短い夏期休業期間、自宅勤務の一環として、今年も英語実音テスト問題の音源CDを借り受け、リスニングテストの分析を実施した。例年通り分析ポイントは、前年度問題形式との比較。変更の有無、wpm*の確認である。
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2月28日(金)14時40分、英語学力検査の開始チャイムが鳴る。その数秒後「放送を聞いて答える問題」が始まる。この問題が終わらなければ、他の問題に手をつけることは、実質的に不可能である。令和2年度入試も、試験は全部で7問、求められる解答数が11である。
平成31年度入試で問題の解答の仕方の説明以外すべて英文・英語の音声指示に変更された。令和2年度入試でも同様である。
問題1から問題3
会話を聞き、質問に対する答えとして最も適切なものを選ぶ問題である。四者択一、ヒントのイラストがついている。
問題4と問題5
それぞれ「ある場面」を説明する英文を聞き、質問に対する答えとして最も適切なものを選ぶ問題である。四者択一で、英文の答えが出ている。
問題6
英語サマースクールのスミス先生が、スクール初日の予定を説明する。説明内容に関する三つの質問を聞き取り、問題用紙にある英文の解答から選択する。四者択一問題。
質問は印刷されていない。
問題7
トムと友人のメグミの会話を聞き、会話の内容に関する三つの質問を読み、解答する。解答は空所補充・文完成を求める形式。
質問は印刷されている。
*問題7以外はすべて〇 or Xの採点になる。
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使用音源
令和2年度 英語録音CD1枚
計時使用機材
WMPと一般的なCDプレーヤーを使用。
計時はWindows 10のWMPによる。ストップウオッチも使用。
・・・毎年同じ作業である。
分析手順
①語数とセンテンスの数をカウント。
②何度も聞き直し、各英文の時間を計測。
③問題~問題の間のポーズを計測。
④はじめから、「以上で問題は終わりです」までの実時間を計測。
⑤前年の数値と比較。
①から④は手作業(耳作業)である。
・・・ここも昨年と同じである。
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以下、音源CD構成と計時データ
トラック1 音量調整のための放送
試験当日朝に試聴のために用いる。
(試験とは関係ない。)
トラック2 無音
トラック1をかけたままにしていると、注意される。
(間違えて、問題を誤放送させない配慮。)
トラック構成も昨年度と同じである。
トラック3(0:54)
0:00- 「放送を聞いて答える問題」のアナウンス。(日本語)
トラック4(1:09) 問題1
0:01-0:09 問題1から問題3の解答方法の説明(英語)
014 問題1放送 1回目
0:32 問題1放送 1回目終了
0:34-0:37 問題1 Question 1回目
0:42 問題1放送 2回目
1:00 問題1放送 2回目終了
1:02-1:05 問題1 Question 2回目
問題1は、AとBの会話である。A→Bが2回。18秒で話者2、総語数48語である。
このペースで会話が続いたとすると、18秒は1分の30.0%なので、48を0.3で割る。
160wpmとする。(161)
カッコ内は、H.31データである。以下同じ。
トラック5(0:44) 問題2
0:02 問題2放送 1回目
0:12 問題2放送 1回目終了
0:14-0:17 問題2 Question 1回目
0:21 問題2放送 2回目
0:31 問題2放送 2回目終了
0:33-0:36 問題2 Question 2回目
問題2も、AとBの会話である。A→Bが2回。12秒で話者2、総語数34語。
このペースで会話が続いたとすると、12秒は1分の20.0%なので、34を0.2で割る。
170wpm(156)
トラック6(0:48) 問題3
0:01 問題3放送 1回目
0:16 問題3放送 1回目終了
0:19-0:21 問題3 Question 1回目
0:25 問題3放送 2回目
0:40 問題3放送 2回目終了
0:42-0:44 問題3 Question 2回目
問題3も、AとBの会話。A→Bの回数も同じ。15秒で話者2、総語数38語。
このペースで会話が続いたとすると、15秒は1分の25.0%なので、46を0.25で割る。
152wpm(173)
トラック7(0:58) 問題4
0:01 問題4と問題5の解答方法の説明(英文)
0:09 説明終了
0:14 問題4放送 1回目
0:24 問題4放送 1回目終了
0:26-0:31 問題4 Question 1回目
0:36 問題4放送 2回目
0:46 問題4放送 2回目終了
0:48-:0:53 問題1 Question 2回目
この問題は「ある場面」についての説明文を聞き、それについて解答を求めるものである。10秒で話者1、総語数30語、センテンス数3。
このペースで発話が続いたとすると、10秒は1分の16.6%なので、30を0.16で割る。
180wpm(164)
トラック8(0:52) 問題5
0:02 問題5放送 1回目
0:16 問題5放送 1回目終了
0:19-0:22 問題5 Question 1回目
0:27 問題5放送 2回目
0:41 問題5放送 2回目終了
0:44-0:47 問題2 Question 2回目
問題5も問題4と同じパターン。14秒で話者1、総語数39語、センテンス数3。
このペースで発話が続いたとすると、14秒は1分の23.3%なので、39を0.23で割る。
167wpm(174)
トラック9(4:14) 問題6
0:01 問題6の解答方法
Listen to Mr. Smith, a teacher at English Summer School. He is talking about the plans for school on the first day. Choose the best answer for questions 1, 2 and 3. Let's start.
