※後半1/3念のためR18(露骨な表現はありません)
時も想いも記憶も、
第30話 誓暁act.5―another,side story「陽はまた昇る」
屋根裏の小部屋は穏やかな温もりに満ちていた。
天窓からふる冬の陽に白い壁と無垢材の床も明るんでいる。
サイドテーブルにココアのトレイを置くと、英二は書棚を覗き込んだ。
「周太。この本はみんな、周太の本?」
「あ、ん。そうだけど…あ、『Worthworse』はね、父の本…それから百科事典は祖父の、らしい」
百科事典は昔から書棚に納められている。
この古い事典には和文に英語とフランス語の訳も付記されて、ときおり交る細密画の挿絵がきれいだ。
これを押し花の重し代わりに幼い頃はよく使っていた、事典としても何度も開いて楽しんでいた本。
なつかしいなと見ていると英二が植物図鑑に目を留めてくれた。
「植物図鑑もあるんだね、周太?」
「ん、それはね、父が買ってくれたんだ…挿絵がきれいなんだ、あとラテン語でね、学術名が載ってる」
そう言いながら周太は図鑑を出した。
これは自分が特に気に入っている本、英二も気に入ってくれるだろうか?
受けとると英二はページを長い指で静かに開いてくれる、そして眺めながら穏やかに微笑んだ。
そんな様子がうれしくて微笑んで周太は、押入に置いてあるマットレスをとりに梯子へと戻った。
梯子からマットレスを上げようとしていると、本を閉じて木箱に置いてから英二は笑いかけてくれた。
「周太、そんなの俺がやるよ?ちゃんと頼ってよ」
「ん、ありがとう英二…でも大丈夫だよ、俺も力けっこうあるし…この押入れからね、上げただけだし」
いつもこんなふうに英二はやさしい、うれしくて周太は微笑んだ。
一緒に運びあげて敷きのべると、真っ白なカバーが陽だまりに温まっていく。
ココアのトレイを傍に置くと並んでマットレスに座り込んだ。
天窓からふる陽射と青空が気持ちいい、温かいココアを飲みながら周太は微笑んで英二に話した。
「あの椅子に座るか、ね…このマットレスで昼寝しながら、本を読むのがね…好きなんだ」
「周太の定位置なんだね。夜だと天窓から星が見える?」
やっぱり天窓を気に入ってくれている。
同じものを気に入ってもらえるのは嬉しい、周太は英二に微笑んだ。
「ん、見えるよ…月がね、ちょうど天窓に入ると、ほんとうにきれいだ」
言いながら植物図鑑のページに目を落とすと、あの落葉松の林ページが開かれていた。
英二と歩いた雲取山の野陣尾根と似た黄金の木洩陽がうつくしい森の姿。
眺めるたび英二を想ってしまう切なくて大切なページ。そんな自分がなんだか恥ずかしい、周太は急いでページを繰ろうとした。
ほら恥ずかしくて首筋に熱が昇り始めている、そんな周太を驚いたように英二が覗き込んだ。
「どうした、周太?なんでページ捲るんだ?」
「…あ、あの、…なんでもないんだきにしないで…」
見つめられる周太の顔が赤くなってしまう。
なんて答えたらいいのだろう?困っていると、途惑ったように英二は周太の顔を見つめてくれる。
「ね、周太?落葉松の林が何かいけなかったか?」
「…ん、あの、…いや、」
言い淀んで周太はマグカップに唇をつけて、黙ってココアを飲み始めてしまった。
どうしよう?いつもひとりで図鑑を見て想っているなんて、ちょっと恥ずかしい。
けれどずっと黙っているのもきっと変に思わせてしまう。
そんなふうに困っている周太の隣で、そっと寂しげに英二がため息を吐いた。
「周太、俺ってさ、周太には話し難い相手にね、…なっちゃったのかな」
「え、?」
どうして英二?驚いて周太は隣の切れ長い目を見つめた。
そう見つめる先の端正な貌は、いつにない寂しげな翳りに沈んでしまっている。
こんな貌を見たのは久しぶりのこと、そんな警察学校時代ときおり見せた顔のまま英二は口を開いた。
「だって周太?欲しいものもね、言ってくれないだろ?
