古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

石の蝶       津村節子

2018-03-31 10:31:25 | 津村節子
集英社文庫   1970年。



父は飲んだくれて、母は蒸発…………のこされたのは知能遅れの


妹と肺病やみの弟。一家心中しようとするところを吉原に売


られることに…………。


津村女史の離れ業的なストーリーテリングで、飽かさずにさよは


描き出されていく。


これは女の物語であり、人間の物語だ。


女というものの怖さ、遊女になってしまったというか、ひとつの


ホステスとか、そういった現代にも通じるものだと思う。


水商売を一日でもやってしまったら、一生それは体に染みついて



しまうと言う。



さよは一年八ヶ月で魂までも売り飛ばしてしまった。


涙なくして、読めない、この心の躍動が、時代を超えて伝わっ


てきた。
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たべもの芳名録   神吉拓郎

2018-03-30 09:54:59 | 小説の紹介
新潮社   昭和54年。



サラダは水っぽくて食べられたもんじゃない、という。食通らしい


意見だ。昔の人はこういう見方をするのか、と玉子について書いて


あることを見て思ったり。


食について、24コの文章が載っている。どれも、読んでいて、おも



しろいし、ためになるものばかりである。


食についての取り組み方が検証できて、いいのでは?


小説として読むも良し、エッセイとしても、うまいものの話しとして


楽しめる。


大根の話しが印象に残って、ホタテの貝柱と大根プラスマヨネーズが


うまいと言っている。嫁に行く人は覚えておくと良い、とまで書いてあ


った。ボクは試してはいないが、確かにうまそうである、な。
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風に訊け2      開高健

2018-03-29 09:41:27 | 開高健
集英社    1985年。


一気に読まないで下さい、の説明の通り時間を半年くらいかけて


読んでみた。


開高師匠の豊かな写真も載っている。



開高師匠の懐の深さ、人間的な深淵を見せられる思いであり、ホン


トに頭のいい人だったのだな、と分かる。


晩年に書かれた仕事だが、実にエロも含め、深い。


ボクの座右の書である。
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文学がこんなにわかっていいかしら    高橋源一郎

2018-03-28 10:04:11 | 高橋源一郎
福武書店   1989年。


7h30mかけて一気読みしてしまった。ボクの小説の読み方


っていうのは、きっとTV的なんだろうなア、と思う。



蓮實先生のご本なんて、読んでもよく分からないだろうもの



も実に、よく分かる手法で解説して下さる、さすが、教授。


おカネになる文章があるとしたら、源一郎氏の文章はカネになる


文章だろうな。



尾辻克彦さんなんて、ボクが読んでも、ちんぷんかんぷんだが、



高橋教授の手にかかると実におもしろそうな作品になってゆく。



でも、実際、活き活きしていたのは別マのことを書いておられるときで、


輝いておられた。



やっぱり本質にお好きなのは乙女チックな少女マンガなのだろうな、と



推測する。そして、エロと。
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もの食う人びと     辺見庸