0:14 説明終了
0:17 問題6放送 1回目
1:39 問題6放送 1回目終了
1:41- Question 1
1:52- Question 2
2:02- Question 3
2:15 問題6放送 2回目
3:37 問題6放送 2回目終了
3:39- Question 1
1:53- Question 2
2:06- Question 3
スミス先生の日程説明の内容について、質問を聞き取り、答える(選択する)問題。84秒。総語数195語、センテンス数20。
このペースで会話が続いたとすると、84秒は1分の140%なので、195を1.4で割る。
143wpm(159)
なお、トラックの長さは4:14だが、録音は4:04で終わっている。最後の問題までの間10秒弱空白になる。
トラック10(2:52) 問題7
0:01 問題7の解答方法の説明
Listen to the talk between Tom and his friend, Megumi, and read the questions. Then write the answer in English for questions 1, 2 and 3.
Let's start.
0:10 説明終了
0:15 問題7放送 1回目
1:19 問題7放送 1回目終了
1:29 問題7放送 2回目
2:33 問題7放送 2回目終了
トムとメグミの会話を聞き取り、内容についての質問を読み、解答をする問題。解答は空所補充して文を完成させるもの。
64秒で話者2、総語数163語、センテンス数22である。
このペースで二人の会話が続いたとすると、64秒は1分の106%なので、163を1.06で割る。
153wpm(163)
なお、問題7(トラック10)の2:45のところで、「放送を聞いて答える問題」の終了が告げられる。午後2時40分の英語試験開始のチャイムから、ここまでが12分半。残り試験時間が37分半程度。
リスニングテストの配点は100点満点中28点である。
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wpm比較
Questions | H29 | H30 | H31 | R2 | ||
1 | words | 40 | 34 | 43 | 48 | |
seconds | 15 | 12 | 16 | 18 | ||
wpm | 160 | 170 | 161 | 160 | ▼ | |
2 | words | 57 | 40 | 26 | 34 | |
seconds | 21 | 16 | 10 | 12 | ||
wpm | 163 | 150 | 156 | 170 | △ | |
3 | words | 53 | 39 | 46 | 38 | |
seconds | 22 | 13 | 16 | 15 | ||
wpm | 145 | 186 | 173 | 152 | ▼ | |
4 | words | 27 | 28 | 30 | 30 | |
seconds | 12 | 9 | 11 | 10 | ||
wpm | 135 | 187 | 164 | 180 | △ | |
5 | words | 28 | 27 | 29 | 39 | |
seconds | 10 | 9 | 10 | 14 | ||
wpm | 175 | 180 | 174 | 167 | ▼ | |
6 | words | 141 | 188 | 185 | 195 | |
sentences | 25 | 23 | 22 | 20 | ||
seconds | 57 | 72 | 70 | 82 | ||
wpm | 148 | 157 | 159 | 143 | ▼ | |
7 | words | 209 | 212 | 229 | 163 | |
sentences | 18 | 12 | 14 | 22 | ||
seconds | 79 | 77 | 85 | 64 | ||
wpm | 160 | 166 | 162 | 153 | ▼ |
words:語数
sentences:文の数
seconds:英語の流れた時間(単位:秒)
wpm:1分間でどのくらいの語数を聞き取ることになるか。
は、平成31年度との比較。△は数値が増加したもの、▼はその逆である。
【注意】
問題6と問題7は前年と出題形式が入れ替わっている。
・平成31年度入試
問題6が会話問題、問題7がスピーチの聞き取り問題。
・令和2年度入試
問題6が話者1の聞き取り問題。問題7が会話問題。
平成31年度との比較は以下の通り。
問題1:易化
問題2:難化
問題3:易化
問題4:難化
問題5:易化
問題6:易化(平成31年度問題7と比較)
問題7:易化(平成31年度問題6と比較)
毎年度微妙に調整していることがわかる。
なお、リスニング問題の出題形式は平成29年度から平成31年度、毎年変更されている。
平成29年度は、解答の仕方、問題1から問題7が、日本語で設問が示され、日本語で放送がある。
