集英社文庫 1994年
さくらさんのいきものについての思い出が綴られている。
冒頭、アオムシからおはなしははじまる。
ぼくはムシのなかでもイモムシ系がキライだ。この前、TV
を見ていたら、かわいらしい女子アナが手の上に乗せたうね
うね動いているアオムシを口の中に放り込んで、無表情で
食っちまった。ただ、怖いと思った。おとなしそうな女が
急に踊りだしたりするのにも、恐怖を感じるが、アオムシを
食う女も怖い。それもかわいらしい女というのが怖い。
ぼくが5、6歳のころ、保育園の帰りにペットショップ
があって、良く寄って帰っていた。イシガメらしきカメがいて
普段、ものを欲しがったりしないぼくが、どうしても欲しい
と言ったので、ハハは買ってくれた。なにせ、5,6歳だ。
二、三日すると忘れてしまった。三か月ほどして、どうしたかな、
と思ったら、亀は万年というしな、と思いつつ、のぞくと
バラバラの死骸になっていた。甲羅だけ立派に残っていた。子供
心に酷いことをしてしまった、と思った。心に傷ができた人生初の
出来事だったように思う。
(読了日 2022年12・28(水) 3:34)