古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

ショートショート集 ぺ   谷川俊太郎

2018-01-31 11:18:12 | 谷川俊太郎
講談社文庫   1982年。



1960年代前半に大半は書かれたらしい。世界



終末思想的なものから心象風景まで、詩的に切り



取って見せる。



情景が極めて鮮烈に思い描ける、それだけ、イメ


ージがしっかりとしているということである。



それぞれにオチがある。文章は骨太であるにも関わ



らず、繊細さを保っている、実に精巧に仕上がって


いる。
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現行零枚日記    小川洋子

2018-01-31 00:32:39 | 小川洋子
集英社。


苔料理を食べる。運動会荒らしをしたり、生活改善課


のR兄さんと作家のWさんと盆栽フェスティバルにい


ったり、温泉スパでおばさんにつけられ、八歳の娘



にそっくりだ、といわれたり、文学賞パーティーに



行き、荒らしを助けたり、暗唱クラブに思いを馳せ


たり、Tという町に行き、アートの祭典を見に行く


と、6人いたのが最後は二人になっていたりする。


あと、あらすじを書くのが得意なんだってさ。


小川女史自身のことを書いておるようで、そうじゃない。



ファンタジーっぽくもあるし、たぶんに小川女史って


不思議ちゃんなんだろうなあ、と思わせる。赤ちゃん



(新生児)を見に行くのかア、変わってるなあ、まあ、



創作なんだけどさあ。(そういったら、身もふたもな



いけどね。)
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最後の晩餐    開高健

2018-01-28 11:50:40 | 開高健
文春文庫  1979年。


開高氏は外見からしてうまそうなものを食って


いそうであった。あるいは、食欲というものを


コントロールできていなかったかにも見受けら


れる。



この書では文豪は味について、言葉の妙技を尽く


している。一読しても、それは果たして、どうい



うことであるのか、と一考せずにはおかない深い



表現である。味というのは、とにかく深淵である


らしいのである。


冒頭から、喫人で終わると宣言しておられる通り、


喫人(ハンニバル)でこの書は終わる。


行きつくところはそこか、と思うが、なんとなく



読んでいて、涙がにじんできてしまった。


究極において、人間を食わなくちゃならなくなっ


たとしても、僕はムリだと思う。死を選ぶだろう。


そこで生きても、あとの生を全うできないとしたら


死んだほうがましであるからだ。


開高氏は人肉を食べたかったのだろうか、と考えると


、どこかで食べてみたかったんだろうな、と思う 。



人が人を食う、共食いは、中国では当たり前だった


らしいけどねえ。



人の食欲についてありとあらゆる方面から考察を行い、



美味しい話しを読むのが好きなんだったら、よんだ


ほうがいいかもね、とだけ書いておく。
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向田邦子全集 新版8 エッセイ四 霊長類ヒト科動物図鑑

