損害賠償をしてもらうには
請求することの理由となる事実があること と それによる損害額 と その両者のこと
に因果関係があること というような請求側の証明と
請求をされる側から その責任の無いことの証明が無いこと
(そのようなことを請求するのを許すことは おおよそ 誰しもが認めないだろう
なぜかというと 損害が生じたとしても それは仕方が無いことで非難することができ
ないことなのだから 害が生じたとしてもその責任を負わせるわけにはいかない)
というような証明が 請求される側からなされていないこと
が必要とされるのが おおよそ 原則 と理解されます
(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、
債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の
不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰
することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に
掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務
の不履行による契約の解除権が発生したとき。
(損害賠償の範囲)
第四百十六条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害
の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであった
ときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
(金銭債務の特則)
第四百十九条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、
債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定
利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
(賠償額の予定)
第四百二十条 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
3 違約金は、賠償額の予定と推定する。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、
これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
契約関係者間などの場合の 債務不履行の場合の損害賠償請求
と
第三者から自分の権利などを侵害された場合の 不法行為の場合の損害賠償請求
と
概ね どちらもホボ同様 上記のような要件などが必要であるともいえるでしょう
ただ 金銭債権の場合の債務不履行などでは 損害額 の証明などは不要であるし
履行することが不可能だったのだ というような証明をして責任を免れるというこ
とは ソモソモ お金というものの性質上 許されていない
(民 419<金銭債務の特則>)
さて
マンション管理費等滞納者に対する請求訴訟で要した弁護士費用を 損害賠償 とし
て請求できるのか
相当因果関係にある損害(そのようなことが起きてしまった場合 それに関して費
やされ生じたものだとして滞納金同様に請求できることに問題は無い と 捉える
ことが 一般的に認められるべきもの)なのか
不法行為の場合は <相当な範囲の額ならば 弁護士費用を含めての請求も可>
というのが 判例です
要旨の一部
[ 訴訟活動において、一般人は十分に訴訟追行をなし得ない。
不法行為の被害者が損害賠償請求訴訟を弁護士に委任した場合の弁護士費用は、事案
の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範
囲内で、相当因果関係に立つ損害といえる。 最高裁判決 昭和44・2・27]
では 債務不履行 の場合は 認められないのか ということですが 要件を満たす場合は
認めてもいい という判例も 出ていたりします
要旨の一部
[ 労働者が、使用者の安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請
求するために訴の提起を余儀なくされた場合の弁護士費用について、事案の難易、請
求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のもの
に限り、安全配慮義務違反と相当因果関係に立つ損害である。
最高裁判決 平成24・2・24]
“ ナンデ 滞納金のほかに弁護士費用の分 マデモ 払わなければならないんだ ”
というような ゴタゴタを避ける意味 ? からも 標準管理規約では 60条に
【 違約金 としての弁護士費用 】として 登場させています
金銭債務の特質から 損害賠償金としての弁護士費用は認められないのか
それとも
弁護士費用は 損害賠償請求に係る通常生ずべき損害とは認められないからなのか
ということあたりの説明が 関連判例の位置付けのことあたりも含めて ハッキリとせ
ず ?
基本書あたりでもナンダカ 根拠が曖昧なのではないかなー ? と 自身は思ってい
るのです が( あくまで 私見 です )
金銭を目的とする債務の履行遅滞による損害賠償の額は、本条(民419)の反面とし
て、たとえ約定又は法定の利率以上の損害が生じたことを立証しても、その賠償を請求
することはできず、弁護士費用その他の取立費用も請求できない。
:同事件の別掲載要旨:
金銭債務の履行遅滞を理由とする損害賠償は、損害の証明を要しない反面として、約定
または法定の利率による額を超える損害が生じたことを立証しても、その賠償を請求す
ることはできない。(弁護士費用その他の取立費用の賠償を否定)。
(最判昭48・10・11)
ともかく
損害賠償としての弁護士費用の請求
と
違約金としての弁護士費用の請求は異なるのだ
という理論で 事は進められていますよう ですので・・・
それでは 違約金 とは ?
