大統領は失脚し、貧乏で、体中が痛むが、手術する
費用もろくにないありさま。若夫婦の世話になり、おカネを
出してもらう感じで、最後は手術も治らない、というのが、
なんとも遣る瀬無い。12篇短編があるというが、それぞれ
は独立しているらしい。……合掌。
創元SF文庫 2014年
「母のいる島」
SFとはリアルとのせめぎ合いとも言えると思うのだが、この
短篇の設定15人姉妹の女だけってのはいかにもムリがある。
ここまでいくと、まずその時点で話しに入っていけない。リア
リティは大事だ。いかに不思議なことをリアルっぽく書くかが
テクニックとして試されると思うのだが。ここは妥協して「六人」
くらいでも良かったのではないかと思うのだ。話しを過剰に
し過ぎるのが、この人の悪いところだ。悪ふざけが過ぎるというか。
そこがおもしろいところでもあるんだが。
芥川賞を獲られている。ネット上での評価はちょっと可哀想に
なってしまうほどひどいものだった。うーん。
「おやすみラジオ」
途中半ばまでは、これは、と思って、すごく楽しく読んでいたのだが
ラストでうむむ、と唸って、「?」となってしまった。
リアルの境界がなくなり、ネットで操作された人々が比奈子たちを
襲うってのも、むむむ、と思って、ムリがあるのでは、と思ってしまった。
ブログを子供が書いていて、その内容が成長するラジオなら、そこいら
へんをもっと引き延ばされた方がよかったのでは、と思う。いくらでも
ストーリー展開の選択肢はあったはずである。
これが新感覚のSFなのか、と思って、そうかそうか、と言って、手放しで
喜ぶべきなのか? これは新たなホラー小説的な? いや、違うな。
SFはいつも新たな挑戦をしていくべきなのだからして、これでいいのだ。
と、結局は納得してしまったおれっちだった。……合掌。
創元SF文庫 2014年
「うどん、キツネつきの」
読んでみた二回ほど。でも、どう読んでもこの作品のおもしろさが
分からなかった。導入部分はなかなかおもしろいと思った。でも、
そのあとがよくない。この人の想像力の浅さというか、驚きがなか
った。どうみても凡ヨーであり、表現は稚拙だ。
帯には、「この人の想像力の強さは本物だ 大野万紀」とあるが、
誇大広告だ。
褒めてあげたいのは山々なのだが、あんまりにもイメージがね、
へー凡だよ。
タイトルがおもしろいな、と思って、SFってこともあり、SF好きな
ので手に取ったが、うどん、というのはキツネ憑きの犬のことなん
だよね、ダジャレ? って思うよね。なんだか興がそがれた。
古本だったが、売った人も読んでなかったね。
「シキ零レイ零 ミドリ荘」
「うどん、キツネつきの」で、ひどいことを書いてしまったのであれ
なんだが、すごくおもしろかった。「うどん~」より自由な発想で書
かれていて、ユニークだし、羽ばたいたって感じだ。
ちゃんとSFしているし、キャラが立っている。日常の中にSF的要素を
溶け込ませるっていうのがこの人の手法なのだな、と納得。
滑稽感というか、マンガっぽい感じが星新一氏を彷彿とさせる。ただ、
手法は全く違う。いや、この人は相当すごいぞ、と思ってしまった。
……合掌。
角川文庫 2007年
総勢36名の作家によるいろいろなシチュエーションの手紙。
短いので、ちょっと読むのにぴったり、薄いし。さすがプロ
と名の付く人たちは手紙を書かせても巧い。
苦情の手紙、頼みごとの手紙など大いに勉強になる。褒めたり、
下手にでたりしつつ。本丸を言うっていうのが定石のようだ。
「豚の報い」っていうばっちい小説で芥川賞を獲られた又吉栄喜
氏は、それ以降消えてしまった、と思っていたが、略歴を見ると
どうやら多数作品を発表されているようで、ぼくが知らないだけ
だった。
ぼくが一番記憶に残ったのは、歌野晶午氏の天国の兄に一筆啓上、
これはヒキョウとも言える小説仕立ての手紙で、3Pの中にミステ
リー的な物語が凝集していて、おもしろかった。……合掌。