俳優・平幹二朗が亡くなった。
平幹二朗といえば一番に思い出すのがNHK大河ドラマ」「樅ノ木は残った」。
随分と古い作品で、なんといっても大阪万国博覧会の年に放送された大河ドラマだけに46年の歳月が流れている。
放送されていた当時私は小学校1年生だった。
まだまだ子供だったこともあり、リアルタイムでドラマを見た記憶の中に筋書きや描写は含まれていない。しかしながらタイトルに流れる能面のどことなく恐ろしげな風貌は今も鮮明に覚えている。
タイトルに恐れをなした大河ドラマだった。
長じて「懐かしの大河ドラマ」という番組で改めて「樅ノ木は残った」が紹介され、ゲストに主演した平幹二朗が登場し、ざまざまなエピソードが紹介された。
中でもドラマの終盤、謀反を起こしたことになっている原田甲斐が血を流して息も絶え絶えに伊達家を守る一言を述べるシーンが強烈だ。
原田甲斐、つまり平幹二朗の目は充血し、声は震え、邪鬼迫る形相で、
「事件は私が起こしたと述べられよ」
と凄惨な切合の現場に駆けつけた者に述べる。
本当に凄いシーンなのであった。
で、平幹二朗はインタビューで、
「実はあのシーンの前日は一睡もせずにしたまま、目を充血させて撮影に挑みました。」
と語り、その役者魂に私はしばし呆然と感動を覚えたものであった。
あの遠い日のテレビドラマを思いだした名優死去のニュースなのであった。
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