古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

活字と僕とー年少の読者に贈るー  江戸川乱歩

2024-12-31 01:21:55 | 本の紹介

「素敵な活字中毒者」所収。 昭和十一年

 

活字を愛する余り、少年時代に活字を買いに文字

 

通り走っていたと云う。あぁ、ぼくだって負けない

 

くらい活字が好きなのだ、と喝采を挙げたくなる。

 

「少年世界」と「日本少年」と「少年」と云う

 

雑誌があって、それぞれ特徴があって、「少年世界」

 

は毎号小波山人がおとぎ話を執筆していたと云う。

 

押川春浪、江見小蔭の名も踊り、当時のことがイキイキと

 

描かれてゆく。ポオやドイルの探偵小説を愛読し、古本屋

 

も開業していたと云う。

 

そして、小説家となることによって活字そのものと結婚

 

してしまった、と云うことだ。今の時代、直ぐにプリンターで

 

活字めいたものを印刷できるが、やはり、活字とはちと

 

違う。水に濡れても滲まない活字にすごい僕は憧れを抱い

 

ている。

 

(読了日 2024年12・2(月)20:20)

                (鶴岡 卓哉)

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古書商・頑冥堂主人   開高健

2024-12-30 03:11:38 | 開高健

「素敵な活字中毒者」所収。 昭和三十九年

 

「週刊・朝日」に発表後、「ずばり東京」(昭和四十九年)

 

に収録。ぼくも読んだはずであるが、全く失念していた内容

 

でした。

 

若き日の大兄の文章であると思うが、若書きでもなく、古書世

 

界がイキイキと赤裸々に描かれて行く。

 

古本屋が神田界隈にざっと百軒近くあったらしい、と今もあるかも

 

しれない。

 

思えば、日本は識字率はほぼ百パーセントだから、皆、本は

 

読めるわけであり、万人共通の趣味たり得るのだろう。

 

和本の扱いについて、言及していて、反町氏と云う人がその

 

和本界のシーザーと云うことだ。なんか、すごく日本的な

 

しきたりがあったりしそうで、面白いと思った。

 

(読了日 2024年12・2(月)2:42)

               (鶴岡 卓哉)

 

 

 

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本盗人   野呂邦暢

2024-12-29 02:54:29 | 小説の紹介

「素敵な活字中毒者」所収。 昭和五十三年

 

この野呂氏と云う人は残念なことに43歳で

 

亡くなっている。長崎生まれで、小説にも長崎と云う

 

ワードが出て来る。「草のつるぎ」で芥川賞を受賞さ

 

れている。「草のつるぎ」は読了済み。この短編は

 

「野性時代」に発表。「愛についてのデッサン」に

 

収録されていると云う。

 

この短編の主人公は古本屋の主人で、盗難に悩まされ

 

ている。それもすごく高価な本だ。赤いブレザーを着た

 

女の子が三日間入り浸り、最後の日に来た後に、「方丈記」

 

が棚に戻されていた。郵便局で会い、他の三冊も送ろうとし

 

たところに出くわしたのだ。本人ではなく、男友達がしたこと

 

だろう。その男友達に激しい嫉妬を感じる啓介であった。

 

うーん、この本、ハズレなしかあ、さすがシーナさん、いい

 

短編ばかりである。

 

(読了日 2024年12・1(日)23:45)

                (鶴岡 卓哉)

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愛玩    安岡章太郎

2024-12-28 03:05:29 | 小説の紹介

新潮文庫  昭和三十四年

 

まだ母も父も元気だった頃の話だ。ウサギのアンゴラの

 

毛を獲りたいがために買い始め、家中がすっちゃかめっちゃか

 

になっていくと云う。ミミズ、ナメクジのたぐいがおびただしく

 

棲息している、と云うのだから、気持ちが悪くなってしまう。

 

父は恨めしそうな目でぼくの毛を欲しそうにしている。

 

そのうち、アンゴラの毛の人気もなくなってしまい、ウサギは

 

食肉のソーセージの業者の指に噛み付いたりしつつ、売られて

 

ゆくことになる。赤貧洗うが如き、貧しさの中で、人生を

 

足掻いていたのは、ある意味幸せであったと云える時期

 

なのかもしれない、と思わせる。

 

(読了日 2024年12・1(日)22:45)

                (鶴岡 卓哉)