2018-01-27 11:03:55 | 向田邦子
文藝春秋。


ボクはこの「霊長類~」というタイトルは日本人という



枠組みを外して人間的スケールからみた人間本来の味と



いうか、性質をむき出しにさせようという、試みだと思う。


人間のしでかすこまかな失敗に目を向け、それをユーモア


にかえる。


それが向田作品における醍醐味である。いやー、これ、オ



レだけじゃなかったんだな、って感じである。それは、中



国人やアフリカ人だってあるはずじゃないの、と向田さん



はいうはずである。
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偶然の祝福    小川洋子

2018-01-26 10:43:54 | 小川洋子
角川文庫。


「失踪者たちの王国」では身の回りで疾走してゆく


、失われてゆく人たちを描く。「盗作」では、弟に


ついて描かれ、「エーデルワイス」でも主題は弟で



ある。「キリコさんの失敗」はお手伝いさんのキリ


コさんがツボを手違いで違うひとに渡してしまう話


しだ。川上弘美さんはこの話しが好きだという。


「蘇生」ではアナスタシアと名乗る老女が絡んでくる。


袋にたまる水によって、声を失う女性を描く、「涙腺


水晶結石症」。おれっちはこの雨に日に病気の犬と数カ月に


なる息子ととぼとぼと歩き、犬が動かなくなったところ


に颯爽と現れる獣医、というのがスゴクカッコよく思えた。


なんか感動的な趣さえある。サッと犬の病気を治してしま


うのが実にスマートに描かれているのだ。



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夜と陽炎   耳の物語2  開高健

2018-01-25 13:33:40 | 開高健
新潮文庫  昭和61年8月。


自身の体験をもう何度目かになるだろう、開高師匠の



口からきいたような錯覚に陥る。



その物語は、いつもぎりぎりのところにある自分から



語られた。そこにはいつも耳があり、耳によって触覚と



もとれる鋭敏な感覚でもって、ベトナム戦争も釣りも体験



されたようだ。戦争も釣りも闘いであるのか……平和と戦争


と対峙しているようで、極限においての経験という立脚地


にたてば、そこにはなにかしら共通点も見えてくるようで


ある。



そこには開高師匠がいて、耳があったということではないか。



たしかに、僕もそこにいたような気になってくるから、その



説得力たるや本物である。



手にやんわりと汗がにじんでいる自分が読後にいるのだった……。



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破れた繭  耳の物語1 開高健 

2018-01-24 12:18:07 | 開高健
新潮文庫  昭和61年8月


手書きと文豪の文体によって、読んでいて


リズムが産まれ、メロディが奏でられてゆ



くようである。



奥様に騙されたように書いているけれど、や



はり、愛してたんだろうなあ、と感じ入る次



第です。


焼け野原から復興した掘っ立て小屋でバクダン


というお酒をかッ食らっているお姿思い描けます。



子ども時代から二十歳くらいまでのことを



描いていて、その話しはどこかで読んだなあ、



と思っても、また違った角度から考察できて、



おもしろいです。



文学に迷っていた時代もあったのだな、と思う



と励みになる。



文学とはこうでなくちゃいけないねえ、などと



ほざく自分がいます。
  
                (鶴岡卓哉)
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悶絶スパイラル      三浦しをん

2018-01-23 10:25:16 | 三浦しをん
新潮文庫   2008年1月


マンガの名言日めくりをつくるとしたら、どんな名言



があるか、を考える。夜な夜な天丼求めて、街をさま



よう。砲丸投げをなぜはじめようとしたのかを憂い、



タクシーの運転手と雑談に耽る。



二番目にお待ちのお客様どうぞ、に疑問を感じ、鋭敏


な言語感覚を披露する。



キン〇キッズに感動し、その深さをほめたたえる。ゴミ



の出し方から世相を斬る女……それらがニュータイプの直



木賞作家といわれた、しをんさんです。
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向田邦子全集9  エッセイ五  夜中の薔薇

2018-01-21 10:49:40 | 向田邦子
若布の油いためはちょっとおいしそうである。若布を油でいため



かつぶしと醤油を入れるという。油が跳ねるので要注意だ。と再三



向田女史は注意する。


脚本の中に木を入れるのをためらうのは、おカネがかかるのもあるが



、大事なのは育ち大きくなるところにあり、それが怖くて書くことが



できない、と告白する。



寺内貫太郎の母では、そのキャラづくりの手が語られる。四十年代中



ごろに書かれたものらしいが、そのスタイルは確立されていて、文章



のキレも往年のものと変わりがない。



若書きと言ったものがないのである。このひとの好奇心が、そのスタ



イルを生んでいる、と思うのだが、きっとすぐに飽きちゃうんだろうな、


と思う。



読むのも、瞬時に読めてしまうし、飽きが来ることがない。




興味があっちに行ったり、こっちに行ったり忙しいひとなんだろうなあ、



ということをうかがわせる。




















































































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夢のような幸福   三浦しをん

2018-01-20 11:30:08 | 三浦しをん
新潮文庫。



松苗あけみ先生の装丁に男子たる僕ははひるんで


はしまうものの手に取ってみる。読めば、面白い


ことは分かっているのだ。


しかし、中身もボーイズラブ批評アリ、腐女子全開で



描き切る。


水着を選ぶ文章は、林望さんもリアリズムだと評する



ほど、その醜態はユーモアにあふれている。



僕には姉がいるが、こんな姉だったら、ちょっと厄介



だな、と思うが姉弟漫才ともいうべき会話描写は軽快で


ある。


旅をする場面も多いが、沖縄かア、いいなあ、と僕も旅し


た気分になれる……かなあ……?
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