今も理由、教えてくれない。…やっぱり逢えない時間が長くて、さ…俺のこと信用できなくなっちゃったのかな、て」
話してくれる英二の目が微かに潤み始めている。
それでも英二はすこし微笑みながら周太を見つめてくれた。
「ね、周太?俺のことを想ってくれるんならさ…話してほしいよ?周太が想うこと俺、全部を知りたいし、聴きたい」
だから話してほしいな?そう見つめてくれた英二の目から、ひとすじ涙が零れおちた。
けれど英二は長い指で涙を払って、やさしく微笑んでくれた。
そんな涙と微笑みに周太の心がことんとノックされた ― もう迷っていてはいけない。
こんなふうに自分を求めて涙まで流してくれる、そんな純粋な想いで見つめてくれる英二に応えたい。
ひとつ呼吸すると周太は、そっと英二に顔を近寄せて告げた。
「…英二、ごめん…違うんだ」
「周太、」
よんでくれた名前に誘われるよう、静かに周太は英二にキスをした。
ふれるだけのキス、けれど静かに英二は瞳をとじながら周太を抱きこんだ。
やわらかな熱とココアのかすかな香と甘さ、抱きしめられる腕が力強い。
どうかきちんと想い告げられますように、そんな想いで静かに離れると周太はゆっくり瞳を披いた。
そうして真直ぐ英二を見つめて周太は告げた。
「…あの、ね、英二。…その落葉松の林の、絵がね、雲取山に似ていて…
英二を想いだすんだ、それで俺…帰ってくるたびに見てた、から恥ずかしくなって…驚かせて、ごめん」
言っている端から恥ずかしい、けれど言えた。
なんて英二は想うのだろう?そう見上げた先で英二はうれしそうに微笑んだ。
「周太も、俺を想いだしてくれたんだ?」
いつもずっと、あなたを想ってる。
ほんとうは何を見ても想って寂しくて、けれど想えば幸せで温かくて。
こんな自分は弱くて恥ずかしいかもしれない、けれどもう正直に話してしまいたい。
そうしなければきっと英二は傷ついてしまう、そんな傷は自分にも痛くて哀しいから。そっと周太は唇を開いた。
「ん、…いつもね、想ってる…新宿でも、そう。街のあちこちで、…英二の気配をね、探してしまうんだ」
「そういうのはね、周太?俺、すごいうれしい」
ほんとうにうれしそうに英二は周太の頬にキスをしてくれた。
こんなに自分の想いを喜んでくれる、それが心からうれしくて周太は微笑んだ。
この気恥ずかしさに頬まで熱が昇ってくる、それでも率直な英二の想いに応えたい。
そんな周太の想いの底で、そっと心にひとつ決意が起き上がっていく。
…クライマーウォッチを贈りたい、そして想いを告げたい
クライマーウォッチを贈るなら今日がいい。
だってもう12月が終わる、そして本格的な雪山シーズンを迎えてしまう。
年が明ければ英二は、最高峰をめざすためにも高峰を登り始めるだろう。きっと父と見たあの穂高岳にも。
そんなどの時も英二の腕で時を刻んで、そして自分を想って無事に帰ってきてほしい。
そっと1つ呼吸すると周太は英二に微笑んだ。
「あのね、英二?…ちょっと一緒に来て?」
立ちあがると周太は梯子を降りた。そして下の部屋で鞄を開くと、きれいな1つの箱を取り出し掌でくるんだ。
そして窓辺で周太は掌のなかを見つめた、ほんとうに英二は喜んでくれるだろうか。
深紅のリボンをかけられたチャコールグレーのきれいな箱、この中にクライマーウォッチが入っている。
ふっと気配に顔を上げると、英二が窓辺に並んで立ってくれていた。見上げた顔はおだやかで優しく微笑んでくれる。
…どうか、きちんと言えますように
きれいな笑顔を見つめて周太は、そっと心で願いごとひっそり息をのんだ。
さあ勇気よ想いを声にしてほしい、ひとつ呼吸して周太は1つの箱を差し出した。
「…あのね、クリスマスだから…これ、その…受け取ってほしいんだけど」
自分へのプレゼント?そう目だけで訊きながら英二が周太に笑いかけてくれる。
そして楽しげに嬉しそうな声で英二は言ってくれた。
「周太から、俺にくれるの?」
「ん、…もし、好みとか違っていたら、ごめんね?…こういうのって、俺、…初めてで、解からなくて」
こういうこと慣れてない、どうしよう気恥ずかしくて困まってしまう。
思わず俯きかける顔をなんとか支えながら周太は立っていた、受け取ってくれるだろうか?
