古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

街角小走り日記    群ようこ

2019-01-31 14:54:34 | 群ようこ
新潮文庫  平成3年3月


原稿用紙三枚あまりのエッセイ100編。


脂がのるとはこのことをいうのではないか、つらつらと読んで


いると、うぷぷぷぷっ、と読み進んでしまい、あっという間に


終わる。


27年前というと、1992年か………ということは………って、


歳がバレるわ、って、このブログを続けて読んでくれてる人に


はバレバレだわ………とほほ。


とにかく、何に対しても、一家言ある。群さんの、その語り


口はなめらかで、毒を含んでいて、しかも、なんか優しい


ところもあるんですね。


短足というエッセイに、短足を隠すために早足で歩くってい


うのがあって、なるほど、と感心した。


これがこのエッセイのボクのベストだった。



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春、バーニーズで    吉田修一

2019-01-29 10:56:18 | 吉田修一
文春文庫     2004年11月


「都会的な」、「静謐」の漂う写真がのっている。


デビュー作「最後の息子」の続編ということだが、読んだはずの


それを失念していて、読んでいて、あっ、そうだったけなあ、オ


カマと暮らしていたんだっけなあ、となんとなく思い出した。


この小説の筒井のように、日常から逃げ出したくなることは、ボクは


間々ある。


このままカフェは開けずに遊んでしまおうと思ったり、歯磨きをせずに


済むんなら、やめてしまおう、とかさ。


8Hあけてしまって、日光の岩のくぼみに腕時計を嵌めて、それから


十五年後に、あるか見に行く。


大人になると、責任っていうのが重くのしかかってきて、それから、



逃亡したくなるんだよねえ。


けど、ボクは突然、北海道に行っちゃう、とかはしないタイプだけどねえ


………合掌。


                          (鶴岡卓哉)
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生きてるだけで、愛     本谷有希子

2019-01-27 06:30:20 | 本谷有希子
新潮文庫   平成18年7月


この人のこの手の作品はまさに「激情」、原色の「赤」である。


劇画タッチで次々に問題を起こし、読み手を飽きさせない。


この手の作品を苦手とする人も多いだろう。


好みを二分するだろうからだが、ボクはわりと好きで、ボクが


いかれているからか、その世界を割りとすんなりと理解できる。


装丁の赤く染まった富嶽36景の絵がこの作品を印象づける。


五千分の一秒を正確に描いた北斎のように、瞬間の沸点を確かに


描いて見せた、本谷女史の快心の一作。



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コンビニエンス物語    泉麻人・いとうせいこう

2019-01-25 10:51:23 | 泉麻人・いとうせいこう
新潮文庫   1987年~1989年


コンビニ草創期といえるだろう。始めの頃は表記が「コンビ」


か「コンビニエンス」。


ボクもあの頃、「コンビ二」に夢中になってたなあ、と思いだした。


ボクの頃は、すでに、「コンビニ」だった。


夢中になったのは、「ミニストップ」のソフトクリームね。夏中食っ


てたな。広島には、「ミニストップ」ないんだよねえ。


本書には、「広島」の「コンビ」も紹介されていて、「ドデカミン」と


いうやつ。


これは今でも広島で売っています。


広島にあるのは、「ファミマ」と「セブン」と「ローソン」と「ポプラ」


、「山崎」も。


あとがきの指摘にもあるとおり、今の「コンビニ」には個性というものは


なくなった。たしかに。どこに行っても大抵品揃えは一緒っていうのは当


たり前になった。



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そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります  川上未映子

