古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

雨    安岡章太郎

2024-12-11 01:25:16 | 小説の紹介

ぼくは、このブログを部活とおもって、更新

 

しているし、読書の蔵書メモとしてつかおうと

 

おもってやっている。

 

最近は書評スキルが若干、矛先が鈍って来ている

 

感じがしないでもないな、と感じている。

 

今日は、安岡章太郎氏の雨と云う短編です。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

雨の多い街で、そこは新宿らしいのだが、刃物屋に

 

寄り、鉈を買った。なけなしのおカネ、四百円を払い

 

レインコートの内側に吊り下げている。どこかで、鉈を

 

振るい、強盗を働こうとするのだが、電気屋さんに間違

 

えられたりしてうまくいかない。公園で男に会うが、どうも

 

ヘンで、どうもいかんですぞ、などと口走って、全くなって

 

いない。

 

そのうち、その男は弁当を食べ始め、警官に問い詰められても、

 

「これでは帰れない」と何度も口遊んでいるばかりだった。

 

ぼくの中の安岡氏の作品のイメージはこの作品のシュールな

 

感じだと思う。

 

まったくナンセンスでシュールレアリズム感が漂ういい

 

作品だった。

 

(読了日 2024年11・24(日)20:05)

                 (鶴岡 卓哉)

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蛾   安岡章太郎

2024-12-07 05:52:04 | 小説の紹介

新潮文庫 昭和三十四年

 

実に、それは不思議なことであった、とはじまる

 

短編。脊椎が、どうやらおかしい、と云う主人公

 

の耳に蛾が入り込み、うごく度にバタバタと気も

 

狂わんばかりに、気狂い踊りを踊るようになって

 

ちょっとヘンな軍上がりの医師のやっている病院

 

のことが出て来て、ぼくは中盤では、ほんとは蛾

 

なんか入り込んでいなくて、気が狂ったのではないか、

 

と思った。一昨日後、そのヘンな病院に行き、あまりに

 

くだらな過ぎる、と書いてあるが、ボール紙の筒と

 

懐中電灯を妻のさち子に運ばせ、蛾を取り出した。それ

 

は足元でひくひくとうごいていた。

 

(読了日 2024年11・22(金)15:15)

                 (鶴岡 卓哉)

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宿題  安岡章太郎

2024-12-06 03:36:37 | 小説の紹介

新潮文庫  昭和三十四年

 

弘前の小学校から東京・青山の南学校へ転校

 

したあと、その生活態度を描く。

 

ぼくは小学校、中学校、高校と埼玉にいて、転校

 

したことは一度としてない。

 

どっちかと言うと定住型の癖がついたのは、そういう

 

経緯があってのことなのかもしれない。一軒家だったし、

 

貧乏だったが、飢えるほどではなかった。

 

友達もうちにメシを食べに来ていたりした。Kと云う

 

友達はエンゲル係数すごいもんな、おまえんち、と

 

平気で言っていた。そのことで、ぼくは怒ったりは、

 

ぜんぜんしなかった。ぼくは学生時代、怒ったことなんて

 

一度としてなかったように思う。

 

いや、小学生の時は取っ組み合いのケンカをよく致して

 

いたか。

 

この宿題だが、夏休みの宿題が十数冊出ていて、結局、

 

やらず、夏休み最後の日に祭りでハハにやっていない

 

ことを喋ってしまい、徹夜で答えをでたらめに埋めていく。

 

そして、始業式の日、宿題をやってこなかった者、と

 

先生は言って、数人が立ち、ハハと死のう、とまで言ったのに

 

咎めなしというオチの話しだった。

 

(読了日 2024年11・22(金)3:05)

               (鶴岡 卓哉)

 

 

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黄色い日日  梅崎春生

2024-12-04 05:05:30 | 小説の紹介

新潮文庫 「桜島・日の果て」所収。

 

昭和二十四年

 

黄色い日日の黄色とは黄疸(おうだん)である。

 

最近では聞かなくなった気がする病名だが、戦後の

 

ころには多かったようだ。

 

蜆(しじみ)が効くようで、ここでも蜆が登場する。

 

知り合いにそそのかされてか、強盗して、その顛末の

 

処理する様、闘鶏の話など、すべてが病んでいる。

 

それは栄養不良からくる病なのか。人々に正常とは

 

ほど遠いものを感じる。ときに、それは悪であったり、

 

それに類する事柄なのだろう。

 

人々は混乱し、憔悴し、辟易している。

 