そんな想いで見上げる英二は、嬉しそうに微笑んで静かに箱を受け取ってくれた。
「ほんとうれしいよ、周太。これも『初めて』だね、それも嬉しい。ね、開けていい?」
まずは受けとってくれた。
それだけでも嬉しくて、頷きながら周太は微笑んだ。
「ん、…開けてみて?」
ベッドに腰掛けると英二は膝の上で深紅のリボンを解いていく。
その隣に周太も静かに座って、英二の顔を覗き込んだ。
そして箱を開いた英二の目が大きくなった。
「…周太、これ…?」
アナログとデジタルの複合式クライマーウォッチが、おさめた箱の中で光っていた。
ブラックベースにフレームへとブルーの細いライン、英二の部屋で見たカタログに載っていた腕時計。
たぶん本当に英二が欲しかっただろう腕時計。
英二は山岳救助隊への進路希望を決めたときに、クライマーウォッチを買っている。
それがいま英二の左腕に時を刻む濃い紺青色のフレームのデジタル式、これは外泊日に自分と買いに行ったもの。
あのとき英二は買ってすぐに左腕に嵌めて嬉しそうに笑っていた。そして周太に教えてくれた「山岳救助隊に俺はなりたいんだ」
だから時計もクライマーウォッチに替えて、今から使い慣れたいと笑っていた。
そして英二は本当に卒業配置からストレートで、山岳救助隊員として青梅署管轄の駐在所へ配属された。
そこは普通には経験者しか配属されない厳しい部署になる、それでも英二は努力を重ねて掴み取った。
その為に英二は山岳救助に必要な学科は好成績をとり、検定試験も高得点で合格をした。
そして体力を積んで周太を背負って自主トレーニングをして。
外泊日で実家に帰れば夜に近所のジムでクライミングの練習もしていた。
そんな努力の全てを自分は知っている、そして夢にどれだけ英二が輝いたのかも。
そんな英二の想いも記憶も時も刻んだ、その紺青色のフレームの時計が自分は欲しい。
そういう大切な時を英二の左腕で過ごした時計をこそ、自分のこの左腕に嵌めさせて?
だからこのクライマーウォッチを贈りたい、そして嵌めてほしい。
その時計に籠めた自分の想いと一緒に、これからの人生に登る高峰の頂上ですら時と想いを刻んでほしい。
そんな願いに見つめる先で英二が周太の瞳を見つめて訊いてくれた。
「どうして周太、これが欲しいって解かった?」
あのとき勝手に見てしまったこと、何て言ったらいいのだろう?周太は困ってすこし口ごもった。
でも全部を正直に話せばいい、そしてひとつ息を吐くと周太は唇を開いた。
「あの…最初にね、青梅署に行った時…英二の部屋にいたときにね、カタログを、見て…それで…ほしいのかな、って思って」
「あ、デスクの上に置いてあったやつかな、周太?」
「ん、…あの、勝手に見て、ごめんなさい…あの、その時計、…違った、のかな?」
どうしよう?もしかしたらもう違うものが欲しかったかもしれない。
それにこんな贈り物をすること自体が初めてで、なんだか困ってしまって顔が熱くなってくる。
そんな周太にうれしそうに英二は笑いかけてくれた。
「俺ね、周太?このクライマーウォッチ、ほんとは欲しかったんだ。
でも俺は山の初心者だからさ、まだ贅沢だなって思って諦めたんだ。でも周太から貰えるなんてさ、俺、うれしいよ?」
ほんとは欲しかった、そう言ってくれる。
貰ってくれるのなら喜んでくれるなら本当に嬉しい、そっと周太は訊いてみた。
「…そう?…英二、喜んでくれる?」
「うん。だってね、周太?腕時計をさ、周太から貰えるだなんて幸せだよ?俺、一生大切にする」
そう言って笑った英二は、ほんとうにきれいだった。
よかった幸せだって言ってくれる。うれしくて周太は微笑んだ。
「…ん、そんなに喜んでもらえて、うれしいな」
微笑んでいる周太に、そっと英二はキスをしてくれた。
そんなキスもうれしくて気恥ずかしくて。ほらまた首筋から熱くなってくる、すこし困りながら周太は微笑んだ。
その隣では英二が今しているクライマーウォッチを外していく。そして周太からの贈り物を嵌めた。
よかった受け取ってもらえた。
どうかこのクライマーウォッチがずっと英二の左腕で時を刻んで、英二とどこまでも一緒に行ってくれますように。
そう見つめる周太に、うれしそうに英二は微笑みながら訊いてくれた。
「ね、周太?こんなに良いものを俺、貰ったんだからね。周太の欲しいもの教えてよ?そして俺からも贈らせてほしいな」
ほしいものは決まっている、もう1ヶ月も前から。
そんな周太の瞳を、こんどこそ教えてくれるといいなと英二が覗き込んで微笑んでくれる。
周太はそっと英二の元の時計を見、英二の目を見つめてきいた。
「あの、英二?…元の腕時計は、どうするの?」
「うん。4カ月になるかな、この時計は俺と一緒にがんばってくれたんだ。だから大事にしたいけど、」
やっぱり英二にとって大切な時計なんだ。