2019-01-24 11:01:59 | 川上未映子
講談社文庫  2006年


あとがきまでしっかりと読んだ、直後になんかしらんが


目がうるうる、なんだろうこの感じ。


未映子さんは中学の時から働いていたそうだ、そういう


苦労話(おいおい、また君は美人の苦労話を信じるのか、


という声がどこからか聞こえてきそうだが、おれっちは


信じちゃうもんねえ)や、両親の流血のケンカ話など、


素顔が見えてくる。


サボコ、サボテンの話しも効いている。ボクはこういう


植物の話しがけっこう好きだ。


三浦しをんさんも育てている観葉植物がどうの、とエッセ


イで書いておられた。


未映子さんの「あはん」は、明らかに、ボクの書く気色の悪い


「あはん」とは違う。そこには女流文学の発芽としての瑞々し


い「あはん」があるのだ。

                    (鶴岡 卓哉)
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ハヅキさんのこと    川上弘美

2019-01-23 11:45:44 | 川上弘美
講談社文庫   2006年


ボクは恋愛小説ていうのは苦手の一つなのだが、この短編集


は受け入れられた。


ボクは度々、川上弘美のポップ文学としての側面に言及して


きたが、この作品も実にポップだ。


3分きっかりの曲のように、短くタイトで引き締まっていて、


後味が悪くない。さっぱりとしていて、実に口溶けが良い。


でも、川上文学にとって、ポップ文学ということだけが、特筆


すべきことではない。


いつも川上さんを読み、驚くのだ。


驚くことこそ、実に小説として、果たすべき、効能なのかもしれ


ない。
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絲的メイソウ   絲山秋子

2019-01-20 11:38:03 | 絲山秋子
ボクは、髪がないが、絲山さんは禿頭が好みだという。へえ。


タバコを60本吸って、コーヒーを十杯飲む。


本書でも、怒りが過剰だが、ちょっとイライラしすぎなんでは。


なんで、そんなことを怒るのか、わからないということにまで


怒っている。絲山さんは、腹が立つらしいんだな。


うーん、それで恋愛なんて、ムリなんじゃねえ? と十三年前


の絲山さんに言ってあげたい。どうせ捕まる相手なんて、碌な


相手じゃないよ、と。


それで、思想の排泄物的な絲山さんの脂がのっていた頃の本書は


けっこうおもしろいです。
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ごはんぐるり    西加奈子

2019-01-19 05:17:58 | 西加奈子
文春文庫    2013年


「珈琲儀式」で朝にコーヒーを淹れるのが習慣らしいが、そういわ


れてみると、ボクは、一日中コーヒーを淹れている気がする。


朝に入れて、昼に淹れて、夜寝る前に淹れる。


要するに、カフェイン中毒であるようだ、むむむ。


この前、秋山絲子のセネガルの北緯14度で、セネガルの料理は


おいしいって知っていたけど、あらためて、セネガル、良いです


ねえ。


「壇流クッキング」はボクも愛読書のひとつで、ホントにおいしい


日本を代表する本だと思いますですよ。



「食べる」ことについて摂食障害の喉の痛みに陥った27歳の作家


の小説も載っています。西さんの小説は「サラバ!」の上を読もう


として、子供が出てくるので断念したのですが、(ボクの文学NGは


犬、子供、です)。


このお作品は拝読いたしました。


さすが、文章うまいですね。


ただ、その読みやすさが、喉の痛さで辛いことがサラッと表現されす



ぎているきらいはありましたかね。読後感としてですけど。
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しあわせのねだん    角田光代

2019-01-18 02:35:26 | 角田光代
新潮文庫  平成17年8月



8時に仕事を始めて、五時に仕事を終えてって、それじゃ、OL


にでもなれよ! って思う。 


しかして、おカネがあれば、しあわせになれるか、という問いだが、


その反答として、おカネがなくて、不幸せになった者はたくさんいる、


というのがある。


おカネだけあっても、モノがなければ、買えないわけで、健康じゃなきゃ


使えないわけで。


現金を嫌う人もいるし、貯金などせん、という人もいる。


この作品集だが、最後の記憶9800円×2というのが引き立っている。


記憶というのは買えないように思うが、おカネで作ることができる、という


不思議な要素だ。


日光に行って、ボロホテルに泊まることになった顛末が描かれているが、そ


れが、ハハとのいい思い出になったという。


きっと、それは今では、角田さんにとって、一万九千六百円では買えない


貴重なものであるのだろう。
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かけがえのない贈り物 ままやと姉・向田邦子  向田和子

2019-01-17 08:04:05 | 向田和子
文春文庫   1997年平成6年8月


向田邦子さんが長女で和子さんは末っ子だという。


はじめは会社を辞して、喫茶店をはじめたらしい。


これで儲けたのか、味を占めて、ままやという小料理屋を


だすことになったという。


向田邦子プロデュースで、大分てこ入れしていたらしい。


おかげで大繁盛。


きっと、和子さんも引退される歳なので、譲ったか、閉めたか、


されたのだろう。


それと同時に、邦子さんのことも語られる。


邦子さんは乳がんで手術もして、大分お悪かったようだ。


右手が不自由になるくらい病状はすすんでいたらしい。


ボクも厨房経験者なので、店の話しは好きで、この手合いは


好みであるらしい。


きっと三十人相手じゃあ、相当、苦戦されたのではないかと、知って


いる人なら、容易に想像できる。


それも、二十年も続けられる(当時)とはスゴいことだと思う。


ボクは十五年で根を上げてしまった………合掌。



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