まったく、人として生きるのが困難な社会でひとは

 

ひととして生きて行くことの模索をしている。

 

梅崎氏を読んで思ったのは、最近の作家の文章力のなさ、

 

単純さ故のアホらしさだろう。まるでバカが書いたようで

 

あると思われても仕方のないことなのかもしれない。

 

でも、我々は我々で、それでも取り敢えずは頑張っては

 

いるのですよ、春生様。  

 

(読了日 2024年11・21(木)0:47)

                (鶴岡 卓哉)

 

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海辺の光景 安岡章太郎

2024-12-03 04:04:49 | 小説の紹介

新潮文庫  昭和四十年

 

狂いつつあり、そして、狂ってしまい精神病院

 

に入れられてしまった母に捧げるバラード。

 

人が狂っていくのを見るのは辛いだろう。それが、

 

母となると、これはもう耐えられないほど

 

辛かろう。

 

看護人が手製のジュースをやり、それが死に水

 

となり、亡くなってしまう。いったい、わしは何

 

を読ませられとるんだろう、ツラいだけやないかい。

 

いったい、なんの意味があるのだろう。イヤなだけだし

 

イヤなものを読ませられている、と云う想いのみに

 

陥ってしまう。それでも、それが文学というもの

 

すごさなのだ。

 

彼(安岡氏)は、もっと身を切るような思いを

 

されたのだ。ぼくらはもっと忘れてしまっている

 

人間の深みを知らなければならないだろう、と思った。

 

(読了日 11・20(水)14:29)

           (鶴岡 卓哉)

 

 

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お笑い・考+蜆(しじみ) 梅崎春生

2024-12-01 05:43:12 | 小説の紹介

ぼくの考えるとこ、お笑いっていうのものは

 

差別を笑う、っていうのは、定説になっている

 

と思うんだけど。ぼくは差別に嫌悪感を抱いてお

 

り、いまのお笑いのあげあし取りみたいな笑いは

 

あまり好かんね。そういうことがお笑いのひとつ

 

の終焉の原因でもあり、TV界凋落のひとつの根本

 

原因であると思う。

 

そういうぼくはかなりのTVウオッチャーであり、

 

ハハも亡くなった祖母もすごくTVは好きでしたね。

 

TVとお笑いは切り離せない関係にあるとは思うが、

 

お笑い芸人がいなくてもTVは充分成立しうるとも思

 

うんだけどね。

 

まあ、そんなことをつらつらと考えておったわけですよ。

 

今日は蜆と云う短編の寸評です。

 

蜆(しじみ) 梅崎春生

 

「何を小刻みに動いているんんだ」とその男が話しかける

 

ところから、この短編は形成されていく。

 

そして、その男は外套を要るならやるよ、と主人公に

 

やってしまう。とても寒い夜で、酔いもほどほどに醒めて来

 

ている。度々、男と会うことになるが、男は外套を追い剥ぎ

 

のように奪い取ることになり、こんな話をする、戦中か戦後す

 

ぐの頃か列車に乗っていて、若い女が満員の列車の栓になって

 

いて、あるおっさんが身代わりになり、栓になった。その

 

おっさんは落っこちた、という。ぼくもそこで、声を立てて

 

笑ったのだが、作中の男も腹を捩らせて笑ったと云うのだ。

 

なんかよう分からんが、列車の中の誰もが他人のその不幸を

 

笑ったという。この男は、不幸になった分だけ誰かは幸せ

 

になる、という仮説を立てる。確かにそうかも知れぬ、と

 

単純なぼくも思う。その男の持っていたリュックはとても

 

重く、何度も捨てようと思ったと言うが、家に持って帰った。

 

その男にも妻がおり、大抵、そんな男の妻は不出来だ。

 

夜に、音がしているので、何を舐めているのだ、と寝ている

 

妻に言うと、いや、舐めていない、と言う。その音はリュックに

 

入っている大量の蜆が鳴いていたのだ。

 

それを闇市でか、男は売り払い、ちょっとしたおカネを手にし、

 

それを元手にまた蜆を買って売った帰りに主人公と会い、

 

外套を古物商に売りに行こうと思う、と言う。

 

その外套の釦(ボタン)はその男の祖父の撃った鹿の骨で

 

出来ていて、主人公はそれを失敬したが、子供にしばらく

 

してやってしまい、子供はそれをおはじきに見立て遊んでい

 

たらしいが、最近は見ないと云う。

 

(読了日 2024年11・18(月)21:40)