それをねだるのは申し訳ないかもしれない、そんな想いの周太の瞳を英二は覗き込んだ。
そして微笑みかけて英二は周太に訊いてくれた。
「周太の欲しいものって、俺のクライマーウォッチなの?」
どうしていつもわかってしまうのだろう。
心底気恥ずかしくて周太は瞳を伏せてしまった。けれど英二は周太に訊いくれた。
「周太、俺のクライマーウォッチをね、周太はどうするの?」
「ん、…いつもね、腕にしておきたいなって、…思って…
英二がずっとしていた腕時計だから、…俺、ほしんだ。一緒にいれるみたいで、いいな、って…思って」
もうほんとうに恥ずかしい、真っ赤になりながらも周太は言った。
そんな周太に英二は、幸せそうに微笑みながらもまた訊いてくれる。
「そうしたら周太?お父さんの腕時計は、どうするの?」
周太は父の遺品の時計をずっとしている。そのことを英二はもちろん知っている、きっと気になるだろう。
それも全部話しておきたい、ゆっくり瞬いて周太は微笑んだ。
「ん。父の時計はね、…宝箱にしまっておこうと、想うんだ」
「さっきの、お祖父さんのトランク?」
静かに英二は訊いてくれる。周太は頷いて穏やかに唇を開いた。
「俺はね、英二…ずっと父の殉職に縛られて、本当は、
…父の記憶から目を背けてきた。13年間ずっと。そして今はね、父の記憶と素直に向き合える。
だからあの部屋も俺、13年ぶりに開いて大切にできている。だからこそ俺はね、英二…父のほんとうの姿を最後まで見届けたい」
逢えなかった1か月とすこし。その間に英二は決意を重ねてくれた。
そして周太も決意を重ねてきた、その想いに英二は寄り添って聴こうとしてくれる。
そんな英二の想いがうれしくて微笑んで周太は言葉をつづけた。
「父の生きた跡を辿ること、…それが警察の社会では危険なことだって、解っている。
それでも、きちんと父の全てを知りたい、そして父のほんとうの想いを見つめたい。
…13年前に父は、誰にも想いを言えないまま死んでしまった…そんな父の孤独の悲しみを俺が知って、受け留めてあげたい。
…父の息子は、俺だけしかいない。だから、俺が父の想いの全てを知ってあげたい。」
父の想いを全て知ること。
きっとそれを超えなくては自分の人生を歩めない、それくらい全てを賭けて父の想いを辿っているから。
一途すぎる不器用な自分は警察官になど向いていない、けれど父の想いを投げ出すことも出来ない。
真直ぐ見つめる英二に、周太は微笑んで言った。
「父の想いを全て受け取れたら、…そうしたら俺は心からね、ほんとうの自分の生き方を、見つけられると思う。
本当は怖い、父の想いを辿ること。でも俺は後悔したくない、そして自分の人生を本当に歩きたい。それで英二…
これはほんとうに、自分でも酷いわがままだって思うんだけど…ね、英二?ほんとうに一緒に父を見つめてもらって、いいの?」
「当然だろ、周太?俺はね、ずっと周太の隣にいたい。そのためなら何でも出来るよ」
そう言ってくれるの英二?
でもほんとうに何でもしてきてくれている。
それはほんとう幸せで、いつも自分を温めてくれる。そんな想いに周太は笑って唇を開いた。
「英二、俺もずっと英二の隣にいたい。だから俺は、これからはね、英二だけの俺でいたい…
だから父の時計を外して、英二の時計をしたい。そして英二に一緒に、父の想いを抱き留めてほしいんだ。
これはほんとうに、わがままだって想う…だって俺は英二を巻き込むんだ。
でも、それでも俺、…離れたくない。だって、…ずっと英二の笑顔を、見ていたいんだ…わがままだけど、…危険なのに、でも…」
そう…こんなのは、わがままだ。
ほんとうは願っていいのかもわからない、それでもどうか願わせて?
だって幸せは一人だけでは見つけれられない、あなたなしでは幸せを見つけられないから。
だからどうか離れないで離さないで?そのために自分は大切な、あなたの腕時計がほしい。
そんな想いには微笑んだ瞳からも、涙がひとすじほほを伝っていく ― どうか願いを聞いてください
その想いに見つめる先で幸せそうに英二は微笑んで答えてくれた。
「わがまま、うれしいよ、周太?だって俺、周太のことだけは、本当に欲しいんだ」
ほんとうに欲しいって思ってくれる?
もっとわがまま言って願っていいの?
そんな想いで見つめる真ん中で、周太は英二を見つめて訊いた。
「俺のこと、本当に欲しいの?…愛して、る?」
「本当に欲しい、周太だけだよ?そしてね、心底、愛している。そのために俺、山岳救助隊にだってなったんだ」
ほんとうだよ?きれいに微笑んで英二は周太を見つめてくれた。
ほんとうにそうだというのなら、もう遠慮なんかしない。
だって欲しいのでしょう、俺のこと?愛してくれるのでしょ?だったら自分の為にどうか願いを聞いて?
そして周太は微笑んで「わがまま」を言った。
「だったら…お願い英二、わがままを聴いて?俺と一緒にいて?