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ジングル・ベル   安岡章太郎

2024-12-27 01:41:43 | 小説の紹介

新潮文庫   昭和三十四年

 

未だ戦後といっていいような頃、ジャングル・ジム

 

だけ新しく、虚しく、高崎歩兵連隊初年兵の頃の軍曹

 

の掛け声を思い出させる。

 

へいっち、にっ、と云う拍子に合わせて、思わず、歩く

 

自分とは裏腹に街の喧騒はなんだか、実体なく、リアリ

 

ティーを感じられないのだろう。そして、「ウナドン」を

 

頼んでしまう。うなぎは嫌いなのに、なんでそう叫んだ

 

のか。無理やりに口に押し込み食べたものの、「三百円

 

頂きます」と非情な請求。悦子に会うために満員電車に

 

乗るも、「車内の空気にたまらなくなって」しまう。

 

電車は止まってしまい、「クタクタに疲れていた」僕は

 

悦子との待ち合わせ時間には間に合わない。渋谷に着いて

 

「クリスマスの夜、日本橋通りにはひと気が」なく、蜜柑を

 

三百円分買うも、それは大量で、いらないです、とも言えず、

 

彼女に電話すると、駅で会った見知らぬ男とダンスホール

 

など引き回され、多量に酒など飲まされたという。

 

電話を切ったあとになって、「僕」は女の裏切りに気づき、

 

燃え立つ怒りの中で、親父の就職運動で立ち回るのがバカバカ

 

しくなってきた。と云うような、大体に於いて、こういう

 

話しだ。奇妙な感じも漂いつつ、リアリティーもある、と云う

 

ものだった。

 

(読了日 2024年12・1(日)21:55)

                (鶴岡 卓哉)

 

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書痴論  紀田順一郎

2024-12-26 02:03:17 | 本の紹介

夕飯に、おでんと赤飯を食べて、その後、

 

駅前のゆめタウンまで歩いて、パン屋の

 

プチで巻いてあるアップルのパンとぶど

 

うパンを買い求めた、お腹がすごく減って

 

来たので、誰もいない淋し気な駐車場の

 

細い階段の陰でもさもさと巻いてあるパン

 

を食べてしまった。ナイス! にもより、

 

ゆめタウンより、どん兵衛が安かったかあ、

 

と逡巡しつつ、天ぷらそばどん兵衛を買った。

 

川沿いを帰っていた時、振り返ると、ひと筋の

 

流星のように新幹線が走って行った。

 

今日は、書痴論ですよ。紀田順一郎氏、いっちゃっ

 

てください(矢追純一風に)。

 

ーーーーーーーーーーー

 

「素敵な活字中毒者」所収。 昭和五十二年

 

神奈川の横浜生まれ。その活動は旺盛な知的好奇心

 

に支えられ、出版論、読書論に及び、ミステリー小説

 

の分野でも活躍。この短編では、書痴とは病理である、

 

と云うようなことが書いてある。昨今の本を集めてい

 

るだけの人に疑問を呈している。まだ、ご健在で90歳

 

近くになるのであろうか。蒐集本の第一条件は、鹿島

 

茂氏によると、長寿と云うことだから、実践されている

 

らしい。

 

(読了日 2024年11・30(土)10:06)

                (鶴岡 卓哉)

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讀書について 小林秀雄+日記

2024-12-25 03:54:39 | 本の紹介

今日はクリスマス・イブでした。夕飯に、ホワイト

 

シチューの饂飩を食べて、散歩に行って、教会の保

 

育園の前で急に走りたくなって、走って、アルゾに

 

行って、買い物したら、財布がなくて、家に忘れて

 

来たと思って、家に戻ると、バイクが停まっている。

 

そのひとが、エホバの証人のひとで、財布を届けて

 

来てくれた。走った時、落としたらしい。お礼を言い、

 

アルゾで買い物をした。明日、その人に、なんか持

 

って行こうかな。クリスマスにエホバの証人、っていう

 

ちょっと不思議な話しでした。

 

今日も、レビューやりますよ。讀書について、と云う

 

小林秀雄氏のものです。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

乱読こそ読書の神髄だと語る。読むのにも技術

 

がいる。読むのにも工夫がいる。或る作家の全集

 

を読むのは非常にいいことらしい。読書の楽しみ

 

の源泉にはいつも「文は人なり」と云う言葉があり、

 