                  (鶴岡卓哉)  

 

 

 

 

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崖 梅崎春生

2024-11-30 08:50:19 | 小説の紹介

新潮文庫 昭和二十六年

 

この短編で、重要なモチーフとなっている崖で

 

あるが、ストーリー上でも重要である。

 

暗号解読係の主人公が、なくなった暗号書をネッ

 

チングの羽目板に見つける。

 

それを、山芋掘りに誘った加納、暗号書がなくな

 

ると、いつもいじめてくる上司が殴られることを

 

計算して、隠したと思われる張本人。その加納に

 

不意に、ネッチングの羽目板にあったことを冗談

 

めかして言うと、崖から突き落とされ、そして、

 

危ういところを救われる。本当に加納は主人公を

 

殺害しようとしたのだろうか?

 

それにしても、この短編とは、関係ないが、読むのが

 

遅すぎて、飽きてしまう、という問題が起こって来て

 

いる。ハハにそう言うと、そういう時は斜め読みする

 

のよ、と平気な顔をして言うのだ。

 

ぼくには、そういう芸当は出来ない。そう言われたこ

 

とで、天邪鬼(あまのじゃく)のぼくは集中して読む

 

ことが出来た。

 

(読了日 2024年11・17(日)21:30)

               (鶴岡 卓哉)

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日の果て  梅崎春生

2024-11-29 01:45:29 | 小説の紹介

新潮文庫 昭和二十六年

 

WWⅡの戦時下での男たちの葛藤を描く。

 

隊から離れ、逃亡し、女をつるんで逃げている

 

花田。それを追う宇治中尉と高城伍長。

 

文学的に優れていて、文学的表現に溢れて

 

いる。

 

ラストの撃ち合いになる場面ひとつとっ

 

ても、そこは、直截表現するのはではなく、

 

文学的処理が為されている。

 

この中編を読まれる方はおられるのだろうか。

 

それなら、ネタバレはしない方がいいのかな。

 

文豪と云われる作家に手による究極の戦争

 

小説をこの度拝読して、死と云うものの扱い

 

方が非日常として、ある意味、軽く扱われ

 

ている。このことの怖さを是非堪能していただき

 

たいと思った。

 

(読了日 2024年11・14(木)16:00)

                 (鶴岡 卓哉)

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桜島  梅崎春生

2024-11-28 01:41:13 | 小説の紹介

新潮文庫  昭和二十六年

 

美しく死ぬ、と云う言葉を胸に刻んだ村上兵曹。

 

終戦を島で迎え、その玉音放送も雑音が激しく

 

直截は聞けなかった。我々は本土決戦をする、

 

と上司の男は意気巻き、臆病者をぶった切る、と

 

豪語したあと、あのラジオは、終戦の放送でした、

 

と云うちょっとコントかよ、っていうほどのオチ。

 

でもなあ、本土決戦も覚悟していたのに調子狂うよ

 

っていう想いはあっただろうね。

 

さすが、文豪梅崎氏だけに、光る文章も多く、文体

 

もしっかりとしていて、これぞ、戦争文学って感じ

 

だった。

 

死ぬまで生きる、美しく死ぬ、昔日の日本人のもっ

 

ていた生きると云うことや、死についての意義が

 

垣間見えて、人間の根源をついた作品となっている。

 

(読了日 2024年11月10日(日)23:40)

                (鶴岡 卓哉)

 

 

 

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旱魃(かんばつ)世界   J・G・バラード

2024-11-17 01:45:09 | 小説の紹介

山田和子・訳 創元SF文庫 1965年

 

破滅三部作の一角を成す、街が燃えてしまう

 

「燃える世界」を改変した完全版。

 

マネキン、白いライオン、炎、両性具有などの

 

終末をイメージさせる、想像力に富んだ、ディス

 

トピア小説。

 

J・G・バラードと云う人の小説を一度読んでみたい

 

と思っていたら、偶然、手に入ったので、熟読した。

 

SF的に顕著な文章で、手のひらから零れ落ちていくような

 

感じだが、それも次第に心地よくなってくる。

 

ああ、こんな世界がリアルに来たら、イヤだなあ、と

 

思考しつつ、ラストにはひと筋の希望が射したので、

 

おう、と唸った。いつかは滅ぶだろう、この地球上に

 

住む人間の儚さ、愚かさ、が滲み出ていた。

 

(読了日 2024年10・26(土)12:30)

                 (鶴岡 卓哉)

 

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