だから俺、英二のその腕時計がほしい、だって英二、俺のために山岳救助隊の道を選んだんでしょ…
その毎日を刻んだのは、そのクライマーウォッチなんでしょ?だから…
だからこそ俺、その時計がほしいんだ、英二の大切な時計だから、俺、ほしい。わがままだけど、でも本音…そしてね、英二?」
またひとすじ微笑んだ瞳から涙がこぼれた。
こんなふうに本音をずっと言いたかった、誰かに受けとめてほしくて、でも誰でもいいわけじゃなくて。
きっとずっと待っていた、この目の前のひとのこと。こんなふうに自分の想い惹きだし受けとめてくれるひと。
もっと聴かせてよ?英二は目で周太を促してくれた。促されて微笑んで周太は続けた。
「これから英二は、最高峰へも登る…その時にも俺の贈った時計は、一緒に英二と最高峰に行けるね?…
そうして最高峰でもどこの山でも、その時計を見れば、俺のこと想い出してくれる…
そう想って俺、…そのクライマーウォッチを英二に、贈りたかったんだ。だから、本当にね、わがままだけど、…聴いて?英二」
その「わがまま」こそ聴いて欲しい。
その「わがまま」どうかあなたも望んでいると、言ってほしい想ってほしい。
そう見つめる周太の想いの真中で、きれいに笑って英二は言った。
「言って?周太、わがままも全部を話して?」
「…ん、聴いて?俺のね、わがままを、叶えて」
どうか「わがまま」叶えてください。
そんな想いと真直ぐに英二を見つめて、微笑んで周太は涙ひとすじこぼして願った。
「その英二の腕時計を、俺にください。
そして英二は、俺の贈った時計を、ずっと嵌めていて?
そうして英二のこれからの時間も、…全部を、俺にください。そして一緒にいさせて?」
想いを告げられた、わがままも願いも言ってしまった。こんなことは「初めて」のこと。
そんな「初めて」が不安になる、自分がこんなこと願って言ってしまって良かったの?
どうかお願い受けとめて?そう見つめる想いのひとは、きれいに笑ってくれた。
「周太、お父さんの腕時計を外すよ?」
きれいに笑って英二は周太の左腕をとってくれる。
そうして周太の瞳を覗き込んでくれた。
わがままも願いも聴いてもらえるの?うれしくて周太は微笑んで頷いた。
「…ん、」
英二の長い指が周太の左腕から父の腕時計を外していく。そして英二のクライマーウォッチを、周太の左腕に嵌めた。
嵌めてくれると英二は微笑みながら時計のフレームを撫でた、本当に英二の大切な時計だとその一瞬で周太にはわかる。
本当にこのクライマーウォッチは英二の大切な時間を刻んでいる。
英二が山岳レスキューの夢に立ち、努力し卒業配置先を掴んで山に生き、山ヤと男の誇りを刻んだ時計。
そんな時間の全ては英二にとって生涯を決めた大切な時でいる。
それを自分が受け取らせてもらった、そっと右掌で時計にふれながら周太は幸せそうに微笑んだ。
「ありがとう、英二…大切にするね」
「うん、俺もね、一生大切にするから。周太のことも時計も」
一生ずっと大切に?そんなふうに言ってくれる気持ちだけでも嬉しい。
そう微笑んだ周太に英二は、きれいに笑って訊いてくれた。
「ね、周太?腕時計の意味を知っていたの?」
「意味?」
腕時計に意味なんてあるの?
どんな意味なのだろう、そう見つめると英二は微笑んで教えてくれた。
「あのな、腕時計はね、婚約の贈り物にもするんだよ」
…婚約?
婚約ってあの結婚の約束をすること?
その贈り物ってあの結納品というやつだろうか?
そういえば時計を買うときに女のひとが店員にそんなことを訊いていた?
どうしよう?自分はとんでもない「わがまま」を提案してしまったの?
あっというまに熱が昇っていく、こんな恥ずかしいことを自分がしてしまったなんて?
きっと英二は呆れたのではないだろうか?どうしよう嫌われるだろうか?
でも大切な腕時計をくれたから嫌ってはいないよね?
そんなふうに途惑っていると、英二は周太を抱き寄せてくれた。
「ね、周太?時計を贈り合おうって言ったのはさ、周太だね。俺、周太にプロポーズされちゃった。幸せだよ、ね?周太」
心から幸せそうに笑いかけてくれる。こんなに喜んでくれるのはうれしい、けれど知らないでしてしまった。
これからの時間全部、そして一緒に。そんなの確かに本当にプロポーズみたいなこと言ってしまった。
どうしよう?途惑うままに周太は想ったままを口にした。
「…あの、俺、しらなくて…でもじかんがほしいとかいうのって、…あの、同じことになっちゃうのかな…」
「うん、同じだよ?」
きれいに笑って英二は周太にキスをした。
ふれる唇が熱い、ふれる熱から幸せな想いが心へとおりてくる。
重ねられる想いが幸せで、ふれられる熱が温かにうれしくて、その向こうの穏やかな静謐がそっと周太にふれてくる。
この穏やかな静謐が英二の本当の姿、その姿に惹かれて気づいたら隣に受け入れていた。
「…周太、」
そっと離れて静かな声で名前を呼んでくれる。
見つめてくれる瞳がうれしくて、そっと周太は英二を見つめた。
そう見つめてくれる瞳がどこか1か月前と違っている、この違いは何だろう?けれど前よりも惹かれてしまう。
不思議で見惚れていると、そっと英二の腕が腰から背中から抱きしめて、やわらかにベッドへと周太を横たえた。
「…英二?」
どうしたの?そんな想いで名前を呼んで微笑んだ。
微笑んで見つめる視線の真中で、きれいな切長い目がじっと見つめてくれている。
その目が見つめる熱さに、心臓がとまりそうになった。
…いま、もとめられてしまうの?
