古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

食卓のつぶやき     池波正太郎

2016-10-30 10:57:12 | 池波正太郎
朝日文庫。


幼年時のお弁当の想いで、青年期の戦時中の事や


、フランス、インドネシアで過ごした旅行の日々


を描く。池波氏は気功学に執心してらしたらしい。


二黒土星の女性のことをえらく褒めておられる。


湯布院を大層気に入っておられたが、魔の手が伸


びたと書く。今、どうなっているのだろうか。美


食家として知られた池波氏の身辺雑記ともとれる。


新国劇にも関わっておられたようである。
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いつか汽笛を鳴らして    畑山 博

2016-10-28 09:29:47 | 小説の紹介
第67回昭和四十七年上半期。


みつ口がコンプレックスの河上が学校で飼っている


クジャクを殺した朝鮮人に心の傷を負い、大人にな


っても朝鮮人に失恋したり、精神的弱者を描いた作


品と受け取った。日本の社会では畸形は疎んじられ


る。文學は常に少数派のためにあらねばならない。


強いものに反旗を翻してこその革命である。常に文


學を志す者は何が正しいのかを見極めなくてはなら


ないだろう。そして、正しいと信じた道をひたすら


突き進むのである。


畑山氏は2001年に亡くなっている。
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あの頃の事    宇野浩二

2016-10-27 10:18:44 | 小説の紹介
(子を貸し屋、所収)新潮文庫。


必至に文学修業のつもりでもって書いた原稿を


買い取ってもらえず、憤懣やるかたなく、指を


1,2,3、と折って数えて怒りを抑える。何


て人間臭いんだろう。所謂貧乏小説の王道であ


るが、そこには確かに生活がある。どんな哲学


より、経済学より生活が大事である。生活あっ


ての芸術であるが、生活が文藝として高められ


ている限り、そこには生活以上のなにかがある


はずだと思えるだろう。貧乏小説ファンはとし


ては近頃、文藝にまで高められた貧乏小説がな


かなか出にくくなっているのかな、という気が


します。僕はいつか貧乏小説をものにしてみた


いですな(-_-;)



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春の草   石川利光

2016-10-26 11:35:28 | 小説の紹介
№183

第二十五回上半期。


京口という男の世の浮草を文学的に



描いた作品と受け取った。ひとつひ


とつのエピソードは奇抜でだらしな


い感じが、昭和を感じさせる。全体


的に暗いと僕は思ったのだが、新鮮


なレモンという評にはちょっと驚い


た。先生方はそういう感じ方をする


のかと。でも、堕胎に対して、新鮮


なレモンという評もちょっとねエ。


というわけで、世間話を優秀な文


学的技量で処理するとこうなる、と


いうのを見せていただいた。
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誰かが触った   宮原昭夫

2016-10-23 10:06:20 | 小説の紹介
№182


第67回昭和四十七年下半期


ハンセン氏病療養所のことが書いてある。ハンセン氏病は



伝染力もなく、隔離は必要ないらしいが、その容姿から、


その当時はまだ存在してたらしい。


爽やかなタッチで軽快に書かれていて、とても読みやす


く、気持ちの良い作品である。tvで見たが、舌読と言


って、目も手の先も不自由なので舌の先で読むそうだ。


それも血だらけになって読むという。この作品ではそこ



までは踏み込んでいない。
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人心     宇野浩二

2016-10-22 10:51:45 | 小説の紹介
№181


新潮文庫



小説家を志している男が、ヒステリー持ちの元女房に


手を焼いていたが、後に自殺。つぎにゆめ子という子


持ちの芸者に入れあげる。屑屋に居候して、小説を一


年かけて書き上げ、最後には名を上げるようである。


その様が色々なエピソードを交えて語られる。旧仮


名遣いなので、すらすらとは読めない、が、その感


じが逆に面白く、ゆっくりと味わって読めるので、


好きであった。子供についての説も、ちょっと口



説かったが、おもしろく読んだ。ゆめ子は今度女の


子を産んだら男の子をあげましょう、というのだ。





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梅雨の頃    吉行淳之介

2016-10-20 10:06:19 | 小説の紹介
№180


吉行淳之介全集6 (昭和31年7月「文學界」)


10pの短編。一郎、中学生の時に腸チフスに


かかったことを描いている。地味な作品だが、


それだけに味があって、渋い作品である。父と子


というテーマも加わっている。チフスは治るが、


父は死んでしまう。保険金は親子の賭けで入って


いて入るが、借金を返すので消えてしまったとい


う。
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夏のかけら    鶴岡  卓哉

2016-10-19 13:16:05 | ポエム



夏のかけら



夏のチケットをもぎり、搭乗したシーズン



もう間に合わせの天ぷらではなく


血の湧きたつ夕方に吸血鬼たちは


踊り騒ぎ、満月に吠えた


雑草のわきにうずくまり


ゴミ箱もなく、君はどこに捨てるのか?


その夏のかけらを


           (2016   9・1)」
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異邦人     辻亮一

2016-10-18 16:39:19 | 小説の紹介
№178


第二十三回昭和25年上半期。



日本人として、木枯国人となり、共産主義の


国で労働者として働く姿を描く。それにして


も、思想とはここで描かれている便所掃除の


如くバッチイものか、と思ってしまう。その


バッチサは糞尿譚の比ではない。働くという



こと、そして、どんなところでも懸命にやっ



ていれば、道は拓けてくる、というメッセ



ージは確かに受け取った。


この作品ともういっさくしか人生で書かれな



かったらしい。実に二作のみとは、それはそ



れで深い苦悩もあったでしょうが、おもしろ



い気がする。貴重な一文一文だった。
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わたしのグランパ   筒井康隆 

2016-10-18 16:37:59 | 小説の紹介
№179


文春文庫。



ムショに入っていたおじいちゃんが十五年ぶりに


娑婆に出てきて、孫娘との思い出深い日々を過ご


すという話しである。やたらとヤクザが出てくる


が。設定の頃は88年か、バブル期で、地上げ屋な



どがモチーフとして出てくる。グランパは狡猾に



立ち回り、いろいろやらかす。そこらへんも読み



どころなのだが。その背景に校内暴力やいじめな



どの時事問題も的確に挟み込んでくる。2h20



mくらいで読み終わってしまったが……充実した内



容だった。いつも筒井作品には驚かされる。
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