姉弟のように育った幼なじみの航祐と夏芽。6年生になった二人は、航祐の祖父・安次の死をきっかけにギクシャクしはじめた。夏休みのある日、航祐はクラスメイトとともに取り壊しの進む「おばけ団地」に忍び込む。航祐はそこで思いがけず夏芽と遭遇し、謎の少年・のっぽの存在を聞かされる。すると、突然不思議な現象に巻き込まれー。 |
現在の日本のそこここで起きていることが、ものがたりの舞台
高度成長期、日本中に作られた「ニュータウン」「団地群」は入居者の代替わり、高齢化、建物の老朽化がすすんでいる。取り壊しと土地の集約化、立て替えと住民の入れ替わり。大きな時代の転換点である。
主人公の航介と夏芽も、そんな団地で育っている。昔の言葉で言えば ”団地っ子” である。立て替えにともない2人は引っ越すが、2人ともそれぞれ育った団地に愛着、こだわりがある。
作品紹介にもあるように、夏芽は自分の育った「おばけ団地」に忍び込む。そこでのっぽで半ズボンで長袖の少年と出会う。この出会いが、航介やその仲間たちを団地に引き寄せ、のっぽが団地ごとあるところに行く旅に巻き込まれた原因になる。のっぽを見たとたん、何となく団地が漂流する原因はこの子と思えた。あとはこの子が何者か、子どもたちとどうかかわるかが気になり、ものがたりの展開がぼやけた気がした。のっぽの正体は、途中で団地ができる前(山林、原野)の頃に存在した巨木の精霊か、動植物の霊魂の集合体かと思えたが...
小6はこうか
航介と夏芽は子どもの頃からのつきあいである。男女の双子のような間柄。学校のサッカークラブの仲間だ。とっくみあいのけんかもする。でも、12歳の男女、あそこまで近い関係性があるのかな。そんな感じがした。
「女子の方が精神的成長が早い、男子は子ども、幼い」のような括り方をすることが、現実世界でもよくある。でも、本作の登場人物たちはそのどちらとも言いがたい感じ。航介は感情の起伏が激しい、夏芽はちょっと大人っぽすぎ。のっぽはよくわからない。他の男女各2名もちょこちょことものがたりにかかわるけど_。何か小6の設定には無理を感じた。
デパート、遊園地、観覧車
何でこれらが出てくるのか、わからない。おそらく登場人物の誰かの強い思い入れが、具体化したことを表していると思う。見る人に判断を任せすぎ。
ものがたりの中で様々な試練が、航介や夏芽たちに降りかかる。のっぽを含めて-けが人は出るが-誰も死なない。かなりきびしいシーンもあり、誰かが”消えて”もおかしくない感じ。でも、そうならずじまい。だから、途中からハラハラ感は消えた。のっぽが他の登場人物と別れ、どこかに行き、子どもたちは無事元の世界に戻れることが予期できた。絵はきれい。CVもいい。でも何か物足りない。ファンタジーとしてもSFとしても何か刺激は弱い。