こんな熱い視線のときは、きっとそう、あの時間が始まってしまう。
でも「絶対の約束」は今夜だと言っていたのに?
そんな想いで見つめても、熱い視線は容赦なく瞳を絡め取っていく。
もう視線だけで息が止まる、呼吸の仕方がわからない…どうなってしまうのだろう?
「…周太、幸せだよ?…ずっとね、一生大切にするから…いま抱かせて?…ゆるしてよ、」
きれいに笑いながら告げる英二の重みが全身にかかっていく。
この重みはこの美しいひとの想い、それから夢と幸せ、そうしたこれからの時間と記憶の全て。
それらを自分はいま腕時計を通して全て受けとって手に入れてしまった、この2つのクライマーウォッチで。
そんな自分がどうして求められて、拒むことなんて出来るのだろう?
真赤になる顔が熱い、けれどどうか逸らさずに。
気恥ずかしい瞳が揺れてしまう、けれど睫伏せずに瞳を絡めて、
どこか緊張に竦みそうになる躰、ほら腕を伸ばしてこの想いのひとを抱きとめて?
そしてどうか1つの勇気よ想いを言葉にして告げさせて?そっと周太は唇を開いて想いを言葉にして告げた。
「ん、…大切にして、英二?…だから、…今このまま、約束を結んで?一生大切にして…」
うれしいままの腕が周太を抱きしめてくれる。
そうして英二は、きれいに笑って周太に約束をした。
「約束する、周太。この時計に周太の想いを見つめて、最高峰にも行くよ。そして一生ずっと周太を大切にする」
「…ん、大切にして?…時計も、…あの、…俺の、ことも…ね、?」
きれいに笑って英二が見つめて、そっと周太にキスをした。
そして静かに離れると微笑んで応えてくれた。
「ずっと大切にする、…ほら、周太?…また、ここにキスするよ?」
そう告げてくれながら英二は周太の右袖を捲りあげると、右腕の深紅の痣へと唇をよせた。
この痣は初めての夜に英二が刻んだものだった。それから会う度にいつも口づけをして痣に重ねている。
そうしてもう周太の右腕には深紅の刻印がされて消えなくなってしまった。
いまもまた強く吸われて噛まれていく、熱くて痛くて消えない英二の唇の刻印。
きっともう一生消えてはくれない、それが今はもう喜びになっている。
「ほら、周太?きれいだね、…こんなに赤いよ?」
唇を離して英二が深くまた刻んだ痣を、長い指で触れて微笑んだ。
きれいで穏やかな静謐とすこしだけ怖い英二の、こんなときの笑顔が今も咲いている。
右腕の痣まだ熱が疼いている、そう見つめた白いシーツの上の右腕に、そっと英二の腕が絡められて掌が握られる。
そうしてまた唇が唇でふさがれて、深く口づけられていく。
「…んっ、」
熱い、熱くて何かおかしくなりそうな英二の口づけ。
どうしてしまうのだろう?そんな熱い感覚に浚われる周太の服に長い指の掌がかかる。
そうして服ごと心まで絡み取られて素肌を午後の日差しに晒されていく。
こんな明るいところで恥ずかしい、お願いだからすこし隠させて、
そんな想いにシーツを惹きよせようとする周太の腕を、そっと長い指の掌が絡めて動けなくされてしまう。
「あ、…」
「ダメだよ周太?ちゃんと見せてよ?…俺、ずっと見たいの我慢していたんだから」
そんなこと言わないで?
よけいに恥ずかしくなるから、これ以上はおかしくなるから止めて?
だって今まだ明るくて何の心の準備もしていないのに?だからお願いすこし待って?