この言葉を理解する為には全集を読むのがいいと云う。

 

手探りしている内に、作家に巡り合うのだそうだ。

 

ほんの片言隻句にも、その作家の人間全部が感じら

 

れてくる。これが、「文が人なり」の真実だと、

 

大雑把に言うとそうなる。

 

読め、ゆっくりと読め。成り行きに任せ給え。

 

速読は、ぼくは受験の為のものだ、と思っている。

 

普段の読書でそれをやるのは実に馬鹿げている。

 

飛ばし読みも馬鹿げている。作家を愚弄している

 

としか思えない。それなら、いっそのこと、読ま

 

なければいいのだ。読まない方がまだ潔くて、良い。

 

読書と云うのは、なかなかにして、辛くもあり、楽

 

しくもあるものなのである。

 

長くなりました。これで、おいとまします。

 

(読了日 2024年11・28(木)23:10)

                 (鶴岡 卓哉)

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秘密   安岡章太郎

2024-12-24 01:35:15 | 本の紹介

年末になって来て、心なしか忙しなくなって

 

来ました。ぼくは、今日はケンタッキーに寄

 

って、2ピースセットを所望して、摂取して

 

来ました。あの、なんとも、オリジナルな味付

 

けが堪りませんです。

 

今日は、安岡章太郎氏の短篇、秘密です。

 

さあ、いってみよぉ(いかりや長介風に)。

ーーーーーーーー

この秘密と題された、勝鬨(かちどき)橋を

 

モチーフにしたタコの出て来る小説と似たものを

 

三島由紀夫氏の作品の中にあったと思っていた。

 

いや、これはもしかすると、ふたりの作家が似て

 

いるモチーフを扱ってしまったのかも知れない。

 

タコと勝鬨橋と云うものの妖しさ、すっとんきょうな

 

感じは、今はもう行われなくなったが、開閉すると

 

云う特徴の中にあるのかもしれない。

 

正直、この秘密、いいたいことは良く分からないが、

 

なんか妙なおもしろみと云うものを如実に感じるのだ。

 

(読了日 2024年11・27(水)22:45)

                 (鶴岡 卓哉)

 

新潮文庫    昭和四十年

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大衆小説に関する思い出 鶴見俊輔

2024-12-23 04:50:02 | 本の紹介

「素敵な活字中毒者」椎名誠・選 所収。 集英社文庫

 

昭和十七年

 

ぼくはこの鶴見氏と云うお名前を存じ上げなかった。

 

自身、小学生の頃に、毎日4円の大衆小説を読んでい

 

たことが読書歴の始まりだという。

 

父は政治家の裕輔氏だと云うことなので、自宅には本が

 

たくさんあったのだろう。

 

目を悪くしたので、大人になってからは、あまり読書は

 

していないと云う。今では大衆小説は純文学とあまり

 

変わらなくなってしまったように感じる。

 

純文学が大衆小説化してしまっていると感じる。

 

この8P余りの短いエッセイは、「女性改造」に昭和

 

十七年に発表され、「読書のすすめ」に昭和五十四年に

 

収録されたと云うことだ。

 

(読了日 2024年11・27(水)22:08)

                (鶴岡 卓哉)

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行きつけの   井上ひさし

2024-12-22 10:40:09 | 本の紹介

「素敵な活字中毒者」椎名誠・選 集英社文庫

 

昭和五十三年

 

こういう色々な作家を紹介できるとは、なかなかにして

 

幸甚である。

 

井上氏は山形県生まれ、上智大に行って、在学中より

 

テレビの懸賞ドラマなどに入選。「ひょっこり

 

ひょたん島」を手掛けた。小説「手鏡心中」で直木賞

 

を受賞されている。

 

ここに載っているのは4P余り。「週刊文春」の

 

「本の枕草子」に収録。

 

本屋の行きつけについて書いている。ぼくには、アカデミイ

 

書店と云う古本屋の行きつけがあり、けっこう広島では

 

有名なところだ。二か所あり、金座街店と本通り店がある。

 

行くと、やはり、面白い本があり、そこで、仕入れる本ばかり

 

である。店員が2、3名の本屋が行きつけにはよろしく、

 

十名以上はスーパーだと云う。

 

ひさし氏は2010年4.9。75歳で亡くなっている。RIP。

 

(読了日 2024年11・27(水)21:40)

                 (鶴岡 卓哉)

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