前から気になっていたこと。
さいたま市教育委員会は10日、埼玉県さいたま市のJR武蔵浦和駅周辺地区で検討している義務教育学校について、2小学校と1中学校を統合、1年生から4年年生の通う2校舎と5年生から9年生の通う1校舎の3拠点による「武蔵浦和学園義務教育学校」(仮称)を計画していると明らかにした。9学年で3000人を超えるとみられ、2028年度の開校を目指すとしている。(11日付け埼玉新聞)
設置の話しを聞いて、どうなるのか正直不安を感じていた。今回市教委の一応の公式見解が出たことになる。以下感想を書いてみる。
一カ所に3000人ではない
単純に3000を9で割ると330人を超える。内訳は以下のようになる。
1年生から4年生を2分割するとして、それぞれの校舎にどれくらいの人数になるのか。仮に330×4ならば1320人。半分にすれば660人、各学年165人である。クラス定員が35人にできたとして5クラス。1校舎に20クラス。その校舎が2カ所。これを仮に「前期課程」とする。
報道によれば、沼影小学校の児童数は1099人とのこと。学校のウェブサイトを見ると、詳細な児童数が掲出されていた。令和2年5月1日現在の資料なので、学校基本調査のデータだと思う。
学年 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 | 特別 支援 |
合計 |
学級数 | 5 | 6 | 4 | 6 | 5 | 5 | 4 | 35 |
児童数 | 164 | 193 | 154 | 205 | 185 | 179 | 19 | 1099 |
校種が異なるので比較することに意味はないが、現任校よりも生徒数は多い。大規模校だと思う。
この表で4年生までが前期課程となる。僕の仮の計算と大きな差異はない。
義務教育の学校なので、沼影小児童は居住地(学校区・通学区域と考えていい。)により、この学校に通学している。仮に7年後この学校(学校区)児童数に大幅増減がなければ、5年生6年生のHR教室に少なくとも10余剰が発生する。
同じように、浦和大里小学校も調べてみる。同校の児童数は894人とのこと。ウェブサイトを見たが、各学年児童数は見つけることができなかった。学級数は教室配置計画図では1年生2年生が各5クラス、3年生から6年生が各4クラスである。これに加えて特別支援学級の教室が複数あると思われる。前期課程分は18クラス+αになる。児童数の大幅な増減がなければ、沼影小と同様、5年生6年生のHR教室に少なくとも8余剰が発生する。
二つの小学校が前期課程校舎ということになると、教室にかなりの数の余剰が発生する。営繕管理が大変だが、施設に余裕があるのはいいことだ。だが、現在の2小学校で20弱のHR教室の余剰が発生すると言うことは、そこで学ぶ児童は後期課程の校舎に移ることになる。記事にあるように、現在の内谷中学校の校舎=もしくはその後継施設=で学ぶことになる。
+++++ ここまでは2月13日に書きました +++++
内谷中学校は生徒数969人
同校はさいたま市を構成する旧三市(浦和、大宮、与野)にいくつかある、”the 大規模校”、教育業界用語だと「マンモス校」の一つ。
さいたま市ウエブサイトに掲出されている「さいたま市立中学校・中等教育学校(前期)・特別支援学校中学部 生徒数集計表」(令和2年5月1日現在)によれば、学年別生徒数は以下の通り。カッコ内はクラス数である。
通常学級(25)
1年生308人(8)、2年生333人(9)、3年生320人(8)
特別支援学級(2)
1年生7人、2年生1人、3年生0人
これだけ子どもの数が少ない時代に、こんなに大きな中学校である。
同校は過去に10クラスか11クラス規模の年度もあり、校舎にある程度の余裕はあるかもしれない。それでも前期課程からの2学年分、20クラス弱の児童が学ぶHR教室の確保は、どう考えても無理なことである。本当ならば、校舎の新築が望ましいが、果たしてそれが可能なのか。聞くところによると、同校の校舎は5階建てとのことだ。
「マンモス校」が、「ultra マンモス校」化する。
+++++ ここまでは2月16日に書きました +++++
仮の仮の計算
現在の内谷中学校の生徒数969人に、沼影小学校5年生6年生、浦和大里小学校5年生6年生の生徒数として上記計算の660人を加えたとする。おおよそ1500人を超える。武蔵浦和学園義務教育学校後期課程1カ所に、この人数を集める意味はあるのだろうか。まとまり、かたまりとしての大人数は、現代ではマイナスだと思う。
いわゆる「中1ギャップ」への対応として、こういうことをする。
[123456]/[123][1234]/[56789]
小学校、中学校 義務教育学校前期・後期
よく言われる「中1ギャップ」だが、現在の小4で区切り、新しい校種に5年生(年齢)の児童が移る。これで解決できるか誰もわからない。先行の事例研究は少ないと思う。評価もなかなか定まらない。新たに「義務教育学校5年生ギャップ」の問題が出てくることはないか。おそらく学校の先生ならば、多くが不安視することを、起こりにくくするにはどうするべきか。答えはそれほど難しくないと思う。単一の学校としての規模を、可能な限り小さくすることだと思う。
「生徒数増」で「教員数増」だから大丈夫?
それは違う。いい加減、学習しなければ。
+++++ ここまでは2月22日に書きました +++++
どこまで本気で制度を変えるのか
現行の「義務教育の学校」が日本中で「義務教育学校」に移行することは当面ない。おそらくよほどのことがない限り、現小中63制は残る。「男女共学小学校6年中学校3年」という義務教育=中学校制度新設=に移行したのは、第2次世界大戦後である。「義務」とするものを、全国均一で創設するのは、並大抵なことではない。
僕は義務教育学校設置に反対ではない
私見だが、「武蔵浦和学園義務教育学校」はパイロットスクール(実験的な学校)である。「中1ギャップ」への対応を考えること、その結果として発達段階にあわせた学習を進めることをめざす(大義名分)のならば、大規模後期課程(内谷校舎)のありようを考えることが先ではないか。
僕は県立高校の先生なので、義務教育の学校の学校区、設置基準には詳しくない。ただ、少なくともさいたま市内(旧三市内)では、2もしくは3小学校分の学校区に1中学校があるように見える。この状態を武蔵浦和学園義務教育学校は壊すべきだと思う。小学校1校に中学校1校をめざす。内谷校舎(内谷中学校)分を分割、「沼影後期課程校舎」「浦和大里後期課程校舎」を設けてはどうか。「ただし、武蔵浦和学園においては」である。
お金がかかることに反対はあるだろう。「特別あつらえ」に義務教育の平等性の観点から、山のようにクレームが来るだろう。だからパイロットスクールであることを宣言する。あえてお金をかける。思い切ったことをしなければ、「ultra マンモス校」ができるだけという懸念は残る。めざす成果は得にくくなる。その不安がどうしても消せない。
+++++ ここまでは2月23日に書きました +++++
まだまだ不明なことが多い。当分注目だと思う。
(18:36加筆)