なんとか少しでも譲歩してほしくて周太は、なんとか口を開いた。
「…待って、英二…だって、夜だって、…思って、っ」
言いかけた唇を熱い唇にふさがれてしまう。
そうして脱がされかけた服を絡み取られて、もう逃げられない姿に周太はされてしまった。
どうしてこんなことになったの?途惑いながらも寄せられる想いが嬉しくて、重なる温もりがうれしくて。
「待てない、…だってもう1ヶ月と5日も待ったから…ね、周太?」
「…っ、あ」
長い指の掌がふれる、熱い唇がふれる、腕が足がふれて熱い。
そのひとつひとつから英二の想い伝わって、どれだけ逢いたいと想ってくれたのか解ってしまう。
掻きあげられ梳かれる髪、頬寄せられる頬、額ふれる額、腰にまわされる腕の力。
全てが自分を掴まえて想いのままに求めて、自分のかすかな躊躇いも不安も押し去ってしまう。
「…逢いたかった、ずっと…周太、ね、俺を見てよ…」
自分だって逢いたかった、寂しかった。
こうして求められて温もりを全身で感じて、想いを感じて確信したかった。
揺るがないで「愛されて愛している」と真直ぐ立って迷わずにいられるように、触れて求めてほしかった。
幸せも想いも全てが、あなただけにしかない。そんな想いに周太は英二の頬へとそっと掌を宛てた。
「…英二?…ずっと、見てる…あいたかった…あ、っ」
零れてしまう吐息のなかに想いを告げて、周太は長い腕のなかへと抱き取られていった。
逃げだせない腕のなかで白皙の左肩が唇にふれて、そのまま白い肌へと口づける。
きっと最後に逢った夜にも口づけた場所、想い刻まれたように自分もこの愛するひとに想いを刻んでしまいたい。
そうして1ヶ月とすこしの時間を超えて想いを重ねて、ふたり温もりのなかへとまどろんだ。
ふっと周太は眠りから覚めた。
ベッドにふる陽光は黄昏の薄紅を含んで夕方を告げている。
やわらかな夕暮れの光に自分の右腕が見える、また深紅の痣が刻まれてしまった。
もうこの痣は消えてはくれない。そんな想いで隣を見あげるとやさしい寝息が聞こえる。
…英二、
英二は深い眠りにまどろんでいた。
穏やかな鼓動が抱きしめてくれる胸に響いていく。
そっと静かに周太は身を起こして、穏やかな眠りにある愛するひとを見つめた。
しずかに見つめる寝顔には濃い睫の翳が美しくて深い艶がけぶっている。
…きれいなひと、
その左掌には自分が贈ったクライマーウォッチを握りしめたままでいた。
きっと一度起きて、時間を見たまま眠り込んでしまったのだろう。その長い腕も手も黄昏の光に白く美しい。
自分を抱いたまま眠ってくれていた背中ひろやかで白皙の静謐が美しい。
この美しいひとの人生を自分はもう繋ぎとめてしまった。その想いが痛んで、けれど温かくて周太の瞳から涙がこぼれた。
「…ゆるして、ね…英二?」
ゆるして?自分のこと。
ほんとうは美しいままに美しい人生を幸福を生きられる英二。
けれど自分を英二は求めてしまった、それを拒絶することが自分はできない。
あえて危険を選んでも父の想いと真実を求める自分、そして同性の男である自分。
そんな自分を選んだら英二の幸せも人生も傷がつく。それを自分は解っている、もう最初からずっと。
求められてうれしくて、きれいな笑顔を見つめたくて、ただそれだけの為だった。
それだけの為に自分は、あの初めての夜、卒業式の夜を英二に許してしまった。
それがどんなことになるのか?何一つ解っていなかった、あの時の自分は。
そんな無知だった自分を許してほしい。それでも想いだけは真実だったから、あの初めての夜も。
もう逢えなくなるかもしれない、そんな一瞬の逢瀬の時に全てを懸けて惜しくないと想ってしまった。
「…ゆるして、ください…ね、」
生きて笑っていてほしかった。
きれいな笑顔を見つめていたくて、幸せに笑ってほしくて、生きていてほしくて。
だから初雪の夜に、全てを懸けて「絶対の約束」を結んで繋いでしまった。
冷厳が生命も抱き取る雪山からでも、生きて無事に帰ってほしくて。ただそれだけの願いだった。
英二は絶対に約束を守るから「必ず帰る」と約束すれば、きっと生きて無事に帰ってくる。
そうして「約束」で英二の生命と幸せを守ってしまいたい。それだけだった。
けれど、とうとう2つめと3つめの約束を結んでしまった。
ずっと一緒に暮らすこと。
生涯ずっと最高峰でも自分へ想いを告げること。
どちらも、とても幸福な約束。
けれど英二は自分と約束してしまった。
危険を選んでも父の想いと真実を求める自分、そして同性の男である自分。
そんな自分を選んだ美しい英二、そんな自分と幸福な約束を結んでしまった英二。
それがどんなふうに英二を傷つけてしまうのか?そう考えると苦しくて辛くてたまらない。
それなのに自分は拒絶できなかった、与えられる幸せがうれしくて「運命」だと受け入れてしまった。
そしてとうとう時計を、クライマーウォッチを贈って時間と想いと、誇らかな山ヤの夢まで、全てを自分の想いへと縛りつけて。
そんな自分は残酷だと本当はまだ痛くてたまらない。
「…ごめん、ね…英二、」
ぽつんと想いと一緒に温かな涙が、周太の瞳から零れ落ちた。
瞳から想いと零れる涙はそのままに見下ろす顔へとふりおちていく。
その涙はそっと眠る切長い目の睫に、ゆるやかにふり零れて瞼の奥へと消えた。
「…っん…?」
ゆっくりと切長い目が披かれて、きれいな目が周太を見上げた。
そして英二の顔に、きれいな笑顔が咲いて周太に笑いかけた。
「周太。泣顔も、きれいだね?」
泣いている?自分はいま?