平成30年度は、解答の仕方、問題1から問題6が、日本語で設問が示され、日本語で放送がある。問題7は英語で設問が示され、英語で放送がある。
平成31年度は、解答の仕方が日本語で示され、日本語で放送がある。問題1から問題7が、英語で設問が指示され、英語で放送がある。
少しずつ難しくしている。
昨年入試のまとめで、『なお、問題6については、平成31年度から英語による解答を求める形式に変更された。学校選択問題の解答方法と比較すると、ここはまだ改善(難化)の余地があると思う。』と書いた。COVID-19の令和3年度入試への影響が、仮になかったとしたら、以下の変更があり得ると考えていた。
パターン1α
問題1から問題3は、2度読みから1度読みにする。1度読みの問題を3題追加して6題。全て1度読み。配点を各2から各1に変更する。
パターン1β
問題1から問題5を、2度読みから1度読みにする。1度読み問題を5題追加して10題にする。全て1度読み。配点を各2から各1に変更する。
これは比較的短い英文の聞き取りは、1度読みにする方式。パターン1を実施する場合、現行の問題6、問題7の形式は変更しない。
パターン2
問題6、問題7のうち、話者が1名のスピーチ、または説明文の聞き取りを、2度読みから1度読みにする。
質問は選択式として、問題数を増やす。
3問×3点から5問×2点で、配点10。
パターン3
話者2名の会話の聞き取りを2度読みから1度読みにする。
質問は選択式として、問題数を増やす。
3問×3点から5問×2点で、配点10。
パターン2とパターン3のいずれも、二つとも1度読みにするのではなく、一つを1度読み。もう一つは現在と同じ形式にする。ただし、2度読みの方の配点は2点に変更し設問数を4とする。
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「令和2年度埼玉県公立高等学校入学者選抜実施状況」によれば、学力検査の得点の平均は以下のとおりである。
令和2年度埼玉県公立高等学校入学者選抜学力検査結果(全日制の課程)
受検者平均点【第9表】より
過去のデータもあわせて表を作成している。
\ | 学力検査問題 | 学校選択問題 | |||||
国語 | 社会 | 数学 | 理科 | 英語 | 数学 | 英語 | |
R.2 | 57.2 | 55.4 | 67.9 | 55.1 | 52.2 | 55.2 | 58.9 |
41,206 | 41,206 | 31,796 | 41,206 | 31,796 | 9,410 | 9,410 | |
H.31 | 58.3 | 60.3 | 42.3 | 44.5 | 47.7 | 53.5 | 64.3 |
43,424 | 43,424 | 33,564 | 43,424 | 33,564 | 9,860 | 9,860 | |
H.30 | 52.8 | 55.9 | 44.0 | 51.7 | 55.9 | 43.7 | 58.9 |
44,362 | 44,362 | 34,560 | 44,362 | 34,560 | 9,802 | 9,802 | |
H.29 | 53.3 | 60.6 | 44.4 | 48.5 | 52.0 | 43.2 | 71.9 |
46,455 | 46,455 | 36,513 | 46,455 | 36,513 | 9,942 | 9,942 |
年度ごと、上段が平均点、下段が受検者数である。なお、平均点は全日制5教科受検者の得点より算出している。
平成29年度入試から、英語に関しては学力検査問題(いわゆる普通の問題)と学校選択問題の平均点を見ると、後者に年度ごとのふらつきを感じる。作問は努力していると思うが、結果に「安定感」がない。年度によって差異が目につきすぎると思う。令和2年度入試において、二つの英語問題の間に大きな平均点の差は生じてはいない。
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なお、問題、正答、データ分析は、埼玉県総合教育センターウェブサイトで公開されている。
https://www.center.spec.ed.jp/(新しいウインドで開きます。)
(メニューの「入試情報・説明会案内」から)
・平成30年度~令和2年度の問題を公開中である。
今年も分析をするために、東京新聞ウェブサイトの『首都圏公立高校入試特集ページ』を参考にした。問題を見るのならば、このサイトを利用するといい。関東地方の公立高校入試問題を、PDFでアップロードしている非常によくできたサイトである。毎年使わせてもらっている。特記する。
アドレスはこちら。(新しいウインドで開きます。)
https://www.tokyo-np.co.jp/tags/exam
昨年のエントリはこちらです。
2019-08-21
「夏休みの自由研究 平成31年度埼玉県公立高等学校入試 英語リスニングテスト分析」
*このエントリにおけるwpmの出し方(考え方)については、こちらです。
2010-03-11
「wpm」