2018-03-27 10:26:25 | 本の紹介
角川文庫  1994年6月。



その当時、タイヘン話題になった本。出版されてから24年か、


社会情勢や背景は変転しつつも、ルポとして、文学として、ま


ったく古びていない。


チェルノブイリに潜入したルポは誰も怖くて、マネしようと


すら思わないし、福島とも微妙に重なってくる。ソマリアにだっ


てHIVや、今ではエボラとか恐ろしいし、病原菌がうようよ


している中をよく行ったなあ、と思う。一言言いたい……バカなの


か?…………君は。


食えると言うこと、カネさえ払えば何だって食えるのだから、この


日本という国は、いくら貧者が増えたとて、ソマリアほどじゃない。



働けば少なくとも食うことはできるし、バイト君でも、食えないもの


なんてあんまりないんじゃないのか。良い国である、ボクは飢えるのが


一番怖い。けど、飢える日も来ないとは限らないし、けっこう足音くらい


は聞こえてきているのかと思うと、薄ら怖い気持ちになってくるのだった。


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惑星Pー13の秘密      高橋源一郎

2018-03-24 09:46:15 | 小説の紹介
角川書店  平成2年。


我々は言語から自由にならない限り、文学というものを楽しめない


という矛盾を孕んだテーマに果敢に挑戦していっている。


ここでは、言語さえもが高橋氏の手によって、創造されてゆく。


常識も不条理もぶっ飛ばし、あらゆる領域を踏破してゆく。そこには



世界が横たわり、ボクらを心地良い文学体験へといざなってゆく。


ボクらはそこで、身をたゆたえ、源一郎ワールドに身を任せるだけで



良いのである!
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町長選挙       奥田英朗

2018-03-23 10:11:31 | 小説の紹介
文藝春秋 平成17年1月~平成18年1月「オール讀物」


おなじみの伊良部先生シリーズ。「空中ブランコ」で直木賞を受賞


してから、早14年、といっても、このシリーズを僕をボクが知った


のは昨年のことだからねえ。


もう全シリーズ読破しちゃいました、三冊ですね。



「オーナー」ではプロ野球のオーナー「ナベマン」について描かれ。


「アンポンマン」ではどこぞの会社の社長をもした、アンポンタンじ


ゃなく、安保さんを描く。



「カリスマ家業」では、44歳のおばさんなのに若作りの白木カオルの


苦悩をカラッと笑い飛ばす。



表題作の「町長選挙」では離島での選挙のカネのやりとりする様を描



きつつ、最後は棒取りという結果を見る。なぜか、ボクは読んでいて涙



ぐんでしまった。


心が弱っているのかしらん……?
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洋食セーヌ軒     神吉拓郎

2018-03-22 09:33:48 | 小説の紹介
新潮社   四季の味 昭和57年春号~昭和61年 夏号


食にまつわる小話を描く。日常には何も起きないのではない、常に



何かが起こっているのである。



いろいろな話しが、料理のエトセトラのように出てきて、どうぞ、


召し上がれ、と言っているようである。


実にいろいろな味わいが楽しめる。


実に上品な味わいばかりが揃っているようである。


(2018年 1.8)
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ブエノスアイレス午前零時       藤沢周

2018-03-21 09:26:33 | 小説の紹介
河出書房出版   98年。


新潟と福島の境にある「みのやホテル」で起こる宿泊客


とのできごとを描いている。


呆け老人が呟く、ブエノスアイレスで……というのがタイ


トルになっている。


呆け老人が上手に役割を果たしている。


なんてことのない話しだが、なにか、心に残る話しである。


ボワーッとしたなにかが確かに残った。


他に、屋上という97年に書かれたちょっと若書きのきらい


のある作品が載っている。



タイトル通り、スーパーらしきものの屋上の百円で乗れる


乗り物とかを直す係の派遣の男の姿を描いている。


ところどころにスゴく光るものがあって、さすがだな、と思わ


せる。


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ポラード病      吉村萬壱

2018-03-20 10:08:54 | 小説の紹介
文春文庫   2014年。


こんな戦慄すべき文学があるとは驚きだ。「恐怖」、「不安」


が常にまとい続け、この常識が常識でなくなってゆく。その



転換が、悪夢のような手さばきで描ききられてゆく。



この現実の日本という国と、この小説の中の、「海塚」という


架空の街が大栗恭子という頭を透過していっしょになり、突如



として、ボクらの前にポンと巨大な疑問符としておかれる。お


前は同調していやしないか? と。


ただひとつ気になったのは、同調したはずの恭子が、精神病院


らしきところに入って、その世界がとち狂っていると告白する


ところである。辻褄が合わないではないか。それならば、違う


形で告発させれば良かったのでは、と思えてくる。


すべては悪夢にしても整合性というものは説得力として必要な


のでは? ってことは、すべては恭子の妄想ってことか………それでは、


少しつまらないなあ。
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