そっと掌を自分の頬に充てて、周太は驚いた。
「…あ、」
「かわいいね、周太は」
ゆっくり起き上がると英二はそっと周太を抱きしめてくれた、素肌を素肌でくるむ温もりに周太の瞳からまた涙こぼれていく。
どうしよう?こんなふうに泣いてしまうなんて?そんな想いに竦んでしまう肩に、温かな長い指がくるんでくれる。
そして周太の顔をのぞきこんで、きれいに英二が笑いかけた。
「周太?ほんとうにね、これは真実だから。だから信じて?」
「…しんじつ?」
つぶやくように訊いて周太は涙のままで見上げた。
見つめる涙の向こうで、英二はきれいに笑って言った。
「俺の運命のひとは周太だ。他の誰でもない、男も女も関係ない。
代わりなんていない、周太だけ。だから俺の幸せは周太の隣にしかない。これはね周太?ほんとうのことだよ、これが真実。
そしてほんとうの俺の唯ひとつの想いなんだ、だから信じるしかもうないよ?だってね周太、これだけしか無いんだから」
ほんとうは自分もそう想い始めている。
もう揺らぎたくないと決意を1つ抱いている、けれど自責は消えてくれない。
でも英二が言ってくれるなら信じて良いのだと想える。ひとしずく涙こぼしながら周太はまた訊いた。
「…ほんとうに、俺なの?」
「ほんとうに周太だよ。だからね、周太?俺の嫁さんになって」
「お嫁さん」昼間の新宿の花屋で想ったことがよみがえる ― 子供を贈ってあげられない
それでも自分は自分にしかできない方法で英二を幸せにしたいと願って決意した。
それでもやっぱり「お嫁さん」はきっと難しい、寂しい想いで周太はそっと応えた。
「でも、…俺はね、男だよ…お嫁さんは女のひとじゃないと、…なれないから」
そう、同性で結婚なんて出来ない。
だからね英二、ごめんね?やっぱり女性だったらよかったのかな。
そんな想いに俯きかけた周太を覗き込んで、きれいに笑って英二が言ってくれた。
「できるよ、周太?確かに子供はつくれない、でも入籍はできるよ」
「…そう、なの?」
入籍は戸籍を一つにすること、法律上で家族になること。
そんなことが男同士でも出来るの?驚いて見つめる周太に、きれいに笑って英二が教えてくれた。
「うん、そうだよ周太?俺、法学部出身だからね。そういう方法も知ってるよ?養子縁組の形をとってね、入籍ができるんだ」
いろんな方法があるんだな、驚いて周太はため息を吐いた。
そんな周太を抱きしめる腕にそっと力こめて、英二が笑いかけてくれる。
「今すぐは難しいだろう、けれどね周太?俺は本気でいつか必ず周太と籍をいれるよ?」
本気でいつか必ず。
きっとそういった以上は本当に英二はそうするのだろう。
きっと今とても幸せなことを言われている。そっと周太は顔赤らめて訊いてみた。
「…俺で、いいの?」
「言ったろ?俺にはね、周太だけ。だから周太、覚悟をきめておいて?
『いつか』が来たらすぐに俺は、周太を嫁さんにしちゃうからね。それまでは俺たち、婚約者だからね。もう他の人は選べないよ?」
―腕時計はね、婚約の贈り物にもするんだよ―
さっき英二に言われたこと。
自分は英二に腕時計を贈り、英二は今までしていた腕時計を自分にくれた。
そうして腕時計を交換したから、もう婚約したことのなったのだろうか?
なんだかもう顔が赤いままでいる、小さな声で周太は尋ねた。
「あの、婚約者って…」
「うん、俺たちのことだけど?
だって周太はね、俺にプロポーズして腕時計までくれた。
もちろん俺の答えはYesだ。だからね、周太?婚約は成立しちゃったよ。だからもう周太は俺の嫁さんになるんだ。覚悟してよ?」
そう言いながら華やかに、きれいに笑って英二は周太を抱きしめた。
(to be continued)
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