(賠償額の予定)
第四百二十条
当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
3 違約金は、賠償額の予定と推定する。
※ 改正前には 「裁判所は、その額を増減することができない」
という文言も登場していました が 削除されています
けれども 解釈に今までとの変化はないとの解説が多いです
ということで
繰り返しになりますが
請求額に含めてしまっていいのかダメか
(その不履行に通常発生する損害とはいえないのか
その不法行為によって生じた損害と認めてよいのかダメなのか
419条の金銭債務の特則があるから弁護士費用は請求できないのか )
というような議論をもしなくていいように
標準管理規約には
違約金(賠償額の予定)として組み込まれています
金銭債務の不履行による損害賠償として 債務者に対し弁護士費用その他の取立費用を
請求することはできない(最判昭和48・10・11)というものがあるので 別途に
請求できる違約罰(賠償金ではなく 制裁金のようなもの)として弁護士費用を請求す
ることができるとして 標準管理規約に定められた と解されているようです
参照 (東京高判平成26・4・16)
(東京高判平成26・4・16)は 〔管理規約の文言も「違約金としての弁護士費用」
とするよりも 「管理組合が負担することになる一切の弁護士費用(違約金)」との
文言とするほうが望ましいといえよう〕 とも 述べています
そのあたりに関しての
本日の マンション管理士試験 平成27年度 (2015年度)
〔問 10〕
甲マンション管理組合(以下「甲」という。)の区分所有者Aに対する滞納管
理費等の請求に関するマンション管理士の次の意見のうち、区分所有法及び民
法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。
ただし、甲の規約は、標準管理規約と同様であるものとする。
1
甲は、Aに対して未払金額とそれに対する規約所定の割合による遅延損害金、
違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して請求するこ
とができます。
2
甲は、Aに対して違約金としての弁護士費用を請求することができますが、こ
れは、契約上の金銭債務の不履行による損害賠償として弁護士費用を請求する
場合と同様です。
3
Aが違約金としての弁護士費用の支払いを遅延したときは、甲は、Aに対して
民法所定の割合による遅延損害金を請求することができます。
4
Aの滞納管理費等に係る債権の時効による権利消滅の効果は、5年の時効期間
の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめ
て確定的に生じます。
誤っているのは 2 正解は 2
1 について
(管理費等の徴収) 標準管理規約(単棟式)
第60条
2 組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理
組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金として
の弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対し
て請求することができる。
2 について
「契約上の金銭債務の不履行による損害賠償として」ではなく「違約金」
として と されていますので 「同様です。」とはいえないので誤っ
ています
(本日の 損害賠償金と違約金との性質の差異などの上記に掲載のことを
参考にして ください)
3 について
金銭給付目的の債務の不履行については 原則として 法定利率による(民419①)
違約金としての弁護士費用の支払債務は金銭債務なので Aに対し 甲は民法で定め
られている割合の遅延損害金の請求ができる
4 について
時効は援用が必要となる
(時効の援用)
第百四十五条
時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の
消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによっ
て裁判をすることができない。
時効が援用されたときに はじめて確定的に債権消滅の効果が生じる
(最判昭和61・3・17)
仮に
規約に定めがなく(違約金として請求できる との定めがなく)て 不法行為に基づく
損害賠償請求でもない 金銭債務の不履行を問う場合である 弁護士費用までも含めて
の滞納管理費等請求は ダメなのかと問われれば そのとおり との判例〔東京地判
平成26・9・22〕 などがあるので
すくなくとも今現在では ダメ と 答えるしかありません
標準管理規約 などを参考にして 規約を点検しておくべきだ といえます
関連の話題なのですが
マンションの管理費等の滞納金回収のため弁護士等に依頼することは その形が必須という
ことでもないので(自身は 可能な限りでの自主的な行動を管理組合に奨めています
標準管理規約コメントなどに イロイロ その方法の説明がなされたりしていますし
学習などをして知識を身につけ 裁判所に訊ねながらとかの対処も考えられることで 必ずし
も 専門家の力を借りてそうとうな委任費の出費は覚悟しなければならない というものでも
ないともいえます
額も定まっていて 定期的に払わなければならないものを払わずに 規約(管理組合員間の約束
ごとである)を破っている者を相手にした場合を想像してみてください
相手方の言い分など想定できますか? どのような反論がありますでしょうか ?
『トニカク払いたくなかった』 とでも言うのが関の山では?
そのような裁判に敗訴するなどということが 通常の場合〔トテツモナク奇異なケースを除いて〕
専門家に依頼しなかったためだ と いうことがあるでしょうか ?
訴訟技術など要求されるものでしょうか ?
今 どの公の窓口も 以前に比し とても親切なところが増えています
テイネイに 相手をして教えていただけることが多くなっていますよ
マンション住人さんのなかにも そうした知識をお持ちの方(法学部出身などの方など)おられる
なら
なおさら 委任無しの 自らの訴訟は可能だ と 自身は思っています
どうも 最近は 文章が長くなることが多いので 概ねを シンプルに記したつもりです
今日の過去問の説明に関しても その他のところも 極く簡潔に記させていただきました
ハッキリしないところは 関係する委託先などに 法理論を確認したり さらなるアドバ
イスを求めてみたり 専門家を招いて役員間で学習したりしてみてください
もっとも 〔管理費等滞納金請求訴訟〕 などをしなくて済むように 管理運営の充実
を図る努力を継続することが よりタイセツなこと 当然 ですけれど
本日も 文字数が多くなってしまいました
繰り返しのいい訳になってしまいますが 掲載量が少なくなるように 概略を記したつも
りなのですが・・・
スミマセン
皆さま オヤスミナサイ 失礼いたします